Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

国宝 醍醐寺のすべて

artscene2014-08-14


 醍醐寺の歴史は、貞観16年(874)理源大師聖宝(りげんだいししょうぼう)が京都山科の笠取山山上に准胝(じゅんてい)・如意輪(にょいりん)の両観音像を安置したことに始まります。以来、山上の上醍醐からふもとの下醍醐に寺域を広げ、真言宗小野流の中心寺院として発展してきました。
 醍醐寺は、奈良とも深い関わりを持っています。聖宝は若き日に東大寺で修学を重ねました。また鎌倉時代初めに東大寺再興の指揮をとったことで有名な重源(ちょうげん)上人は、醍醐寺の出身でした。さらに、吉野を拠点として活動した修験道当山派は、大峰(おおみね)修行を再興したとされる聖宝を祖と仰ぎ、醍醐寺三宝院門跡(さんぼういんもんぜき)が当山派の棟梁となります。
 こうした長きにわたる醍醐寺の歴史は、修法(しゅほう)の記録や研究の成果である聖教(しょうぎょう)、権力者との遣り取りを記す古文書によって、詳細に知ることが出来ます。膨大な文書・聖教群が、数百年の時を超えて維持されてきた背景には、僧侶による並々ならぬ努力がありました。このたび、平成25年に69378点に及ぶ醍醐寺文書聖教が国宝に指定されたことを記念し、醍醐寺の歴史と美術をたどる特別展を開催いたします。



重要文化財 弥勒菩薩坐像 快慶作

(京都・醍醐寺


会 期 平成26年7月19日(土)〜9月15日(月・祝)
会 場 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日 毎週月曜日、7月22日(火)
ただし7月21日(月・祝)、8月11日(月)、9月15日(月・祝)は開館


開館時間 午前9時30分〜午後6時
入館は閉館の30分前まで
なら燈花会の期間[8月5日(火)〜14日(木)]および毎週金曜日は午後7時まで開館


観覧料金
一般 高校・大学生 小・中学生
個人(当日) 1,500円 1,000円 500円
前売 1,300円 800円 300円
団体 1,200円 700円 300円



醍醐寺とゆかりの深い寺院参拝者優待」
奈良・南都と京の交流を記念して、醍醐寺および同寺とゆかりの深い寺院の拝観券をご提示いただきますと、奈良国立博物館で販売する当日券を100円引きで購入いただけます。対象の寺院名など詳細は公式ホームページでご確認ください。
上記の特別展料金で、同時開催の名品展「珠玉の仏たち」(なら仏像館)、名品展「中国古代青銅器」(青銅器館)も観覧できます<なら仏像館は9月8日(月)より改修工事のため休館します>。
障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は、当日券を400円でお求めいただけます。観覧券売場にてキャンパスメンバーズ会員の学生であることを申し出、学生証をご提示ください。
ミュージアムぐるっとパス・関西2014」で、当日券を一般は1400円でお求めいただけます。観覧券売場にてお申し出ください。
「奈良トライアングルミュージアムズ」の特典として、奈良県立美術館・入江泰吉記念奈良市写真美術館のいずれかの半券を当館観覧券売場にてご提示いただくと、団体割引が適用となります。

出陳品 出陳品 約190件(うち国宝62件、重要文化財85件)

出陳品一覧はこちらへ[PDF,379KB]

展覧会図録  A4版 326ページ 2,500円
西新館1階会場内および、
 地下ミュージアムショップにて
 販売しております 。


公開講座
7月26日(土)「醍醐寺と南都の密教絵画」

  谷口 耕生(当館学芸部保存修理指導室長)
8月2日(土)「醍醐寺の造営と創建期の仏像」
 皿井 舞氏(東京文化財研究所主任研究員) 
8月9日(土)「醍醐寺文化財
  長瀬 福男氏(総本山醍醐寺公室室長) 
9月6日(土)「醍醐寺密教修法と聖教」
  斎木 涼子(当館学芸部研究員)

関連
イベント

醍醐寺法要(展示室内)<予定>
毎週日曜日の15時から展示室内で法要が営まれます。
そのほか、密教の法要や修験道の法要が随時行われる予定です。

奈良国立博物館「国宝 醍醐寺のすべて」展 応援セール
  〜餅飯殿(もちいどの)のルーツをたずねて〜

7月18日(金)〜23日(水) 奈良もちいどのセンター街(奈良市餅飯殿町)
醍醐寺の開山、理源大師聖宝とゆかりの深い奈良・餅飯殿町で、本展開催を記念した大紙芝居の制作発表、抽選会など各種イベントが開催されます。
イベント等の詳細は、展覧会公式ホームページで随時ご案内します。


主 催 奈良国立博物館、総本山醍醐寺日本経済新聞社
共 催 NHK奈良放送局
後 援 文化庁奈良テレビ放送
協 賛 岩谷産業オリックス京都銀行住友林業ダイキン工業大和ハウス工業
協 力 朝日生命保険日本香堂日本通運仏教美術協会



◆主な出陳品
重要文化財 理源大師坐像 [りげんだいしざぞう]1躯 京都・醍醐寺
木造 彩色
像高83.0cm
鎌倉時代(13世紀)
上醍醐(かみだいご)開山堂の本尊とされる、理源大師聖宝(しょうぼう)(832〜909)の等身大の肖像。左手で袈裟の端を、右手で五鈷杵(ごこしょ)を握り、正面を向いて坐す。写実的な面相や、たっぷりとした大柄な体躯が特徴的。理源大師の生前に造られた肖像をもとに鎌倉時代中期に造り直したものとされる(根本像は焼失)。
国宝 薬師如来及び両脇侍像のうち月光菩薩立像 国宝 薬師如来及び両脇侍像のうち薬師如来坐像 国宝 薬師如来及び両脇侍像のうち日光菩薩立像
国宝 薬師如来及び両脇侍像 [やくしにょらい(及び)りょうきょうじぞう] 3躯 京都・醍醐寺
木造 漆箔
像高 薬師如来177.0?
    日光菩薩120.0?
    月光菩薩121.0?
平安時代(10世紀)
上醍醐薬師堂の本尊。半丈六(じょうろく)の大きさの薬師如来坐像に、等身よりひとまわり小ぶりの日光・月光菩薩立像が随侍する。薬師堂は醍醐天皇の勅願によって延喜7年(907)に理源大師聖宝が建立したと伝える。中尊像の光背には化仏(けぶつ)6体が付属し、本体とあわせて、護国経典たる『薬師瑠璃光七仏本願功徳経(やくしるりこうしちぶつほんがんくどくきょう)』に基づく七仏薬師を表現したものとみられる。10世紀彫刻の代表的な基準作例としてきわめて高い価値を有する作品。

国宝 醍醐寺縁起(醍醐寺文書聖教のうち) [だいごじえんぎ]1巻 京都・醍醐寺
紙本(彩牋)墨書
縦35.5cm 長936.9cm
江戸時代(17世紀)
巻き替えあり

醍醐寺創建の由来や伽藍諸堂の構成、寺名「醍醐」の由来、准胝(じゅんてい)観音の霊験、開山聖宝(しょうぼう)の伝記などを収載した書物。本書によると、聖宝は山城国宇治郡笠取山で出会った老翁の言葉に導かれてここを寺地と定め、貞観16年(874)に起工して2年後には准胝堂などを完成させ、その後、歴代天皇の庇護を受けて伽藍を整えていった。本書は醍醐寺の根本縁起であるとともに、創建期の寺史を知るうえで貴重な資料となっている。
国宝 五重塔初重壁画両界曼荼羅図 旧連子窓羽目板断片 その1(部分 火天后) 国宝 五重塔初重壁画両界曼荼羅図 旧連子窓羽目板断片 その2(部分 日天)
国宝 五重塔初重壁画両界曼荼羅図 旧連子窓羽目板断片 [ごじゅうのとうしょじゅうへきがりょうかいまんだら きゅうれんじまどはめいただんぺん] 2面 京都・醍醐寺
木製 彩色
その1 縦80.5cm 横22.5cm
その2 縦80.2cm 横24.5cm
平安時代 天暦5年(951)
下醍醐(しもだいご)の東方にある五重塔の内部に描かれた絵。初重内部には両界曼荼羅の諸尊や真言八祖像が描かれていた。 写真は塔の連子窓羽目板(れんじまどはめいた)の一部で、胎蔵界曼荼羅の火天后と日天をあらわしている。宮廷発願(ほつがん)に相応しい品のある表現をそなえ、絵画作例の少ない平安時代半ばに遡る貴重な板絵の基準作である。
重要文化財 五大明王像(五大堂安置)のうち大威徳明王重要文化財 五大明王像(五大堂安置)のうち軍荼利明王重要文化財 五大明王像(五大堂安置)のうち不動明王重要文化財 五大明王像(五大堂安置)のうち降三世明王重要文化財 五大明王像(五大堂安置)のうち金剛夜叉明王
重要文化財 五大明王像(五大堂安置) [ごだいみょうおうぞう] 5躯 京都・醍醐寺
木造 彩色
不動明王像   像高135.9cm 江戸時代 慶長13年(1608)
降三世明王像  像高174.6cm 江戸時代 慶長13年(1608)
軍荼利明王像  像高176.3cm 江戸時代 慶長13年(1608)
金剛夜叉明王像 像高179.3cm [頭部]鎌倉時代(14世紀)
                    [体部]江戸時代 慶長10年(1605)
大威徳明王像  像高 181.9cm 平安時代(10世紀)
上醍醐五大堂の明王像は、醍醐天皇御願(ごがん)により、延喜7年(907)に理源大師聖宝(しょうぼう)が制作を始め、聖宝の没後、弟子の観賢(かんげん)が延喜13年(913)までに完成したと伝える。五大堂は幾度かの火災によって焼失したが、大威徳明王騎牛像(だいいとくみょうおうきぎゅうぞう)は創建当初の姿を残しており、極めて重要な遺品である。大きく目を見開いた迫力ある顔立ちが特徴。他の4躯は、いずれも豊臣秀頼を施主として、仏師康正(こうしょう)とその一門が、制作・修理を手がけた。中興の祖、義演(ぎえん)による醍醐寺復興期の遺例で、江戸時代の仏教彫刻の代表作でもある。 五尊がそろって寺外で公開されるのは、本展が初めてとなる。


重要文化財 金銅九鈷杵 [こんどうくこしょ]1口 京都・醍醐寺
銅製 鍍金
長 18.0cm
中国・宋〜元(12〜13世紀)
両側に9本の鈷を有する金剛杵(こんごうしょ)で、この形式は九鈷杵と呼ばれる。8本の脇鈷(わきこ)は龍口から弧状に伸び、中鈷は脇鈷より長く突出している。把(つか)は中央に球形を作り、その両側にそれぞれ8枚の蓮弁を表している。九鈷杵はチベット密教、及びその影響を受けた中国・宋代から清代にかけて用いられたが、わが国ではほとんど使われず大変貴重な例である。



重要文化財 弥勒菩薩坐像 [みろくぼさつざぞう]快慶作 1躯 京都・醍醐寺
木造 金泥塗・截金
像高 112.0?
鎌倉時代 建久3年(1192)
醍醐寺三宝院(さんぼういん)の本尊。もと上醍醐覚洞院(かくとういん)伝来で、後白河法皇(ごしらかわほうおう)追善(ついぜん)のための像である可能性が高い。像内銘記により、建久3年(1192)に座主(ざす)勝賢(しょうけん)が発願し、「巧匠アン(梵字)阿弥陀仏」すなわち仏師快慶(かいけい)が造立したとわかる。 両目を見開いた明快な顔立ちと左右相称に整然と配された衣文(えもん)には快慶の特色が顕著で、着衣を通した体躯(たいく)のみずみずしい肉付けにも洗練された造形感覚が発揮される。しかるべき由緒をそなえた快慶最初期にして随一の傑作である。



重要文化財 太元明王像 [たいげんみょうおうぞう] 1幅 京都・醍醐寺
絹本著色
縦 342.4cm 横 331.2cm
鎌倉〜南北朝時代(14世紀)
※展示期間:7/19〜8/17
おもに護国や外敵調伏(ちょうぶく)を祈願して修せられる秘法・太元帥法(たいげんほう)の本尊となる6幅の画像のうちの1幅。太元帥法は醍醐寺にほど近い法琳寺に伝えられたが、中世以降は醍醐寺塔頭理性院(りしょういん)が法琳寺を継承したため、これらの画像は理性院に伝来した。記録から、正和2年(1313)に法琳寺の本尊画像が焼失したため、画師賢信(けんしん)が新たに描いたものに比定されている。



国宝 天長印信 [てんちょういんじん]後醍醐天皇筆 1巻 京都・醍醐寺
紙本墨書
縦 33.3cm 長 172.0cm(文観筆奥書と原本影写を含む)
南北朝時代 延元4年(1339)
※展示期間:7/19〜8/17
後醍醐天皇が、延元4年(1339)に自ら筆を執って書いた天長印信の写本で、天皇に近侍していた醍醐寺座主(ざす)の文観(もんかん)に賜ったもの。密教において師から弟子へ秘法を伝授した際に与えられる証明書を印信(いんじん)といい、本書は文面に天長3年(826)の年紀があるため天長印信と呼ばれる。法流の象徴として醍醐寺の歴代座主に相承された。本品の料紙は、周囲に金泥(きんでい)による連珠(れんじゅ)文で枠をめぐらし、中央に飛翔する仙人の図様を型とロウを使って刷り出した、装飾性に富むものである。
重文 舞楽図 俵屋宗達筆(左隻) 重文 舞楽図 俵屋宗達筆(右隻)
重要文化財 舞楽図 [ぶがくず]俵屋宗達筆 2曲1双 京都・醍醐寺
紙本金地著色
各縦 157.0cm 横 168.0cm
江戸時代(17世紀)
※展示期間:7/19〜8/17
舞楽のさまを描く屏風。三宝院に伝来。合計5種の舞を描くが、実際にこれらが同時に演じられることはなく、既存の舞楽図からモチーフを取り出し配置することによって仕立てられた、絵画上の架空の情景である。金箔地に少ないモチーフを有機的に配置し、鑑賞性の高い独特の空間が創出される。「法橋宗達(ほっきょうそうたつ)」との署名があり、江戸時代初頭に活躍し琳派(りんぱ)の祖としても名高い、俵屋宗達の作と知られる。