Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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開山・栄西禅師 800年遠忌 特別展「栄西と建仁寺」

artscene2013-12-15


開山・栄西禅師 800年遠忌 特別展「栄西建仁寺



平成館 特別展示室


2014年3月25日(火) − 2014年5月18日(日)


国宝 風神雷神図屏風(部分) 俵屋宗達筆 江戸時代・17世紀 京都・建仁寺


2014年は、日本に禅宗臨済宗)を広め、京都最古の禅寺「建仁寺」を開創した栄西禅師(ようさいぜんじ、1141〜1215)の800年遠忌にあたります。これにあわせ、栄西ならびに建仁寺にゆかりの宝物を一堂に集めた展覧会を開催します。


本展は、近年研究の進んでいる栄西の著述のほか、建仁寺に関わりのある禅僧の活動を通して、栄西の伝えようとしたもの、そして建仁寺が日本文化の発展に果たした役割を検証しようとするものです。俵屋宗達の最高傑作、国宝「風神雷神図屏風」を筆頭に、海北友松筆の重文「雲龍図」など建仁寺本坊方丈障壁画、山内の塔頭に伝わる工芸や絵画の名品、栄西をはじめとした建仁寺歴代の書蹟はもちろん、全国の建仁寺派の寺院などが所蔵する宝物を展示します。

開催概要


会 期 2014年3月25日(火) − 2014年5月18日(日)


会 場 東京国立博物館 平成館(上野公園)


開館時間 9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
(ただし、会期中の金曜日は20:00まで、土・日・祝休日は18:00まで開館)


休館日 月曜日
(ただし4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)は休館)


観覧料金

一般1600円、大学生1200円、高校生900円 中学生以下無料



交 通 JR上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分
東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅京成電鉄京成上野駅より徒歩15分
主 催 東京国立博物館建仁寺読売新聞社NHKNHKプロモーション
協 賛 日本写真印刷
お問合せ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
展覧会ホームページ http://yosai2014.jp/


関連事業<講演会・講座> 記念講演会(1) 栄西と茶の歴史
平成館 大講堂 2014年4月12日(土) 13:30〜15:00 *開場は13:00を予定しております 申込受付中<講演会・講座> 記念講演会(2) 建仁寺ゆかりの美術
平成館 大講堂 2014年4月19日(土) 13:30〜15:00 *開場は13:00を予定しております 申込受付中
展覧会のみどころ

国宝「風神雷神図屏風
栄西の足跡
建仁寺ゆかりの僧たち
近世の建仁寺
建仁寺の名宝

建仁寺の至宝 琳派の美を象徴する俵屋宗達の最高傑作、国宝「風神雷神図屏風」を全期間展示

国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達
国宝 風神雷神図屏風
俵屋宗達筆 江戸時代・17世紀 京都・建仁寺

日本絵画の名品として、教科書などでもよく知られた作品です。
風神は風の、雷神は雷・雨の神であり、自然を神格化したものです。古来日本人は自然の脅威を恐れていました。菅原道真の怨念を宿した雷神は、絵巻などで古くから絵画化され、本図にもその図様が影響を与えていいます。風神と雷神を組み合わせにした場合は、観音の護法神となります。蓮華王院三十三間堂浅草寺雷門の風神雷神には、そのような信仰の二神が祀られています。
天空の広がりをあらわすような金地に、墨と黒変した銀による雲、ユーモラスな表情の二神が描かれています。この絵を見、その光と空気感を感じることで、おおらかな気分になれるのではないでしょうか?理屈抜きに見ることをお薦めする作品です。
もとは、現在の京都市右京区宇多野にある妙光寺に伝来していましたが、幕末に妙光寺63世全室慈保(ぜんしつじほ)が建仁寺住持となる際に建仁寺に移ったとされています。
この絵には、落款がありませんが、江戸時代初期の京都で活躍した俵屋宗達の作品とされています。

尾形光琳の重文「風神雷神図屏風」を、本館7室「日本美術の流れ」にて展示します。
[展示期間:2014年4月8日(火)〜5月18日(日)]
重要文化財 風神雷神図屏風 尾形光琳
重要文化財 風神雷神図屏風
尾形光琳筆 江戸時代・18世紀 東京国立博物館宗達の「風神雷神図屏風」(国宝・建仁寺蔵)を写して光琳が描いた「風神雷神図屏風」(重文・東京国立博物館蔵)。風神雷神の姿はほぼ同じですが、色や表情、配置が異なります。宗達作品が伝来した京都・妙光寺は、光琳の弟尾形乾山の鳴滝窯の近くにあり、光琳宗達作品を直接見て影響を受けたことが想像されます。比べてご覧いただける貴重な機会です。

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栄西の足跡

近年、栄西の著作や自筆書状の発見が相次いでいます。一つは、2回目の入宋を前に執筆した密教に関する数冊の解説書で、栄西の活動や思想の一端を示すものです。さらに仏教書の紙背より発見された自筆書状は、晩年に重源の跡をついで東大寺復興の責任者となった栄西が、社会に貢献する姿を伝えています。本展では、その人となりを示す絵画、彫刻をはじめ、九州滞在と2度の入宋、東大寺での活動などを通して形成されていった栄西の禅の多様な側面を紹介します。

明庵栄西坐像
明庵栄西坐像
鎌倉時代・13〜14世紀
神奈川・寿福寺
栄西は、えいさい、ようさい?
本展では、なぜ「ようさい」と読んでいるのでしょうか。
江戸時代の建仁寺を代表する学僧で、栄西の著述を研究した建仁寺335世高峰東�婬(こうほうとうしゅん)が著した『興禅護国論和解(こうぜんごこくろんわげ)』の写本(両足院蔵)には、「イヤウサイ」と読みがふられています。これによって建仁寺では「ようさい」と読んできました。
ただし、「えいさい」の読みが間違っているというわけではなく、両方の読みがあるようです。建仁寺の「ようさい」という長年の読み方も、建仁寺の文化の一つと考え、本展では「ようさい」と読んでいます。

国宝 誓願寺盂蘭盆一品経縁起
国宝 誓願寺盂蘭盆一品経縁起
栄西筆 平安時代・治承2年(1178) 福岡・誓願寺
[展示期間:2014年3月25日(火)〜4月6日(日)]

栄西は、福岡・誓願寺に滞在中の治承2年(1178)7月、盂蘭盆にあたり法華経一品経会を行いました。この縁起は一品経勧進の由来と、滞在の目的などを自ら著したもので、舶載の華麗な唐紙を用い、宋の名筆・黄山谷(こうさんこく)流の闊達な筆致を示した栄西の最も代表的な遺墨です。

栄西とお茶─四頭茶会─

四頭茶会
四頭茶会
抹茶を用いた喫茶法の中国から日本への伝来については、一般的には日本で最初の茶書である『喫茶養生記』を著した栄西によるものとされています。
栄西が帰国する以前の12世紀前半頃までに、すでに福岡の博多には喫茶に用いた天目茶碗が舶載されていたようですが、いずれにしても栄西を始めとする入宋の禅僧や渡来僧の業績により、禅院を中心に広く伝えられようになったのは間違いないと思われます。
建仁寺には、開山栄西の生誕を祝し、毎年4月20日に設けられる「四頭茶会(よつがしらちゃかい)」が伝わります。古い禅院の茶法を受け継いだものであり、方丈の正面中央に栄西像と龍虎図を掛け、卓の上に香炉・花瓶・燭台を飾り、栄西に献茶したのち4人の正客と相伴各8人(計36人)に茶を供します。あらかじめ抹茶を入れて天目台にのせた茶碗を客にささげ持たせ、そこに4人の法衣をつけた供給(くきゅう)僧が正客から順次、浄瓶(じんびん)の湯を投じて点茶してまわります。
本展では、茶道の原形とされるこの四頭茶会の空間を、会場内に再現します。

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建仁寺ゆかりの僧たち

京都最初の禅宗寺院である建仁寺では、曹洞宗の開祖道元東福寺開山円爾(えんに)、法燈派(ほうとうは)の祖無本覚心(むほんかくしん)など、禅宗の発展に大きな役割を果たした人々が若き日に研鑽を積みました。また、住職は一つの門派に独占させず、広く有能な人物を登用する十方住持制(じっぽうじゅうじせい)を採ったことにより多様な人材が集まりました。歴代住持には蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)、一山一寧(いっさんいちねい)の弟子石梁仁恭(せきりょうにんきょう)、清拙正澄(せいせつしょうちょう)など、いずれも中国からの渡来僧が名を連ねています。本展では、こうした建仁寺ゆかりの禅僧に関わる遺品を紹介します。

重要文化財 中巌円月坐像
南北朝時代・14世紀 京都・霊源院蔵

中巌円月(ちゅうがんえんげつ、1300〜75)の肖像彫刻です。中巌が貞治元年(1362)建仁寺の住持になった時に山内に構えた隠居所である妙喜世界(みょうきせかい。没後、妙喜庵と改称、明治5年廃絶)に伝来しました。生きているかのような顔がみごとであり、生前または没後間もない時期の作と見られています。 重要文化財 中巌円月坐像

重要文化財 一山一寧墨跡 雪夜作 重要文化財 一山一寧墨跡 雪夜作
鎌倉時代・正和4年(1315) 京都・建仁寺
[展示期間:2014年3月25日(火)〜4月20日(日)]

臨済宗の渡来僧一山一寧(1247〜1317)が揮毫した自作の七言絶句です。禅宗の初祖達磨大師の雪に関わる逸話などを引き、その遺徳を偲んだ偈(げ)です。博学多識で、朱子学の普及に貢献し、五山文学の先駆者でもあった一山の流れるような草書で、格調の高い禅の境地を示しています。

禅宗史の中の建仁寺

建仁寺方丈
建仁寺方丈
京都の人々の間には大きな禅宗寺院それぞれの特徴を示す「□□寺の○○づら」という言い回しがあります。寺を人間と見てその面構えを言い表したもので、建仁寺は「学問づら」です。ここで言う「学問」は禅僧が作る漢詩、いわゆる五山文学に関わるものです。
自らの境地を表した漢詩の創作は禅僧の出世には必須のことでした。渡来僧清拙正澄、中国留学から帰った龍山徳見(りゅうざんとくけん)、中巌円月などにより、本場の多様な系統、あるいは最新の流行が建仁寺にもたらされました。こうした大家が住持になったため、文芸活動が盛んになったのです。応仁の乱以後は創作より研究、注釈が中心になり、建仁寺塔頭両足院に住んだ臨済宗黄龍派(栄西の法系)の僧が担いました。
黄龍派(おうりゅうは)は密教と禅を兼修するのが特色で、創建期の建仁寺を動かしましたが、13世紀後半に中国僧蘭渓道隆、鏡堂覚円(きょうどうかくえん)など臨済宗楊岐派(ようぎは)の僧が住持となるに及び、密教の兼修が少数派となり、“禅宗専一”が主流になりました。

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近世の建仁寺

応仁の乱により荒廃した建仁寺は、天文21年(1552)の兵火により建仁寺の堂舎と多くの塔頭を焼失する決定的な打撃を受けました。その再興が進むのは16世紀末になってからです。建仁寺の新たなる発展を示すのが、慶長4年(1599)の安国寺恵瓊(あんこくじえけい)による本坊方丈の再建であり、そこには海北友松によって気宇壮大な水墨画の世界が展開されました。また、寛永元年(1624)には、秀吉夫人北政所の願いにより高台寺建仁寺295世三江紹益(さんこうしょうえき)が中興開山として迎えられました。

重要文化財 雲龍
左4幅
重要文化財 雲龍
右4幅

重要文化財 雲龍
海北友松筆 安土桃山時代・慶長4年(1599) 京都・建仁寺
[展示期間:8幅のうち
左4幅:2014年3月25日(火)〜5月6日(火・休)、右4幅:2014年4月22日(火)〜5月18日(日)、
2014年4月22日(火)〜5月6日(火・休)全8幅を展示]

本坊方丈の玄関に最も近い位置にある「礼之間」を飾る8面の襖絵です。阿吽(あうん)の双龍が対峙するように配され、建仁寺を訪れたものを濃墨の暗雲の中から姿をあらわして出迎えます。迫力と威圧感は他の画家の追随を許しません。

重要文化財 打掛 花菱亀甲模様縫箔 高台院所用 重要文化財 打掛 花菱亀甲模様縫箔 高台院所用
安土桃山時代・16世紀 京都・高台寺
[展示期間:2014年3月25日(火)〜4月20日(日)]

建仁寺の末寺である高台寺は、豊臣秀吉の菩提を弔うためにその正室であった高台院(北政所)が建立しました。刺繡で全身に花菱亀甲模様を施し、その隙間を銀箔で埋め尽くした豪華な打掛は、高台院所用と伝わります。高台寺には秀吉や高台院ゆかりのものが数多く遺されています。

重要文化財 竹林七賢図
重要文化財 竹林七賢図
海北友松筆 安土桃山時代・慶長4年(1599) 京都・建仁寺
[展示期間:16幅のうち10幅を展示。6幅:2014年3月25日(火)〜4月20日(日)、4幅:2014年4月22日(火)〜5月18日(日)]

竹林に世事を逃れ、清談を事とした中国の七人の賢人が略筆で描かれています。老松と竹をわずかに描いた背景は、霧に満ちた深い空間をなし、「袋人物」と称される略筆の人物描写は、友松画の筆力と豊潤さを余すところなく伝えています。

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建仁寺の名宝

建仁寺は、開祖栄西をはじめとして、中国の文化を求めた僧たちによって、時代の先端を行く文化を京都に発信してきました。京都五山第三位の格式とその先進性により当時の文化に大きな影響を与える文物が集積していたことが想像されますが、度重なる災禍によりそれらの多くは失われてしまいました。ここでは、その歴史の中で守り伝えられてきた名宝、またその信仰により集められた宝物の数々を一堂に会して紹介します。

雪梅雄鶏図 雪梅雄鶏図
伊藤若冲筆 江戸時代・18世紀 京都・両足院蔵

動植綵絵」連作を手がける直前の若冲(1719〜1800)による作品です。雪・白梅・水仙・鶏の羽と質感の異なる白を描きわけ、すっきりとした構図とあいまって清冽な雰囲気の中、画面中央の椿・鶏冠にしたたるような赤は印象深く、見る者の胸底に情緒的な動揺を呼び起こします。

牧童吹笛図
長澤芦雪筆 江戸時代・18世紀 京都・久昌院蔵

とぼけたような牛の顔がこちらを見つめています。芦雪(1754〜99)自身の書き入れによると筆のかわりに指を用いて描いたといいます。人の見ている前で一気に描き上げたものでしょうか。目の前で墨の広がりが牛になってゆく様は、楽しい驚きだったでしょう。童が吹く軽やかな笛の音が聞こえてきます。 牧童吹笛図

古染付写花鳥文芋頭水指 古染付写花鳥文芋頭水指
奥田頴川作 江戸時代・18〜19世紀 京都・大中院蔵

京焼で本格的に磁器の製作を開始したのが奥田頴川(1753〜1811)です。頴川の作品には交趾写(こうちうつし)・呉州赤絵写(ごすあかえうつし)とともに古染付写が知られます。芋頭と呼ばれる球胴形の胴には花鳥図に漢詩を添え、口縁や裾には虫喰いも施した古染付の雰囲気をよく伝える代表作です。

重要文化財 十六羅漢
良全筆 鎌倉〜南北朝時代・14世紀 京都・建仁寺
[展示期間:16幅のうち6幅を展示
3幅:2014年3月25日(火)〜4月20日(日)
3幅:2014年4月22日(火)〜5月18日(日)]


良全は14世紀に京都の東福寺を拠点に活躍し、仏画を得意としました。本図は中国・宋元時代の羅漢図に倣い、羅漢の背景の自然景を水墨画の技法で表現しています。平安時代までの仏画とは異なる、新しい表現様式が取り入れられた禅宗仏画の優品です。