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古瓦16万枚“供養”に苦労 

artscene2013-01-03

修復中の知恩院東本願寺 京都



修理が進む知恩院・御影堂


 京都市内の二つの仏教本山が、修復工事中の巨大な木造のお堂から出る古瓦の処理に苦慮している。浄土宗総本山・知恩院東山区)は、国宝・御影(みえい)堂の約6万枚の古瓦の処理方法がまだ決まらず、真宗大谷派本山・東本願寺下京区)は阿弥陀(あみだ)堂の約10万枚の古瓦の再資源化を諦めた。信者の浄財で造られた瓦を産業廃棄物として処理したくはないが、あまりに大量でリサイクルし切れないという。
 知恩院の御影堂は、京都府教育委員会が修理中で、今年11月に屋根瓦を降ろす工事が本格化した。瓦約9万枚のうち約3万枚は再び使用するが、傷みの激しい約6万枚は使えない見込みだ。


 お布施をした人に記念品として進呈したり、おわんや花瓶を作る粘土に混ぜることを検討しているが、全てを使い切るのは無理だという。知恩院は「産廃にするのはしのびない。再利用を模索中だが、量が多過ぎる」と漏らす。屋根瓦10万8千枚のほとんどをふき替える東本願寺阿弥陀堂大谷派は古瓦をリサイクル業者に有償で引き渡す計画だ。


 当初は再資源化を模索した。環境問題への配慮だけでなく、明治時代の再建時に門信徒から寄進された瓦をおろそかにできないとの思いもあった。同じ境内の御影(ごえい)堂を修理した際は、古瓦約12万枚を、境内の花壇に再利用したり、湿気を防ぐ調湿剤や歩道の舗装材に加工して再資源化した。


 だが今回は、これ以上古瓦を活用する場所がなく、調湿剤の製造工場も閉鎖。一部は末寺や門徒、造園業者に引き取ってもらったが、大半が残った。同派は「再資源化や再利用は、一宗派だけでは限界がある」と話す。


 府教委文化財保護課によると、文化財の建造物から出る屋根瓦や檜皮(ひわだ)は、原則は再使用するが、傷みが激しい場合は新調し、古い瓦や檜皮は産廃として処分している。所有者が引き取ることもあるが費用や保管場所などの問題から再資源化できず、結局は産廃処分するケースが多いという。