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日本伝統工芸展60回記念 人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ

artscene2013-12-14




日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」


平成館 特別展示室第3室・特別展示室第4室


2014年1月15日(水) − 2014年2月23日(日)


色絵吹重ね草花文鉢 今泉今右衛門(十三代)作 平成8年(1996) 東京国立博物館



生活の中で用いられる器や衣服、道具に美を求める工芸。日本では古くから、陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形などの工芸が発達し、その芸術性は今日においても高く評価されています。


人間国宝」(重要無形文化財の保持者)は、現代にも続く伝統の「わざ」の継承者であると同時に、日本が誇る工芸の発展に尽くし、日本工芸史に残る作品を生み出してきた功労者といえるでしょう。この展覧会では、国宝・重要文化財など歴史的に評価されてきた古典的な工芸と、現代の人間国宝の作品を一堂に集め、日本が誇る工芸の「わざ」の美をご覧いただきます。
本展は、歴代人間国宝104人の名品を「古典への畏敬と挑戦」、「現代を生きる工芸を目指して」、「広がる伝統の可能性」という3つのテーマで紹介します。さらに、国宝や重要文化財を含む古美術の名品を向き合わせて展示するコーナーも設けました。伝統と現代とのつながりを見る、これまでにない画期的な展覧会となります。



日本美術の祭典
2014年、上野の新春は「日本美術の祭典」で幕を開けます。東京国立博物館東京都美術館のコラボレーションにより、両館で開催される3つの展覧会を結ぶ特別なプロジェクトが実現しました。時代を超えて輝きを放つ絵画や工芸の名品に触れることで、さまざまな日本の美を再発見していただこうという新しい試みです。
当館では2つの特別展を同時開催します。「クリーブランド美術館展―名画でたどる日本の美」は、全米屈指といわれる同館の日本美術コレクションから、仏画肖像画花鳥画山水画などを選りすぐって公開するものです。日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」では、歴代の人間国宝や先人が残した古典の名作を展観し、日本が誇る工芸の精華を紹介します。


一方、東京都美術館で開かれる日本美術院再興100年特別展「世紀の日本画」には、近代日本画の巨匠たちの代表作が勢揃いします。 日本美術の粋が上野に集結するまたとないこの機会、素晴らしき三重奏をお楽しみください。



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開催概要
会 期 2014年1月15日(水) 〜 2014年2月23日(日)
会 場 東京国立博物館 平成館 特別展示室第3・4室(上野公園)
開館時間 9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日



観覧料金

一般1000円
大学生800円
高校生600円
中学生以下無料


交 通
上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分

東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅京成電鉄京成上野駅より徒歩15分


主 催 東京国立博物館文化庁、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社日本工芸会
協 賛 花王日本写真印刷
お問合せ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
展覧会ホームページ http://www.nichibisai.jp


関連事業<講演会・講座> シンポジウム「日本工芸の21世紀を考える」
平成館 大講堂 2014年1月25日(土) 13:30 〜 15:00 <講演会・講座> トークイベント「日本の工芸を語る」
平成館 大講堂 2014年2月1日(土) 13:30 〜 15:00 <ワークショップ> 親子向けワークショップ「木竹工:竹とんぼづくり」
平成館 小講堂 2014年1月26日(日) 13:30 〜 15:00 <ワークショップ> 親子向けワークショップ「陶芸:上絵付け体験」
平成館 小講堂 2014年2月16日(日) 13:30 〜 15:00 <列品解説・ギャラリートーク> 現役人間国宝によるギャラリートーク(全11回)


平成館 特別展示室第3室・特別展示室第4室
2014年1月15日(水) 〜 2014年1月31日(金)
(毎週 火・水・木・金) 13:30 〜 14:00 当日受付


同時開催<特集陳列> 人間国宝の現在(いま) (平成館企画展示室)



展覧会のみどころ

1 人間国宝作品、完全制覇!
特別展示室では、物故された重要無形文化財保持者(人間国宝)全104名(注1)の名品を展示します。平成館一階の企画展示室では、現在もご活躍の人間国宝、全53名(注2)の作品を展示します。両会場を回れば、人間国宝の作品を網羅することができます。
(注1)刀剣研磨、手漉和紙を除く。
(注2)手漉和紙を除く。

2 国宝 VS 人間国宝
第一章「古典への畏敬と挑戦」では、国宝・重要文化財を含む工芸の古典の名品と、重要無形文化財の保持者の代表作とを並べて展示し、「伝統」がどのように現代に伝えられているのかを考えます。
第一章 古典への畏敬と挑戦

3 研究員が選ぶ「古典の名宝」
火焔型土器をはじめ、片輪車蒔絵螺鈿手箱など、東京国立博物館研究員が選んだ日本工芸史を代表する国宝・重要文化財を展示します。
研究員が選ぶ「古典の名宝」

4 工芸の全ジャンルが一堂に
第二章「現代を生きる工芸を目指して」では、現代に合った伝統工芸を模索してきた作家たちの作品を、陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形・諸工芸に分けてご覧いただきます。
第二章 現代を生きる工芸を目指して

5 伝統工芸が作り出す「未来」
第三章「広がる伝統の可能性」では、伝統とは何か、ということを問いたださずにはおれない、前衛的な作品を展示します。
第三章 広がる伝統の可能性

第一章 古典への畏敬と挑戦

身のまわりのものに美を求めわざを凝らす工芸は、日本人の生活の中に深く、強く結びついてきました。正倉院宝物や仏教美術、桃山工芸、あるいは茶道具など日本の古典的な工芸品からは、工芸を愛し、その美とともに生きてきた人々の姿がうかがえます。古典のもつわざと美を目標として制作する活動が評価された人間国宝の作品を、彼らが目指した古典や、その造形に影響を与えた作品とともにご覧いただきます。

小袖 白縮緬地衝立鷹模様 VS 一越縮緬鳳凰桐文振袖
小袖 白縮緬地衝立鷹模様
江戸時代・18世紀
東京国立博物館蔵 一越縮緬鳳凰桐文振袖
田畑喜八(三代) 作(1877〜1956) 昭和29年(1954)
京都国立近代美術館

古典の威力×人間国宝の妙技

「小袖白縮緬地衝立鷹模様」は、友禅染の技法がもっとも卓越した江戸時代中期における優品です。細い糸目糊で輪郭を描いた上で、臙脂・藍・雌黄・墨というわずか4色の天然染料を混ぜ、暈かすことによって、まるで1枚の絵画のような繊細な色彩を表現しています。一方、田畑喜八(三代)は、江戸時代末期から続く京友禅の家に生まれ、伝統的な友禅技法に寄りながら友禅染のモダン世代を築きあげた友禅師。
ヴァリエーションに富んだ化学染料によって挿された鮮やかな色彩と大胆で華麗な模様の美は、西欧文化の洗礼を受けた近代という時代を象徴しています。

研究員が選ぶ「古典の名宝」

当館研究員が日本工芸史を代表する古美術の名品を選んで展示するコーナーを設置します。
国宝 片輪車蒔絵螺鈿手箱
国宝 片輪車蒔絵螺鈿手箱
平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵 日本で独自に発展した漆芸装飾技法である、蒔絵の名品。文学における源氏物語古今和歌集のように、日本漆芸の古典中の古典ともいうべき存在です。蒔絵の技法は奈良時代に発達しましたが、古代の蒔絵の遺例は少なく、平安時代の蒔絵作品は大変貴重です。

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第二章 現代を生きる工芸を目指して

日本の工芸は、常に時代の流れとともに変化をしながら連綿と伝えられてきました。現代においても、近代化や第二次世界大戦を経て日本人の生活様式は大きく変化し、伝統工芸は時代の「用の美」にあったわざと美を目指していくことになります。作家たちは伝統を強く意識しながらも、現代に合った新たな技術、新たな表現を求めました。現代を生きる工芸とは何か、作家たちの答えがここにあります。

抱擁 抱擁
平田郷陽作 昭和41年(1966)
個人蔵

江戸末期より見世物として制作された生人形の作家としてスタートした平田郷陽。戦前の人形芸術運動を経て、戦後はその写実的な人間描写から脱却し、体躯を単純化した線でとらえつつ、つややかでなまめかしい女性の本質を象徴的に表現する作風へと転じました。

截金彩色飾筥「花風有韻」
江里佐代子作 平成3年(1991)
文化庁

江里は仏師と結婚したことから、截金という仏像や仏画の世界に連綿と息づく技法を志すようになりました。まさに伝統そのものからの出発でしたが、この貴重な技を広く大勢の人々に知ってもらいたいとの願いから、截金を工芸品に応用することを思い立ったといいます。 截金彩色飾筥「花風有韻」

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第三章 広がる伝統の可能性

作家の創意と工夫によって日本の工芸は多様性を増し、これまでの伝統の概念をくつがえす勢いです。伝統的な「わざ」をベースとしながらも、創作性や個性的なデザインを重視した美の造形は現代に広く受け入れられることとなりました。伝統に新たな枠組みを提示し、可能性を広げていった作家たち。その評価は、未来にたくされます。

耀彩壺「恒河」 耀彩壺「恒河」
徳田八十吉(三代)作 平成15年(2003)
小松市立博物館蔵

九谷を愛し再興九谷でその美を再現した加賀、その地に生まれた徳田八十吉は祖父の初代徳田八十吉から九谷の色釉の技を学んでいます。
その技を究めた先に新たな表現が生まれました。模様を彩った色釉は、表現そのものとなり、徳田八十吉の世界となりました。

竹華器「怒濤」
生野祥雲斎作 昭和31年(1956)
東京国立近代美術館

祥雲斎は、日本有数の竹工芸産地である別府で、名工として知られた佐藤竹邑齊に入門し、死に物狂いの修業により、わずか2年で独立を果たしました。この情 熱が彼の持ち味で、作風は時代とともに変転しています。写真は彫刻的な造形美を追究し始めた頃の、ダイナミックな作品。 竹華器「怒濤」

朱漆捩紐文火鉢 朱漆捩紐文火鉢
黒田辰秋作 昭和37年(1962)頃
豊田市美術館

柳宗悦河井寛次郎らと親交のあった黒田は、若い頃には民芸運動に参画し、欧州の石彫や李朝家具のモチーフや技法を取り入れた作品が見られます。
この火鉢では、捩紐文は巨大かつ立体的に彫り表わされ、大胆で個性的なデザインに昇華されています。

蠟型鋳銅置物「三禽」
蠟型鋳銅置物「三禽」
佐々木象堂作 昭和35年(1960)
東京国立近代美術館

蠟型鋳造とは、蠟で原型を作る古代以来の技法。青銅色仕上げの3羽の鳥の、細く鋭敏なフォルムは、抽象化の極致とも、プリミティブな生の造形把握とも見えます。アールヌーボーやデコなどを吸収、日展での活躍を経て、日本伝統工芸展に出品された最晩年の作。

【同時開催】特集陳列「人間国宝の現在(いま)」

2014年1月15日(水)〜2月23日(日) 平成館1階 企画展示室
蒔絵螺鈿八稜箱「彩光」
重要無形文化財の保持者として「人間国宝」に認定された工芸作家たちは、そのわざと美をさらに極め、後継者の育成や日本の工芸の発展に力を注いでいます。現在を生きる人間国宝53人(注)(2013年9月現在)の作品を展示し、その活動をご覧いただきます。

(注)手漉和紙を除く。

蒔絵螺鈿八稜箱「彩光」
室瀬和美
平成12年(2000) 文化庁
第47回日本伝統工芸展出品 東京都知事賞受賞