Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

「クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美」

artscene2013-12-16




クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美」
平成館 特別展示室第1室・特別展示室第2室


2014年1月15日(水) 〜 2014年2月23日(日)


雷神図屏風(部分)「伊年」印 江戸時代・17世紀
クリーブランド美術館蔵



The Cleveland Museum of Art



全米屈指の規模と質を誇るクリーブランド美術館の日本美術コレクションより、平安から明治に至る、選りすぐりの日本絵画40件余に、中国や西洋絵画の優品を加えた総数約50件を紹介します。

http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1624


本展は、仏画に描かれた神仏や肖像画の人物などの人体表現、咲き誇る花々や鳥などの花鳥画、名所や胸中の理想の情景を描いた山水画、そして人と自然が融けあうように表わされる物語絵画の4つのテーマで構成します。日本の絵画のなかで、人や自然の姿が時代ごとにどのように描かれてきたかを、平安から鎌倉、室町、江戸、明治時代までの名品と、雪村周継( 生没年不詳)、渡辺始興(1683〜1755)、深江蘆舟(1699〜1757)、曽我蕭白(1730〜1781)、河鍋暁斎(1831〜1889)など人気絵師の作品から概観し、日本美術の流れとその魅力に迫ります。



日本美術の祭典
2014年、上野の新春は「日本美術の祭典」で幕を開けます。東京国立博物館東京都美術館のコラボレーションにより、両館で開催される3つの展覧会を結ぶ特別なプロジェクトが実現しました。時代を超えて輝きを放つ絵画や工芸の名品に触れることで、さまざまな日本の美を再発見していただこうという新しい試みです。
当館では2つの特別展を同時開催します。「クリーブランド美術館展―名画でたどる日本の美」は、全米屈指といわれる同館の日本美術コレクションから、仏画肖像画花鳥画山水画などを選りすぐって公開するものです。日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」では、歴代の人間国宝や先人が残した古典の名作を展観し、日本が誇る工芸の精華を紹介します。


一方、東京都美術館で開かれる日本美術院再興100年特別展「世紀の日本画」には、近代日本画の巨匠たちの代表作が勢揃いします。 日本美術の粋が上野に集結するまたとないこの機会、素晴らしき三重奏をお楽しみください。


展覧会のみどころへ

開催概要
会 期 2014年1月15日(水) 〜 2014年2月23日(日)

会 場 東京国立博物館 平成館 特別展示室第1・2室(上野公園)
開館時間 9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日

http://www.tnm.jp


観覧料金 一般1000円、大学生800円、高校生600円



中学生以下無料

障がい者とその介護者一名は無料です。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。


交 通 上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分


東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅京成電鉄京成上野駅より徒歩15分


主 催 東京国立博物館クリーブランド美術館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
協 賛 住友ナコ マテリアル ハンドリング、日本写真印刷、ハイスター=エール・マテリアル・ハンドリング
協 力 国際交流基金全日本空輸日本貨物航空


お問合せ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
展覧会ホームページ http://www.nichibisai.jp



展覧会のみどころ

1 全米屈指の規模と質を誇るクリーブランド美術館の日本美術コレクションが里帰り。
2 雪村、始興、蘆舟、蕭白暁斎。人気の絵師が勢ぞろい。
3 平安から明治まで、日本絵画の流れと魅力を約50件の名品でたどる。
4 ピカソ、モネ、ルソーなど、西洋絵画の名品も来日

第一章 神・仏・人
第二章 花鳥風月
第三章 山水
終章 物語世界



第一章 神・仏・人

日本の絵画は中国からその主題と表現を学びました。神仏の姿や人のかたちの表現もまた、その影響のもとにありました。それらは、日本の信仰感情や風土にあわせ、時代ごとに変遷していきます。平安末から明治までに描かれた仏画や物語絵巻、肖像画などの優品を通して、日本絵画がどのように人体をとらえ、表現したのかをご覧いただきます。

雷神図屛風
「伊年」印 
江戸時代・17世紀


よく知られた「風神雷神図」のうち「雷神」の姿を描いた絵です。顔は獣のようですが、どこかおどけた表情が親しみ深く感じられます。雷神は下の人間界をみつめているのか、あるいは雷神と対峙する「風神」が、もう一つの屏風に描かれていたのかも知れません。


二河白道
鎌倉時代・13〜14世紀


現世のさまざまな誘惑に打ち勝ち、阿弥陀仏を一心に信じることで、執着心やむさぼりをあらわす水河と、人の怒りや憎しみをあらわす火河の二河の間にある細い白道を渡り極楽浄土にたどり着くことができます。浄土信仰がわかりやすく、そして感覚的に図解されています。

地獄太夫
河鍋暁斎(1831〜1889)筆 
明治時代・19世紀


打掛の紺地に赤い珊瑚が艶やかで、前垂れには唐子たちが賽の河原で宝珠を積んでいます。布袋は地獄から唐子を救います。太夫の後ろに、秋草に月を水墨であらわした屏風を立てて、色彩の対比を強調しています。暁斎の筆技が冴えわたり妖艶さを極めています。



霊昭女図
春屋宗園(1529〜1611)賛 
室町時代・16世紀


中国唐時代の仏教者、龐居士の娘で、竹籠を売り両親に孝を尽くした霊昭女は、古来、禅宗絵画でしばしば描かれた画題です。彩色を抑え、つぶさに描き込まれた頭髪や着物の柄から、神々しさが感じられますが、同時代に生きた人物の肖像画のように実感のある表現です。



第二章 花鳥風月

自然は人々に豊かな恵みと潤いをもたらすものとして憧れの対象であると同時に、天災を引き起こす怖れの対象でもありました。日本の絵画では生命を育む自然や動物は、人々の暮らしと密接なものとして表されています。さまざまな表現の花鳥画や走獣画(動物画)を通して、日本における自然観が、どのように絵画にあらわされたのかを明らかにします。


龍虎図屛風
雪村周継(生没年不詳)筆 
室町時代・16世紀



鎌倉で修行した禅僧の雪村は、「画道は仙術だ」といいました。雨を呼ぶ龍は、雨雲のなかを奔放に動きまわり、風を呼ぶ虎は落ち着いた顔で龍を眺めています。神々しいはずの龍虎が、ユーモラスな表現となっており、雪村の個性が余すところなく表されています。

松に椿・竹に朝顔図屛風(部分)
伝海北友松(1533〜1615)筆 
江戸時代・17世紀


雪山を背にした松の太い幹と屈曲する枝、そして小川の流れる水辺に篠竹が茂っています。それらを繊細な筆技の淡い墨で表しながら、明るい緑の葉に椿の白い花と、朝顔青い花が鮮烈な印象を与えています。画家の鋭い感覚が余白と淡い墨調との絶妙なバランスを生み出した作品です。 松に椿・竹に朝顔図屛風(部分)


南瓜図
伝没倫紹等(?〜1492)賛 
室町時代・15世紀


蟻のような黒い人物が、笹と扇で指揮をとり、笛太鼓で囃しながら、南瓜をひいています。室町時代には、この種の画題が流行しました。簡素な筆技であらわされた静物や、擬人化された虫を親しみ深い対象として描くことは、日本絵画の特色の一つといえます。



第三章 山水

日本の風景画―山水画も、中国絵画から多くを学びました。水墨画という、風景を目でみたままに描くことができる技法を手に入れたのです。しかし、その後日本では、独自の表現の展開がみられるようになります。室町から江戸時代に描かれた山水画をご覧いただくことで、日本における「理想の世界」がどのように表現されたのかを探ります。


春冬山水図屛風
伝天章周文筆 室町時代・15世紀


左に寺院の門前に梅が咲き、庭の掃除をする男や童子を従えた僧侶が村人と挨拶を交わす光景が描かれています。右側には雪山の景観が広がり、雪中の集落が描かれています。左右で絵はつながっていませんが、濃い墨調と直線的な樹木や岩の鋭い形態が画面に緊張感を漂わせています。


蘭亭曲水図
曽我蕭白(1730〜1781)筆
江戸時代・安永6年(1777)


破格な画風で知られる蕭白ですが、ここでは緻密な画面構成で理知的な一面をみせています。中国東晋時代の書聖・王羲之が催した曲水の宴は、しばしば水墨画で描かれた画題ですが、詩作に興じる主役のはずの文士たちの姿を蕭白は非常に小さく描いています。



特別出品 中国絵画について

雲山図巻(部分)
米友仁筆(1074-1151)筆
南宋時代・建炎4年(1130)

クリーブランド美術館蔵



この展覧会では、クリーブランド美術館の中国絵画コレクションのうち、仏画山水画の優品を合わせて展示することで、日本絵画の特色をいっそう際立たせます。
この米友仁の「雲山図巻」は南宋絵画の名品で、山や樹木の形を輪郭線ではなく点描であらわし、墨の絶妙な濃淡で量感をあらわしています。色の明度によって奥行きを生み出す中国絵画の重厚な筆法を示す作品のひとつです。

終章 物語世界

日本に伝わる物語は、人と自然が対立するものでなく、いわば渾然一体のものとして語られてきました。そこでは、生き物や植物をとりあげることで、登場人物の心情まで表されました。近世に広く広まった『伊勢物語』にかかわる絵画を展示し、人と自然がどのような関わりをもって表されたのかをご覧いただきます。

燕子花図屛風
渡辺始興(1683〜1755)筆 江戸時代・18世紀 



尾形光琳を慕った始興の代表作です。同じく『伊勢物語』第九段「東下り」をモティーフにした光琳の「燕子花図屏風」と比べると本図では、ひと花ひと花のかたちの違いや葉の裏表の色調などの変化を細やかに描いています。燕子花のかたまりを左右の画面で対照的に配置せず、心地良いバランスを生み出しています。

蔦の細道図屛風
深江蘆舟(1699〜1757)筆 江戸時代・18世紀



伊勢物語』で在原業平一行が東海道宇津谷峠にさしかかる場面です。業平は修行僧に都への手紙を託しています。薄暗い峠を越える心細さが、鮮やかな蔦の葉の朱色で強調され、山や水流と人物の重なりが画面に動きを生んで業平の心象まであらわされています。

特別展示 近代西洋の人と自然

トラとバッファローの戦い
アンリ・ルソー 1908年
クリーブランド美術館蔵


近代西洋絵画の一大コレクションを誇るクリーブランド美術館。それらのうち代表的な作品としてベルト・モリゾクロード・モネパブロ・ピカソアンリ・ルソーの4人の画家による人物画、風景画を展示します。社会、経済、国家のあり方が変わっていった近代の西洋では、人と自然がどのように絵画に表されたのか、これらの作品をご覧いただくことで明らかに