祭 MATSURI−遊楽・祭礼・名所
2012年6月16日(土)〜7月22日(日)
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html
展示概要
17世紀はじめ頃の日本では、当時生きる人々の姿が盛んに絵画に描かれるようになりました。今日、「近世初期風俗画」と呼ばれるジャンルの誕生です。それらは人々の生活のさまざまな場面を描き出しましたが、なかでも、祭りに題材をとった絵画はひときわ魅力的な描写内容を持っています。金銀や鮮やかな色彩によって細かく描かれた山鉾(やまほこ)や神輿(みこし)、奇想を凝らした仮装の行列、そしてさまざまな立場から見物に集う人々のにぎわい―これらは、祭りに題材をとった絵画の最も大きな見どころに違いありません。画面に表された華やぎは、数百年を経た今なお、私たちを熱狂の渦へと誘います。
ただし、それと同時に忘れてはならないのは、祭りの興行がその土地をめぐる深い信仰によって支えられていることです。その誕生以来、祭りが特定の社寺との密接な関係をなくして成立することはなく、絵画に描かれた祭りもまた、人々の熱気の背後にその舞台となった土地の記憶をたしかに宿しています。人々のまわりに広がる景観が、描かれた祭りにいっそう豊かな実感を与えます。また、それとは対照的に、特定の場との結びつきを薄めて描かれた遊楽のさまは、どこかあやしく空想的な魅力を獲得することになりました。
このような視点により、この展覧会では、出光コレクションから約20件の絵画を厳選しました。祭礼や芸能の舞台となった〈場〉に注目し、人々の営みとそれが催される土地との関係のなかで、風俗画の新たな魅力を探ります。
列品解説のおしらせ
6月28日(木)、7月12日(木) いずれも午前10時30分より
6月29日(金)、7月13日(金) いずれも午後6時より
桃山から江戸時代にかけて一世を風靡した祭礼・遊楽図。近世の都市に暮らす人々を描いた風俗画の展覧会が、いま秘かなブームとなっています。その魅力は、都市全体を屏風の大画面に再現しつつも、金銀濃彩による緻密な流行風俗の描写にあります。本展では、都市図の中央をパレードする祭りの豪華絢爛な形に注目し、出光コレクションの風俗画の名品約20件(重要文化財1件、重要美術品1件)を紹介しながら、様々な〈祭〉の光と影を語ります。なかでも、慶長期(1596〜1615)に活躍した狩野派正系の絵師による「祇園祭礼図屏風」(重要文化財)は祭礼図の王者というべき品格! 絵師の謎にも迫ります。
展覧会の構成
第1章 〈祭〉の前夜 ―神が舞い降りる名所
第2章 〈祭〉が都市をつくる ―京都 VS 江戸
第3章 〈祭〉の名残 ―遊楽の庭園
第4章 遊楽 prison ―閉ざされた遊び
各章の解説
第1章 〈祭〉の前夜 ―神が舞い降りる名所
祭礼や芸能は、特定の場所との結びつきなくして成立しません。人々の強い信仰などが積み重なった土地こそが、祭礼や芸能のよりどころとなります。ひたすらに厳粛な行列を展開させる「祇園祭礼図屏風」は、神事としての祭礼の原初的な姿をよく伝え、また、「阿国歌舞伎図屏風」は芸能の場としての社寺を強く印象づけます。祭礼や芸能を描いた絵画を、特定の土地との結びつきに着目しながら、〈祭〉がはぐくまれてゆく時をお楽しみいただきます。
祇園祭礼図屏風(右隻部分) 山鉾巡行
桃山時代 重要文化財 出光美術館蔵
第2章 〈祭〉が都市をつくる ―京都 VS 江戸
政治権力の移ろいによって、都市はその表情を大きく変えました。応仁の乱後に再開された祇園祭は「洛中洛外図屏風」の主要なモチーフとして描かれ、京都の賑わいを鮮烈に印象づけます。いっぽう、江戸においても華やかな祭礼と多彩な芸能が新興都市の活気を熱烈に伝えます。ここでは、京都の「洛中洛外図屏風」に対して「江戸名所図屏風」を展示し、各地で繰り広げられる祭礼や芸能の活況こそが都市の生命感をつくり出すさまを体感していただきます。
江戸名所図屏風(右隻部分) 三社権現の舟祭礼
江戸時代 出光美術館蔵
もっとみどころ1
京都と江戸の〈祭〉対決 ―祇園祭 VS 三社祭
大船鉾復元でますます華やぐ京都の祇園祭。スカイツリー開業で盛り上がりを見せた江戸の三社祭。本展でも、やはり熱狂する祭りのヤマ場は、古都・京都と新興都市・江戸の〈祭〉対決です。「洛中洛外図屏風」と「江戸名所図屏風」に描かれた祭りの風俗を見比べると、似ているようで異なる二大都市の趣向が発見できます。
派手な母衣(ほろ)や旗指物を背負ったパレードの対決
江戸名所図屏風(右隻部分) 江戸時代 出光美術館蔵
もっとみどころ2
パワースポットめぐりで〈祭〉体験
「江戸名所図屏風」にはざっと2,200人もの男女が十人十色に描かれていて、まさに目が泳いでしまいます。しかし、浅草橋、浅草寺の観音堂、神田明神の能舞台、屏風の中心部に位置する日本橋など、特徴的な建物から名所をたどれば、名所に集う人々の輪の中心で祭礼や芸能が繰り広げられていることに気付くでしょう。話題のパワースポットめぐりをする気分で、いまは失われた祭りの疑似体験をお楽しみください。
江戸名所図屏風(右隻部分) 神田明神の能舞台
江戸時代 出光美術館蔵
第3章 〈祭〉の名残 ―遊楽の庭園
都市の広域におよんだ祭礼や芸能は、やがて区画された狭い領域へと舞台を移してゆきます。祭礼や芸能のいわば私化ともいうべき転換は、絵画の表現をどこか陰鬱で冷めたものへと向かわせました。また、描かれた土地も特定の場との結びつきを次第に薄め、絵画の関心は描かれた人物の着衣の文様や遊ぶ行為そのものへと移ってゆきます。「邸内遊楽図屏風」などによって、どこを描いたものかが隠ぺいされた、遊里のあやしげな雰囲気をご堪能ください。
邸内遊楽図屏風(左隻部分) 江戸時代 出光美術館蔵
第4章 遊楽 prison ―閉ざされた遊び
遊楽や芸能は、江戸時代に入って制度化が進められてゆきます。阿国によって始まった歌舞伎は、幕府のたび重なる禁令によって、芸態やその興行の場を厳しく制限されました。野外に遊ぶ人々の、開放的で健康的な賑わいを写してきた絵画は、次第に舞台上で舞踏する人々を緻密に描写することへと関心を向けてゆきます。ここでは、いくつかの「歌舞伎図屏風」を通して、なまめかしい肉感美をあらわしながら、どこか窮屈そうに舞う役者とそれを観賞する人々−〈祭〉の影なる魅力に迫ります。
歌舞伎図屏風(右隻部分) 江戸時代 出光美術館蔵
本展の基本情報
開館時間
午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
毎週金曜日は午後7時まで(入館は午後6時30分まで)
会期・開館時間等は都合により変更することがあります。最新情報は当ウェブサイトまたはハローダイヤル(03-5777-8600)でご確認ください。
休館日
毎週月曜日
※ただし7月16日は開館します
入館料
一般1,000円/高・大生700円(団体20名以上 各200円引)
中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です)
※障害者手帳をお持ちの方は200円引、その介護者1名は無料です
〒100-0005
東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
(出光専用エレベーター9階)
電話番号
ハローダイヤル03-5777-8600(展覧会案内)
交通
JR「有楽町」駅 国際フォーラム口より徒歩5分
東京メトロ有楽町線「有楽町」駅/都営三田線「日比谷」駅
B3出口より徒歩3分
東京メトロ日比谷線・千代田線「日比谷」駅 有楽町線方面 地下連絡通路経由
B3出口より徒歩3分
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