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水彩画家 堀江優遺作展―「人間の弱さ」を持つ聖書の人を描き続けて

artscene2013-06-12



画家、堀江優の遺作を集めた個展が神戸で開催中。

 




特別展「水彩画家 堀江優遺作展―「人間の弱さ」を持つ聖書の人を描き続けて―」の開催


博物館 小磯記念美術館 担当者名:三好、山本、辻
TEL:078-857-5880


特別展「水彩画家 堀江優遺作展―「人間の弱さ」を持つ聖書の人を描き続けて―」


堀江優(ほりえ・まさる 1933−2013)は、小学校の教諭を勤めるかたわら透明水彩画を描き始め、聖書の人物を主題に制作を続けた神戸市出身の水彩画家です。
水彩連盟展に出品し始めた初期の頃は、風景や植物に取材して描いていましたが、やがて、生涯のテーマとして、父が牧師であったことから幼少期より親しみ、共感を得ていた『聖書』の中の「人間の弱さ」を持つ人物に関心をいだいて制作するようになります。



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堀江の、力強い構図と表現主義的な作風は、いにしえの聖書の物語にふさわしく、迫力ある表現を示し、独特の世界を創り上げています。そして、1980年には、作品《ペテロ》が、水彩画家として初めて安井賞を受賞するという栄誉に輝きました。


本展は、画家自身が選んだ出品リストに、最初期の風景画と遺作の2点を加えた、約100点の作品により構成しており、堀江優の画業を振り返る回顧展として、これまでにない規模の展覧会となります。




会場:神戸市立小磯記念美術館  展示室2、3 
会期:平成25年 5月4日(土曜・祝日)〜7月15日(月曜・祝日)


開館時間:月曜日 ただし、7月15日は開館

開館時間 午前10時〜午後5時(金曜日は午後6時まで)、入館は閉館の30分前まで


入館料:大人1,000円(800円)、高校・大学生750円(600円)、小学・中学生 500円(400円) ※(  )内は団体30名以上 神戸市老人福祉手帳(すこやかカード)持参の方500円、のびのびパスポート持参の方無料




主催
神戸市立小磯記念美術館
同時開催
【展示室1】小磯良平作品選2 特集:聖なるモチーフを描く
当館が所蔵する小磯良平作品を44点と資料を展示します(6月11日以降展示替えします)。
堀江優展にあわせて、クリスチャンであった小磯良平が描いたキリスト教的モチーフによる作品も紹介します。
主な展示作品
《悲しみの中に》 1972年 水彩・和紙 97.0×130.3センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵

アブラハムとサラ》 1973年 水彩・和紙 130.3×97.0センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵 

《ペテロ》 1979年 水彩・和紙 130.3×162.1センチメートル 東京国立近代美術館

《仰ぐ》 1989年 水彩・和紙 80.3×31.8センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵

《十字架より主を降ろす》 1991年 水彩・和紙 72.7×60.6センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵

《最後の晩餐》 1997年 水彩・和紙 162.0×390.9センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵

最後の審判》 2002年 水彩・和紙 205.0×300.0センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵

《原罪》 2008年 水彩・和紙 162.0×130.3センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵

《あなたの手を、その子に下してはならない》 2012年 116.7×91.0センチメートル 神戸海事検定株式会社蔵



会期中のイベントなど

特別記念講演会


5月26日(日曜)午後2時〜3時
「堀江優の作品について」 講師:水彩連盟運営委員 上尾忠生氏 
当館2階 絵画学習室にて、定員80名(当日午前11時より整理券を配布)
特別展関連講座


6月2日(日曜)午後2時〜3時
「堀江優の遺作をめぐる一考察」 講師:当館学芸員
当館2階 絵画学習室にて 

解説会
毎週日曜日の午後2時〜(約30分間)2階絵画学習室にて ※5月26日と6月2日を除く

ギャラリーツアー
毎週金曜日の午後5時〜(約30分間)学芸員と一緒に作品を鑑賞するツアー
美術館大作戦
対象:小学生〜中学生 申込:往復葉書】☆詳しくはお問い合わせください。
【美術館大作戦2】5月11日(土曜)午後1時〜4時 「絵具でかこう」定員20名 講師:水彩画家 上山八洲子氏(水彩連盟)
【美術館大作戦3】6月15日(土曜)午後2時〜4時30分 「人物をかこう」定員20名
大人のためのワークショップ
【申込:往復葉書】☆詳しくはお問い合わせください。
5月25日(土曜)午後1時〜4時「透明水彩絵具で描こう」定員20名 講師:水彩画家 上山八洲子氏(水彩連盟)

特別展関連 ロビーコンサート 【各日とも午後2時〜 要入館券】
○6月1日(土曜)
讃美歌から生まれたオルガン曲〜風と笛の楽器・ポジティフオルガンの魅力〜
出演:上野静江、喜多ゆり/曲目:J.P.スウェーリンク「詩編歌第23編」ほか
○7月13日(土曜)
若手声楽家によるバッハの教会音楽とその系譜 
出演:大嶋真規子、伊豆田佑香、鹿岡晃紀、高曲伸和/曲目:J.S.バッハヨハネ受難曲」よりコラールほか


http://www.city.kobe.lg.jp/culture/culture/institution/koisogallery/tenrankai/


http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2013/04/20130402845801.html


http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2013/04/20130402845801.html




堀江優:自選遺作展 「人間の弱さ」力強く−−神戸・小磯記念美術館
毎日新聞 2013年06月17日 東京夕刊

 1980年、具象画家の登竜門だった安井賞を水彩画家として初受賞した堀江優(まさる)が1月、がんのため79歳で死去した。初の大規模回顧展のために準備した約100点の自選作品と解説を並べた遺作展が、神戸市立小磯記念美術館(神戸市東灘区)で開かれている。

 「人間の弱さ」をテーマに、独特の人物描写と重厚な色彩表現で、聖書の世界を描き続けた。父が牧師で、長く親しんできた聖書の世界を描き始めたのは30代半ばから。その理由について堀江は生前、「心の弱さを露呈してしまうイエスの弟子たちや旧約聖書に登場する人物たちと私自身の弱さを重ねた」と説明している。

 主題の「弱さ」と対照的なのが、力強い作風だ。はっきりとした輪郭線で、人物が画面いっぱいに描かれる。こちらを射抜くような鋭い眼光。大きく誇張された鼻。何かを語るような手の動きが目を引く。

 同館の辻智美学芸員は「一つの作品にじっくり向き合っていた。まじめで穏やかな方でした」と語る。未完の絶筆「ヨブと群衆」も展示している。

 7月15日まで。最終日を除く月曜休館。【清水有香】







堀江優遺作展:水彩通し聖書見つめた79年 私たちの弱さ、塗り重ね
毎日新聞 2013年06月12日 大阪夕刊

 イエスが捕らえられた時、保身のため主を裏切った弟子ペテロ。「イエスなど知らない」。新約聖書「マタイの福音書」の一場面。黒い衣服のペテロの周りを、白い布をまとった女性たちが取り囲む。指をさして責められ、耳をふさいでうそを繰り返すペテロ。その表情は悲しみに満ちている。色の対比とダイナミックな構図が、緊迫した場面を際立たせている。

 この代表作「ペテロ」で1980年、画壇の芥川賞ともいわれた安井賞を水彩画家として初受賞した堀江優(まさる)。「人間の弱さ」をテーマに、独特の人物描写と重厚な色彩表現で、聖書の世界を描き続けた。初の大規模回顧展を準備していた堀江は今年1月、がんのため死去。79歳だった。自ら約100点を選び、解説も手掛けた遺作展が神戸市立小磯記念美術館(神戸市東灘区)で開かれている。

 33年、神戸市生まれ。牧師の父を持ち、18歳で洗礼を受けた。神戸大教育学部卒業後、小学校教諭の傍ら、独学で絵画の制作に励み、風景画などを水彩連盟展に出品。30代半ばから聖書の世界を描き始めた。その理由について堀江は生前、「小さいときから親しんできた聖書を描くのは私の使命」と語り、「心の弱さを露呈してしまうイエスの弟子たちや旧約聖書に登場する人物たちと私自身の弱さを重ねた」と説明している。

 主題の「弱さ」と対照的なのが、力強い作風だ。はっきりとした輪郭線で、人物が画面いっぱいに描かれる。極端に狭い額と、こちらを射抜くような鋭い眼光。大きく誇張された鼻。そして、何かを語るような手の動き。

 水彩の軽やかさを封じた深みのある色合いは、独自の制作方法から生まれる。丈夫な「鳥の子」和紙に、塗り重ねても濁らない透明水彩絵の具で描いては洗い流す作業を10回ほど繰り返す。紙は毛羽立ち、玉状の小さな塊が幾つも画面に生じ、古びたような風合いが魅力になっている。

 57年に設けられた安井賞は、97年に幕を下ろすまで、具象絵画を目指す作家の登竜門だった。堀江は46歳で受賞。「さらに水彩画に打ち込もうと思う」という当時の言葉通り、その10年後から画業に専念。朝から晩まで、自宅アトリエで描き続けた。97年には、阪神大震災からの復興を願い、縦162センチ、横390センチの大作「最後の晩餐(ばんさん)」を発表。レオナルド・ダビンチの同作を参考に構図を決め、背景にはイエスの死、復活、再臨を表した。