古筆手鑑 出光美術館
開催期間
2012年2月25日(土)〜 3月25日(日)
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html
二つの国宝手鑑、『見努世友』と『藻塩草』を初めて同時展示します
古筆手鑑『見努世友(みぬよのとも)』(出光美術館蔵)と『藻塩草(もしおぐさ)』(京都国立博物館蔵)は、江戸時代に古筆の鑑定を専門職とした古筆本家が制作した、鑑定の規範とも言える手鑑で、名筆のみによる整然とした配列と、仮名書跡として美術的に優れた平安時代の古筆切を数多く含む手鑑として、国宝に指定されています。本展では、兄弟手鑑ともいえる両作品を同時に展示します。また、阪急文化財団(逸翁美術館)秘蔵の名品、益田鈍翁がまとめた古筆手鑑『谷水帖』の全葉を一挙公開するのも今回が初めてです。名品の数々を一度に鑑賞できるまたとないこの機会をどうぞお見逃しなく。
展覧会の構成
《『見努世友』と『藻塩草』》
Ⅰ プロローグ
Ⅱ 国宝 古筆手鑑『見努世友』と『藻塩草』
《前田家関係の古筆と手鑑》
Ⅲ 前田家の古筆蒐集
Ⅳ 前田家旧蔵古筆手鑑 ―『濱千鳥』と『はまちどり』
《近代再編の手鑑と『谷水帖』、館蔵古筆の名品》
Ⅴ 中世古筆切の宝庫 ―近代再編の古筆手鑑『聯珠筆林』と『墨寶』
Ⅵ 眼の贅沢、平安の古筆切尽くし ―古筆手鑑『谷水帖』
各章の解説
《『見努世友』と『藻塩草』》
Ⅰ プロローグ
最初のコーナーでは、貴族文化の中で大切に鑑賞・保存されてきた本来の形状の古筆(巻子本、冊子本)、古筆切となった作品(掛け軸)、古筆切の鑑定関連の資料(鑑定家の印譜と極札)、手鑑制作の参考書等、古筆を見る上での基本知識となる作品や資料を展示します。
Ⅱ 国宝 古筆手鑑『見努世友』と『藻塩草』
次のコーナーでは、本展のハイライト、二つの国宝手鑑をご覧いただきます。両手鑑には、様々な身分(天皇、親王、公卿、歌道家、武家、女性、諸道の名人、法親王、僧など)の伝称筆者による古筆切が、帖の表と裏に整然と配列されています。中でも「勅筆(ちょくひつ)」(天皇の書)と「公卿」の部分(表面)、平安時代の古筆が集中する「名人」の部分(裏面)がみどころです。会期前半(2月25日〜3月11日)では『見努世友』の表面部分と『藻塩草』の裏面部分を、会期後半(3月13日〜3月25日)では『見努世友』の裏面部分と『藻塩草』の表面部分を展示します。
国宝 古筆手鑑 『見努世友』 出光美術館蔵 〈表面部分/2月25日〜3月11日展示 裏面部分/3月13日〜3月25日展示〉
筑後切 拾遺和歌集 伏見天皇筆 鎌倉時代
〈2月25日〜3月11日展示〉
堺色紙 伝藤原公任筆 平安時代
〈3月13日〜3月25日展示〉
国宝 古筆手鑑 『藻塩草』 京都国立博物館蔵 〈表面部分/3月13日〜3月25日展示 裏面部分/2月25日〜3月11日展示〉
尼子切 伝藤原伊経筆 平安時代
〈2月25日〜3月11日展示〉
金剛院切 伝亀山天皇筆 鎌倉時代
〈3月13日〜3月25日展示〉
もっとみどころ1
手鑑の名称
手鑑の名称には「筆」や「墨」など、文字や筆跡に関連する語や、「林」「鑑」などの集合や手本を表す語が多くみられます。また、「鳥」や「藻」が多く見られるのも、鳥の足跡が文字を連想させた中国の故事や、塩を取るための海藻を「掻き」集めることが「書く」に通じることに由来しています。当館所蔵の『見努世友』は、兼好法師の著した『徒然草』十三段の「燈のもとで古人の書に接する事は、見ぬ世の人を友とする思いがする」というくだりに拠る、たいへん洒落た名称です。
国宝 古筆手鑑 『見努世友』 出光美術館蔵
もっとみどころ2
高野切 第一種、第二種、第三種が勢揃い!
美しい平安の仮名のなかでも最高峰として名高い、高野切。紀貫之筆の伝承をもちますが、その書風から三人の筆者による寄合書きと伝えられ、各々第一種、第二種、第三種と呼ばれています。当館では第一種と第三種を所蔵していますが、この度は第二種所収の『藻塩草』、第三種所収の『谷水帖』のご出品がかない、期間限定(2月25日〜3月11日展示)ながら、三種を同時期にご覧いただけることになりました。この機会に高野切の魅力をじっくりご堪能ください。
高野切第一種 伝紀貫之筆 平安時代 重要美術品 出光美術館蔵 〈全期間展示〉
《前田家関係の古筆と手鑑》
Ⅲ 前田家の古筆蒐集
江戸時代、代々の当主が古筆や茶道を蒐集したことで知られる加賀前田家。歴代の当主の中には、鑑定の専門職、古筆家も顔負けの鑑識眼で、手鑑を制作した当主もいたといわれます。このコーナーでは、前田家第三代・利常の古筆蒐集を物語る自筆の書状巻と、「継色紙(つぎしきし)」『中務集(なかつかさしゅう)』『定頼集(さだよりしゅう)』等、前田家旧蔵の古筆の名品を展示します。
継色紙「むめのかの」 伝小野道風筆 平安時代 重要文化財 出光美術館蔵
Ⅳ 前田家旧蔵古筆手鑑 ―『濱千鳥』と『はまちどり』
江戸時代、前田家では代々が蒐集した古筆切を独自に分類し、大部の手鑑大系を制作していたことが記録に残っています。その大系は、1冊も伝わっていませんが、大正末期の売立目録には前田家旧蔵手鑑として『濱千鳥(はまちどり)』・『はまちどり』の記載があります。時を経て両手鑑は当館蔵・個人蔵となり、80数年ぶりに本展で再会します。
《近代再編の手鑑と『谷水帖』、館蔵古筆の名品》
Ⅴ 中世古筆切の宝庫 ―近代再編の古筆手鑑『聯珠筆林』と『墨寶』
近代に入り、茶の湯のかってない流行による、掛け物の需要や、平安時代の古筆への偏重から、既存の古筆手鑑から平安時代の古筆が剥がされて再編され始めます。このコーナーでは、内容的にも貴重な鎌倉〜南北朝の中世古筆の宝庫として、近年注目を集めている古筆手鑑『聯珠筆林(れんじゅひつりん)』と『墨寶(ぼくほう)』を展示します。
Ⅵ 眼の贅沢、平安の古筆切尽くし ―古筆手鑑『谷水帖』
近代の財界人として、また茶人・美術品蒐集家として知られる益田孝(鈍翁)は優れた古筆切の蒐集家としても著名です。鈍翁が、古筆研究家で料紙作家の田中親美の協力を得て、平安時代の古筆のみを選りすぐって蒐集し、一帖にまとめた手鑑が『谷水帖(たにみずじょう)』です。『谷水帖』は阪急文化財団(逸翁美術館)秘蔵の名品のため、館外展示の機会はほとんどありませんでした。所収古筆切全葉の一挙公開は、今回が初めてです。鈍翁の眼に叶った古筆の仮名書と料紙は、溜息の出るような美しさで、24葉の圧巻、まさに眼の贅沢です。
重要文化財 古筆手鑑 『谷水帖』 阪急文化財団(逸翁美術館)蔵 〈全期間展示〉
開館時間
午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
毎週金曜日は午後7時まで(入館は午後6時30分まで)
会期・開館時間等は都合により変更することがあります。最新情報は当ウェブサイトまたはハローダイヤル(03-5777-8600)でご確認ください。
休館日
毎週月曜日
入館料
一般1,000円/高・大生700円(団体20名以上 各200円引)
中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です)
※障害者手帳をお持ちの方は200円引、その介護者1名は無料です