Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

モーリス楽器製造

artscene2016-11-21


【ニッポンの課長】モーリス楽器製造「

3回の変化、自然へ導き」〈AERA

Morris楽器製造 製造部 技術課 課長 森中巧(44)

アエラにて連載中 「ニッポンの課長」

 現場を駆け、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」。

 長野県松本市は、ギターの生産量で国内トップ。湿気が少なく、森林豊かな土地柄が適している。ギター製造を始めてまもなく半世紀になるモーリス楽器製造で、森中巧は高級ギターの製作・開発に携わる。

 高校時代は、器械体操部に所属しながら学園祭限定でバンドを結成。エレキギターX JAPANの曲などを演奏した。卒業後の進路で選んだのは、エレキを「弾く」ほうではなく、「作る」ほうの専門学校。もの作りが好きだったのと、一生できる仕事に就きたいと思った。

 2年間エレキ作りを学んだ後、就職先に選んだのがアコースティックギターの工場。就職活動で多くの工場に足を運び、

 「エレキとアコースティックは構造が全く異なりますが、機械作業が多いエレキより手作業が多いアコースティックを面白いと思ったんです」


 ふるさとの大阪府枚方市から信州へ、3度目の「チェンジ」で松本にたどり着いたのは1992年。塗装や、ギターの本体を作る木工部門などを経て、2014年からは1本30万〜80万円するギターを全工程一人で作るとともに、工場全体を見回り、部下に製作を指導する。

 完成までに約3カ月。塗装と研磨を繰り返し、一本一本大切な我が子のように手がける。加工前の胴体用の板は軟らかい。弦を張ると、約60キロの負荷が胴体の表部分にかかるため、ブレーシングという骨組みで強化する。しかし、強くしすぎると、今度は音が鳴らなくなる。バランスが大切だ。

 「完成後に、注文者からさらに難しい要望が入ることもありますが、『できません』と言いたくありません。一人で全工程を手掛けるので、そのギターがどういう変化をしてきたかがわかるのが楽しい」

 休日は妻と2人、同じ種類の一眼レフを持って山の草花を撮影しに出かける。自然を細部まで観察する目が、美しい音色を奏でるための丁寧な手作業へと続いている。

 AERA 2016年11月21日号