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新国立競技場の選考、委員長に丸投げ

artscene2014-07-10

「新国立」選考の経緯判明 3作同点から委員長一任

 新国立競技場コンペの最優秀賞発表の風景。
 河野一郎(JSC、日本スポーツ振興センター理事長)、安藤忠雄建築士、審査委員長)
 2012年11月15日

 
 新国立競技場のデザインを決めた2012年の国際コンペの最終選考では3作品の評価が同点だったが、委員長だった建築家の安藤忠雄が一作品を外し、2作品に絞っていたことが分かった。日本スポーツ振興センター(JSC)への情報公開請求で入手した審査委の議事録で判明した事実である。この丸投げで最終判断を一任された安藤が英国在住の建築家、ザハ・ハディドさんの作品を選んでいる。


 議事録などによると、一次審査では応募46作品のうちハディド、スタジアムの設計経験が豊富なアラステル・レイ・リチャードソン(オーストラリア)、妹島和世グループの三作品が高評価を集めた。


 11作品に絞った二次審査では、審査員がそれぞれ一〜三位に推す作品を投票。一位票は四票のリチャードソンさんが最多でハディドさん、妹島さんが三票ずつの次点だった。そこでこの三作品に絞って再投票し、今度は一位票がハディドさんの四票で、残り二作品は三票ずつだった。二位、三位票も含めた得票をポイント化すると、三作が十九点で並んだ。外国人審査員は一人が妹島さん、もう一人がハディドさんの作品を推した。

 このため選考は難航し、とりまとめを求められた安藤さんは「この中ですと、圧倒的(に良い)」とリチャードソンさんかハディドさんに決めることを提案し、理由を示さず妹島さんの作品を除外した。委員から「委員長の判断で」などと声が上がると、「日本の技術力のチャレンジ」としてハディドさんに即決した。


 議論の中でハディドさんの案は巨大で迫力あるデザインが絶賛される一方、「神宮外苑の景観として異物が挿入された感は否めない」と景観面や、コスト面を問題視する意見が出た。スロープが首都高速やJRをまたぐなど、公募条件の建設範囲を逸脱していることにも懸念が示された。

 安藤さんは当初から他の二作品に対し「(屋根のデザインが)技術的に難しい」「少し平凡な感じ」などと指摘、ハディドさんのデザイン性を高く評価した。「(問題点があっても)強いコンセプトがあれば修正可能」「ものすごくシンボリックで、おもしろい」と述べていた。

 安藤さんの事務所は「個別の取材には応じない」とコメント。

 審査委員の岸井隆幸日大教授は「議論が強引に引き回されたことはない。一般論だが、議論を尽くして決まらない場合に、議長(委員長)がその役割を果たさなければならないことはそれほど不自然なことではない」とメールで回答した。

 <新国立競技場のデザインコンペ> 2012年7〜11月に行われ、46点が応募。1次審査で11点に絞り2次審査でザハ・ハディドさんの作品を選んだ。審査員は安藤忠雄審査委員長、内藤廣(ひろし)さんら建築の専門家10人で構成したが、英国の著名建築家リチャード・ロジャースさん、ノーマン・フォスターさんの2人は会議には出席せず、事前説明を受け2次審査の投票結果だけ提出した。