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歌川広重 水墨画風の肉筆浮世絵発見


「武蔵多満川」

 

 「東海道五十三次」などの風景画で知られる江戸時代の人気浮世絵師、歌川広重が描いた水墨画のような珍しい作風の肉筆の浮世絵が新たに見つかり、晩年の広重の幅広い創作活動がうかがえる作品として注目を集めている。


 今回見つかった浮世絵は、掛け軸に仕立てられた長さ120cm、幅40cmほどの大きさで、今から160年ほど前、広重が晩年の52歳頃の作品とみられている。「武蔵多満川」と題したこの絵は、月明かりが照らす山々と多摩川の流れが水墨画のような作風で描かれている。



 この浮世絵の基になったとみられる作品が、イギリスの大英博物館が所蔵する広重の下絵帳に描かれている。屏風に仕立てるために描かれた6枚1組の風景画のうちの1枚だったことが分かる。鑑定に当たった市川信也(栃木県那珂川町、広重美術館館長)は、鮮やかな色彩を得意とする広重には珍しい水墨画風の絵で、筆の運びが非常に丁寧で緊張感があり、晩年の作品の中でも一級の出来と言って良い、広重の作品としては一級のものだという。


 今回見つかった肉筆画は、2012年1月、川崎市の「川崎・砂子の里資料館」で展示予定。