Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

あなたの肖像―工藤哲巳回顧展

Your Portrait: A Tetsumi Kudo Retrospective


2014.2.4-3.30
会場
東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
会期
2014年2月4日(火)〜3月30日(日)
開館時間
10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
休館日
月曜日(3月24日は開館)
観覧料
一般850(600)円 大学生450(250)円
*高校生以下および18歳未満、障害者手帳などをご提示の方とその付添者(1名)は無料。
( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
*「あなたの肖像―工藤哲巳回顧展」の観覧券で、当日に限り、「MOMATコレクション」「泥とジェリー(仮称)」もご覧いただけます。
主催
東京国立近代美術館国立国際美術館青森県立美術館
協力
日本航空株式会社
美術館へのアクセス
東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩3分
〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1


http://www.tetsumi-kudo-ex.com

戦後美術における異形・異能の芸術家 工藤哲巳  東京で初めての回顧展
《人間とトランジスタとの共生》1980−81年 国立国際美術館
撮影:福永一夫
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
《人間とトランジスタとの共生》1980−81年 国立国際美術館
撮影:福永一夫
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
工藤哲巳(1935-90)は、東京藝術大学在学中から作品の発表を始め、「反芸術」の代表的作家のひとりとして、早くから世間の注目を浴びました。1962年以降はパリに拠点を移し、80年代半ばまで、主に欧州で活動します。日本では「反芸術」の印象の強い工藤ですが、それは最初の数年間に過ぎません。とくにパリに拠点を移したのちは、文明ないし社会批評的観点から作品を制作していきました。本展では日本初公開の作品に加え、彼が作品制作と同様に取り組んできたパフォーマンスに関する記録映像、写真など、総数200点を超える作品や資料を展示し、彼の活動の全貌を紹介致します。日本では20年ぶり、東京では初めての回顧展です。



世界で再評価の進む工藤哲巳。日本では20年ぶり、東京では初の回顧展
1994年に大阪の国立国際美術館で開催された回顧展以来、国内では20年ぶりの回顧展、東京では初の回顧展です。
日本初公開の作品を含む国内外の代表作200点が集まる大展覧会。
アムステルダム市立美術館、ゲント現代美術館、ポンピドゥ・センター(パリ)、ニューヨーク近代美術館などをはじめ、海外から借用する作品の多くは日本初公開です。工藤の活動を包括的に紹介する初めての機会と言えるでしょう。
読売アンデパンダン」展の傑作。約半世紀ぶりに日本に帰国。
1962年第14回「読売アンデパンダン」展での出品作《インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生》(ウォーカー・アート・センター蔵)が、約半世紀ぶりに日本で展示されます。ひとつの展示室を丸ごと占有したこの作品は、今の言葉で形容すればインスタレーションとも言うべきもので、赤瀬川原平曰く、「この年の最大傑作」と高く評価された伝説的作品です。
豊富な記録写真や映像資料
ハプニング「インポ哲学」
ブーローニュ映画撮影所(パリ)
1963 年2 月 撮影:工藤弘子
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
ハプニング「インポ哲学」
ブーローニュ映画撮影所(パリ)
1963 年2 月 撮影:工藤弘子
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
工藤は作品制作のみならず、自身の身体を用いて数々のパフォーマンス(ハプニング/セレモニー/パフォーマンス)を行いました。これらを記録写真、記録映像、関連資料によって紹介します。
展覧会特設サイトをオープン!
東京国立近代美術館国立国際美術館青森県立美術館の3館で特設サイトを運営します。会期中、情報を随時更新していきます。こちらもぜひチェックしてみてください!

http://www.tetsumi-kudo-ex.com




展覧会構成
1) 1956-62 Tokyo
《X型基本体に於ける増殖性連鎖反応》1960年 東京都現代美術館
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
《X型基本体に於ける増殖性連鎖反応》1960年 東京都現代美術館
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
工藤哲巳は、大学卒業前後から主に「読売アンデパンダン」展で活躍しました。当初はアンフォルメル風の絵画を描いていましたが、増殖をテーマに無数の紐の結び目からなる立体の作品、木の根っこに無数の釘を打ちつけた作品などを制作するようになりました。一連の作品には「融合反応」や「増殖性連鎖反応」といった物理学の用語を思わせる題名がつけられています。また、ここでは「読売アンデパンダン」展の会場一室を占有して話題となった《インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生》も紹介します。
2) 1962-69 Paris
《あなたの肖像》1963年
高松市美術館蔵 撮影:高橋章
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
《あなたの肖像》1963年
高松市美術館蔵 撮影:高橋章
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
パリに到着した直後から工藤は現地の芸術家、批評家たちと交流し、多くの展覧会に参加しました。また、この頃から箱や鳥かご、温室といった対象を閉じ込めるかのようなフレームを用いるようになります。断片的な身体、あるいは肥大化したり溶け出したりする身体が、それぞれサイコロを模した箱に入れられ積み上げられた《あなたの肖像》や、観音開きの戸棚のような矩形のなかに、瓶詰にされた人形が並ぶ《あなたの偶像》など、閉所に押し込められ、一方でそのなかで保護される人間の様相を表現したショッキングな作品を発表し、物議を醸しました。
3) 1969-70 Mt. Nokogiri (Chiba)
1969年、一時帰国。さなぎと男根のダブルイメージを象った巨大なモニュメント《脱皮の記念碑》を、千葉県鋸山の断崖に制作しました。学生運動の渦中に飛び込み、若い世代との交流を図りました。
4) 1970-75 Dusseldorf, Paris, Amsterdam, and Milan
環境汚染、放射能などの公害問題をテーマに、人間と自然と科学技術とが共生するモデルを提示した作品「環境汚染―養殖―新しいエコロジー」を、1971年頃から展開しました。個展を行ったデュッセルドルフでは、劇作家・イオネスコの手掛けた映画の舞台美術の制作を手伝いました。しかし、その後、彼をヨーロッパの悪しき知識人の典型として批判の俎上に乗せ、「イオネスコの肖像」を制作。また、「コンピュータ・ペインティング」と題された平面作品に取り組みました。
5) 1975-80 Okayama, Berlin, and paris
《マザー・コンプレックス・パラダイス》1980 年 高松市美術館
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
《マザー・コンプレックス・パラダイス》1980 年 高松市美術館
(c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
岡山でのグループ展のために一時帰国したのち、ドイツ学術交流基金(DAAD)の奨学金でベルリンに一年間滞在し、制作を行いました。1970年代後半頃から、作品の見た目は攻撃的ものから徐々に内省的なものへと変化していきました。まるで逃れられない運命や遺伝子のネットワークを手繰るかのように、綾取りを行う姿の自画像などが制作されるようになります。1980年にはアルコール中毒治療のため、一時入院しました。
6) 1980-90 Tokyo, Paris and Hirosaki
70年代後半から見られるようになった糸の塊は、次第に繭玉として独立し、《二つの軸とコミュニケーション》といった作品に発展していきます。ここでは、自らの死が近いことを悟ったうえで制作されたと思われる晩年作品《前衛芸術家の魂》や人魂、凧などの作品を紹介します。


作家紹介
工藤哲巳とは
工藤哲巳 1971年 撮影:工藤弘子 (c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
工藤哲巳 1971年 撮影:工藤弘子 (c)ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
1935年、大阪生まれ。父の出身地である青森で少年時代を過ごし、父の早世後、母の郷里の岡山で高校時代を過ごしました。東京藝術大学に進学。大学在学中から、「読売アンデパンダン」展を中心に作品の発表を開始。篠原有司男や荒川修作たちが結成した「ネオ・ダダ」とともに、「反芸術」の代表格として注目されました。
1962年、渡仏。以来、日本を行き来するようになる80年代半ばまで、欧州を中心に活躍。ヨーロッパでは、「あなたの肖像」のシリーズに代表されるように、同地の「良識」を挑発する作品やパフォーマンスを次々と展開。1972年には、アムステルダム市立美術館で個展が開催されました。
1970年代後半頃から、徐々に内省的な雰囲気を湛えた作品へと変化していきます。1987年には、母校の東京藝術大学の教授に就任。1990年11月12日、55歳の若さで他界しました。彼の作品は一見するとグロテスクですが、それらは物理学や数学、文明社会への関心を踏まえ、「社会評論のモデル」として、見る者の既成概念を揺るがすことを目的に作られています。
1994年には国立国際美術館で回顧展。2007年にはメゾン・ルージュ(パリ)、2008年にはウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)で回顧展が開かれるなど、世界的に再評価の機運が高まっています。