Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

もうひとつの川村清雄展 加島虎吉と青木藤作−二つのコレクション

artscene2012-08-29




2012年10月20日(土)〜2012年12月16日(日)


http://www.mmat.jp/

もうひとつの川村清雄展 加島虎吉と青木藤作−二つのコレクション


会 期:2012年10月20日(土)〜2012年12月16日(日)時 間:10:00〜18:00


※入館は17:30まで ※開館時間は電力事情等により変更になる場合があります


休館日:月曜日 


観覧料:一 般 600円
大高生・65歳以上 450円
小中生 無料

20名以上の団体料金があります。

障がいのある方は半額・付添者1名は無料


主催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団 目黒区美術館


協力:那珂川町馬頭広重美術館


後援:明治美術学会



川村清雄(1852 嘉永5 〜 1934 昭和9 年)は、江戸、明治、大正、昭和を生き、明治以降もっとも早い時期に海外で学んだ画家です。徳川幕府の給費生として津田梅子らとアメリカに留学し、のちに渡ったイタリアではベネチア美術学校で本格的な西洋画を学びます。西洋画の卓越した技術を持ちながら、日本の絵画を研究、絹本に金箔下地に油彩で、歴史や故事などのテーマを描き、その異彩を放つ画風で注目を集めました。勝海舟や小笠原長生などの支援を受けながらも、時代から孤立ししばらく人々の記憶から遠ざかっていましたが、1980 年代には川村清雄研究が盛んになり、いくつもの成果が報告されています。その一つ1994 年静岡県立美術館での回顧展は当時大きな反響を呼びました。


「明治以降、海外で学び活躍した作家の初期の作品」を収集のテーマに取り上げている目黒区美術館では、川村清雄のフランス、イタリア時代(1875−1881)の貴重な素描5 点を開館後まもなく入手しています。そして幸運にも2004 年度に、川村の代表作で行方が分からなかった、屏風仕立ての「村上彦四郎」を含む大正時代から昭和にかけての作品33 点を、川村清雄とゆかりのあった加島虎吉ご遺族からご寄贈いただきました。当館では、このコレクションを翌年「川村清雄をしっていますか?」展として初公開し、小規模展ながらもいくつかの話題にも上りました。この展示から7 年経過した現在までに、川村の大型の作品がいくつも発見されるなどさらに川村研究も展開しています。


そうした中、今年の秋に江戸東京博物館静岡県立美術館に巡回)では大規模な「川村清雄」展が開催されます。当館ではこれに合わせ「もうひとつの川村清雄展」を同時期に開催し、当館のコレクションに加え、さらに栃木県那珂川町馬頭広重美術館に収蔵されている、青木藤作が集めた川村作品もあわせてご紹介します。


江戸東京博物館が川村の全体像を総括することに対して、当館の展覧会では、目黒区美術館那珂川町馬頭広重美術館の二つのコレクションに合わせ、さらに当館のコレクションが、出版業を営んでいた支援者加島虎吉の旧コレクションという意味から、川村がかかわった書籍や冊子の装丁デザインにも光をあてていきます。こうした当館ならではの展示により、江戸東京博物館とは違う視点からスポットを当て川村清雄の魅力に迫ります。


〈展覧会構成〉
(1).川村清雄の修学時代
目黒区美術館が所蔵する川村の海外での修学時期の作品(フランス、イタリアで描いた作品)を紹介します。


(2).加島虎吉と川村清雄
加島コレクション:出版に関する取次業を営む加島虎吉と川村清雄の出会いから、加島が支援し入手した作品、戦火を潜り抜けた加島家によって守られ奇跡的に助かったっ幻の作品群、当館所蔵の「加島コレクション」を紹介します。また、至誠堂を創業し、出版に関わった虎吉を紹介、店のあった日本橋界隈の出版事情にも触れます。


(3).青木藤作と川村清雄
加島虎吉より少し遅れて、川村と懇意になった青木藤作は、栃木県氏家町出身の資産家で、徳富蘇峰の思想に傾倒し生涯交流を深めました。徳富蘇峰の引きあわせにより川村も青木藤作を知り、交友がはじまり、青木藤作 の元には、比較的晩年に近い時期のよい作品が集まっていきます。青木藤作のコレクションが寄贈されたことにより建設された栃木県那珂川町馬頭広重美術館には、こうした経緯から川村の作品が多数おさめられています。本展で、加島コレクションと青木コレクションが初めて一緒に紹介されることになります。当館の作品の中にも、この時期に近いものも多数含まれるので川村の晩年の仕事を検証する良い機会となるでしょう。


(4).『新婦人』『新小説』・装丁に見る川村の美意識
川村清雄は、おもに大正期になると、当時人気のあった『新小説』などの文芸雑誌の表紙のデザインを多く手がけ、はなやかなこうした冊子ともに、「大正名著文庫」などの地味な書籍だが、手の込んだ装丁にも力をふるいました。この時代特有の手の込んだリトグラフ印刷も必見で、川村の装丁に関する仕事を検証します。


目黒区所蔵作品より40 点程度
那珂川町馬頭広重美術館所蔵より約50 点。
装丁関係:50 点