エレファント・マン 死後122年、病気解明へDNA鑑定
毎日
10月24日(水)2時31分配信
デビッド・リンチ監督の傑作映画「エレファント・マン」(80年公開)のモデルになったジョセフ・メリック(1862〜1890年)の病気の謎を解明するプロジェクトが近く、メリックの遺骨を管理するロンドンのクイーン・メアリー大学医科歯科学部でスタートする。メリックは生前、自分の遺体を保存し病気の原因を解明してほしいと言い残しており、122年を経て現代医学がその遺言に挑む。
メリックは2歳のころ顔や体の一部が極端に膨張する謎の病気を発症。感染症の一つである象皮病(ぞうひびょう)と考えられ家族からも見放されたが、今では症状から象皮病でないことがわかっている。最近は、骨や皮膚などが肥大化する「プロテウス症候群」の可能性が高まっているが原因特定のためには遺骨をDNA鑑定する必要があると判断されこのほど、メリックの親類子孫の許可を得た。
プロジェクトには同学部副学部長で遺伝医学が専門のリチャード・トレンバス教授(56)を中心に、医師やミイラのDNA鑑定を専門とする考古学者ら計6人が参加する。数週間以内にメリックと同年代の別の遺骨(複数体)を使って、どうすれば遺骨の損傷を抑えながら有効なDNA鑑定ができるかを確認し、年内に実際にメリックの遺骨からDNAを採取する。順調なら来年後半に病気の原因が解明される。メリックのDNA鑑定は、異常部分と正常部分(左腕など)双方の骨からDNAを採取して実施する。
トレンバス教授は、メリックの病気解明の意義について「同じような病気の患者への治療に役立つ可能性があるし、病気の原因をはっきりさせることで、患者に対する社会的偏見を抑えられる」としている。
メリックは顔や体が変形したため社会的偏見に苦しんだが、優しい気持ちを失わず、最後の4年間は王立ロンドン病院で治療を受けながらボール紙で模型作りをしたり劇場で演劇やオペラを楽しんだ。政治家や王室メンバーがメリックを見舞った記録も残っている。
メリックの死後、王立ロンドン大学内に博物館(クイーン・メアリー大学医科歯科学部管理)が設置され帽子や椅子などが保存されている。遺骨(全体)は普段は展示されていない。