Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

時代を作った技−中世の生産革命

artscene2013-06-29


開催要項
時代を作った技
開催期間
2013年7月2日(火)〜9月1日(日)

会場 国立歴史民俗博物館 企画展示室
料金 一般 830(560)円
高校生・大学生 450(250)円
小・中学生 無料
(  )内は20名以上の団体
総合展示もあわせてご覧になれます。
毎週土曜日は高校生は入館無料です。


Time 開館時間 9時30分〜17時00分 (入館は16時30分まで)

closed on Mondays
休館日 7月8日(月)、16日(火)、22日(月)、29日(月)、8月5日(月)、19日(月)、26日(月)
※8月12日(月)はopen 開館します

主催 国立歴史民俗博物館
共催 広島県立歴史博物館



中世は技術が大きく飛躍した時代でした。貴族など上位階層の人たちが儀式などの特別な場で使うものを作る古代の技術から大きく転換し、一般庶民が日常生活で使うための道具が大量に作られます。陶器・漆器・鉄器などが一般消費者へ浸透することで中世の生活変化をもたらしました。考古学の成果からみえてきた中世社会は、生産・流通システムに裏付けられた物質的に豊かな消費社会だったのです。この社会を支えた生産技術は、いかに効率よく大量にモノを作るか、という方向性にあらわれました。

一方、日本の工芸技術は海外でも大きく評価され、銅鏡や漆器などのメイド・イン・ジャパンはブランド品として輸出されました。また、東アジアや南蛮貿易によってもたらされた印刷や鉄炮、ガラス生産などの海外の技術は、従来からある日本の技術体系の中で消化され、さらに高性能な鉄炮など、より高度な技術の製品が開発されるようになっていきました。このような、時代のエネルギーの結晶は最先端技術の到達点として実を結び、モニュメントとしての伏見城大坂城などの城郭や、ヨーロッパでjapan(漆器)としてもてはやされた「南蛮漆器」などの精緻な美術工芸品が次々と生み出されていったのです。

この企画展示では「中世のモノ作り」、すなわちこうした中世の技術とそれを支えた職人たちの実像に迫ります。近年の発掘調査の成果により、個々の道具や工房だけでなく、京都や鎌倉などの都市や流通拠点での生産状況、中世のコンビナートと呼ばれ、さまざまな業種の人々が集まっていた茨城県東海村村松白根遺跡のような職人の村など、生産の場も判明してきています。最新の成果を盛り込みながら、文献史学・考古学・民俗学・美術史学・分析化学などの多視点からの検討を重ね、新しい中世の技術史像を描きます。


展示構成
0.古代から中世へ
1.生活を変えた技術
:中世の暮らし…草戸千軒の生活
:さまざまな生産活動…漆器、木製品、陶磁器、製鉄、鍛冶、鋳物、骨角製品、石製品

2.職人の姿
:職人と神仏
:職人の仕事ぶり
:暮らし…職人の暮らし
3.生産技術と場
:寺社と職人…鎌倉
:中世のコンビナート…北沢、村松白根遺跡
4.最先端をいく技術
:権力と技術…「小田原物」の世界
:工芸技術の粋…鏡、刀装具、刀
:外来技術の融合…鉄炮、ガラス、キリシタン物、南蛮漆器、印刷

5.モニュメントの建造
:荘厳する瓦
:巨石を切る
【主な展示資料】
※期間中、展示替えを行います。
草戸千軒町遺跡出土生活・生産関連遺物〈重文〉(広島県立歴史博物館蔵)、高松宮家本「職人歌合絵巻」(本館蔵)、「紙本著色職人尽絵」(本館蔵)、一乗谷朝倉氏遺跡出土生活・生産関連遺物〈重文〉(福井県教育委員会蔵)、金銅製愛染明王像〈重文〉(横浜市称名寺蔵)、覚園寺開山塔納置品銅五輪塔〈重文〉(鎌倉市覚園寺蔵)、極楽寺金銅密教法具〈重文〉(鎌倉市極楽寺蔵)、太刀(無銘伝国行)〈重文〉(本館蔵)、草花蒔絵螺鈿箪笥(本館蔵)

など約900点

展示替え資料一覧はこちら(PDF)
http://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/img/130702/list.pdf

化粧道具 漆器

広島県立歴史博物館蔵)
室町時代:14〜15世紀
中世の人々の豊かな生活が伝わります。


漆器

鎌倉市教育委員会蔵)
鎌倉〜室町時代:13〜14世紀
これらは下地に柿渋を塗った安物の漆器です。平安時代中頃まで、漆器の下地にはすべて漆が使用されており、高級品しか作っていませんでした。しかし、中世になるとこのようにリーズナブルなものが作られるようになり、広く庶民層にも浸透しました。

瀬戸の窯道具 黄金造り獅子形目貫
瀬戸の窯道具

(愛知県埋蔵文化財調査センター蔵)
戦国時代:16世紀
戦国時代の瀬戸は、全面に釉薬をかけた陶器の大量生産に成功しました。それを支えたのが、15世紀ころから新しく工夫されたこれらの窯道具です。信長も称賛し、瀬戸の職人を保護した文書が残っています。


黄金造り獅子形目貫 [重要文化財]

福井県教育委員会蔵)
戦国時代:16世紀
一乗谷から出土した刀を飾る刀装具。細かな彫金を施しており、戦国大名が蓄えた技術力を示してくれます。

青磁貼花文雲龍文四耳壺 蓬莱文漆器
青磁貼花文雲龍文四耳壺

(大和文華館蔵)
室町時代:14世紀
小田原城から出土したとの伝承。北条氏が収集した、当時においても骨董品です。戦国大名は文物を収集するなかで、それを生産する技術の獲得へと動きました。


蓬莱文漆器

七尾市教育委員会蔵)
戦国時代:16世紀
石川県七尾城シッケ地区出土。漆下地の高級漆器で、文様も非常に細かく描かれています。戦国大名能登畠山氏の城下町にも、高い工芸技術が育ちました。

化粧道具
綱家作短刀

小田原城天守閣蔵)
戦国時代:16世紀
刻まれた銘文から、天文7年(1538)に小田原鍛冶・綱家が作ったことがわかります。戦国大名・小田原北条氏は技術者を城下に集めます。鍛冶職人も手厚く保護され、かれらは小田原ブランド名刀の「小田原相州」を生み出しました。綱家の名前の「綱」は、2代当主・北条氏綱から一字をもらったものです。

三十二間筋兜 鏡鋳型
三十二間筋兜

秩父市椋神社蔵)
戦国時代:16世紀
北条氏邦(うじくに)(3代当主・氏政の弟)が奉納したと伝わる兜。小田原の職人が作ったと銘文が刻まれています。戦国時代の小田原ブランド「小田原鉢(おだわらばち)」の現存する優品です。


鏡鋳型

京都市考古資料館蔵)
鎌倉時代:13世紀
中世京都は日本全国だけでなく海外にまでもてはやされた銅鏡を作りました。その鋳型が奇跡的に残っています。

メダイと鋳型 草花蒔絵螺鈿箪笥
メダイと鋳型

(福岡市埋蔵文化財センター蔵)
戦国時代:16世紀
キリシタンが首から下げたメダイ(メダル)。国内でもコピーを作りました。タイ産の鉛を輸入して作っていたこともわかってきました。


草花蒔絵螺鈿箪笥

(本館蔵)
戦国〜江戸時代:16〜17世紀
西洋に輸出された「南蛮漆器」。東南アジア産の漆、朝鮮の螺鈿(らでん)技術、中国伝来の真鍮(しんちゅう)、西洋型の鍵と、国際色豊かな要素が日本で融合しました。西洋では漆器のことをjapanと呼んでもてはやしました。

金箔瓦 一乗谷の数珠屋・復元画
金箔瓦

京都市考古資料館蔵)
戦国時代:16世紀
伏見城の金箔瓦。信長と秀吉はともに金箔瓦を好みましたが、金箔の張り方や技術が異なっていました。


一乗谷の数珠屋・復元画

(松田奈穂子画)
戦国時代:16世紀
一乗谷朝倉氏遺跡からは職人街が発掘されています。そのなかに数珠屋もあり、間取りも詳しくわかっています。それをもとに復元画を描きました。

杖頭 鉦叩き・イラスト
杖頭 [重要文化財]

広島県立歴史博物館蔵)
室町時代:14〜15世紀
鉦叩き・イラスト

(松田奈穂子画)
草戸千軒町遺跡からは骨角の加工品が多数出土しています。鹿の角を加工した杖先飾りは、鉦叩きがもつ鹿杖(かせづえ)として絵巻物などにしばしば描かれています。

担当者インタビュー 企画展示「時代を作った技−中世の生産革命−」編
企画展示をより楽しく、より深く鑑賞していただくため、担当者が展示の見どころや作り手の気持ちを語ります。
第1回  第2回  第3回

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関連の催し

歴博フォーラム
第89回 「モノ作りの中世」
歴博講堂にて開催、入場無料、要事前申込、先着順(定員260名)

日時 7月20日(土) 13時00分〜16時45分
講師 鈴木 康之 (広島県立歴史博物館) 他
歴博映像フォーラム8
「石を切る-採石技術の伝統と革新-」
新宿明治安田生命ホールにて開催、入場無料、要事前申込、定員320名

日時 8月3日(土) 10時30分〜17時00分
講師 松田 睦彦 (本館民俗研究系) 他
歴博講演会
歴博講堂にて開催、入場無料、当日先着順に受付、定員260 名

第355回 「中世技術の最先端」
日時 7月13日(土) 13時00分〜15時00分
講師 村木 二郎(本館考古研究系)
第356回 「中世の生産革命」
日時 8月10日(土) 13時00分〜15時00分
講師 小野 正敏(人間文化研究機構)、中島 圭一(慶応義塾大学)
ファミリーイベント
たいけん 職人の技
7月28日(日)10:00〜16:00
※入館料が必要となります。
愛媛県今治市宮窪の大島石石工、神奈川県小田原市の漆職人が実演します。
※詳細については、後日お知らせいたします。

ギャラリートーク
日程 時間 担当者
7月6日(土) 13:00〜 大澤 研一 (大阪歴史博物館)             
村木 二郎 (当館考古研究系)
7月13日(土) 11:00〜 関 周一 (つくば国際大学)           
村木 二郎 (当館考古研究系)
7月20日(土) 11:00〜 鈴木 康之 (広島県立歴史博物館)           
坪根 伸也 (大分市教育委員会
7月27日(土) 13:00〜 佐々木 健策 (小田原市文化財課)           
福島 金治 (愛知学院大学
8月4日(日) 13:00〜 大庭 康時 (福岡市埋蔵文化財センター)
栗木 崇 (熱海市教育委員会
8月10日(土) 11:00〜 中島 圭一 (慶応義塾大学)           
池谷 初恵 (伊豆の国市文化振興課)
8月17日(土) 13:00〜 小野 正敏 (人間文化研究機構)          
松田 睦彦 (当館民俗研究系)
8月24日(土) 13:00〜 池谷 初恵 (伊豆の国市文化振興課)         
齋藤 努 (当館情報資料研究系)
8月31日(土) 13:00〜
鈴木 康之 (広島県立歴史博物館)
村木 二郎 (当館考古研究系)

※時間は40分程度を予定しています
※開始時間まで企画展示室A入口に集合してください。
※開催日時、担当者は変更する場合があります。ご了承ください。



巡回予定・共催館
広島県立歴史博物館  
会期:2013年9月13日(金)〜11月4日(月)