Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

春の江戸絵画まつり かわいい江戸絵画

artscene2013-04-18


仙がい義梵 大黒天図 後期展示




 日本絵画史上、「かわいらしさ」が作品の重要なポイントとして打ち出されるようになったのは、およそ江戸時代のことではないでしょうか。円山応挙は、地面を転がるように駆け回る子犬たちの絵を確立し、歌川国芳うたがわくによしは、愛らしくもややこしい猫の魅力を引き出しました。禅僧仙がいは、難解な禅の教えを、思わずほほ笑んでしまうような子供や動物の姿に託しています。また、かわいらしい題材を描いたものだけではなく、たとえば、文人画の山水や人物にも、見る者の心を和やかにしてくれるものがあります。はかないもの、頼りないものへの共感や愛惜が、あえて素朴に描かれた線や形そのものに対して湧き上がるのかもしれません。
 はかないものや可憐なものに寄せる思いや慈しむ気持ち、あるいはユーモラスに感じることなど、私たちが「かわいい」という言葉で表すことのできる感情は、実にさまざまです。江戸時代の人々は、そんな豊かな心の動きを絵に表し、絵を通じて楽しみました。
 また、「かわいい絵」が盛んに楽しまれた背景の一つには、かわいいものを「それらしく」表現する方法が確立されたことがあるでしょう。幼い子供や子犬は、時代を問わず「かわいいもの」だったはずですが、古代や中世の絵に、私たちの目から見て、かわいらしいと思えるようなものは、あまり見当たりません。つまり、「かわいいもの」と「絵としての表現」は別だと考えればよさそうです。現代人を魅了してやまない子供や子犬の絵を描いた応挙や長沢蘆雪ながさわろせつ。「写生」の画家と言われる彼らですが、ただカメラで撮影するように対象を写しただけで、かわいいと感じる絵ができ上がるでしょうか。彼らは、かわいいものを「かわいい形」として描く術を模索し、確立したのだと言えるでしょう。
 かえりみれば、造形が立派かどうか、精神の高邁さといった観点から語られてきた美術の歴史の上で、「かわいい」という言葉が使われることは殆どなかったように見受けられます。このたびの展覧会では、近年ちまたで注目を浴びているこの言葉をあえてキーワードとして、これまで見落とされてきた江戸絵画の魅力の根幹に迫ります。

なお、本展覧会では多数の作品の展示替えを行いますので、ご来場の際はご注意ください。



円山応挙 狗児図 後期展示




会期

平成25年3月9日(土曜日)から5月6日(月曜日)

全作品の展示替えを行います。
前期 3月9日(土曜日)から4月7日(日曜日)
後期 4月9日(火曜日)から5月6日(月曜日)

休館日

月曜日(4月29日、5月6日をのぞく)、3月21日(木曜日)、4月30日(火曜日)

開館時間

午前10時から午後5時(入場は4時30分まで)

観覧料

一般700円、高校生・大学生350円、小学生・中学生150円。

注記:20名以上の団体料金は、一般560円、高校生・大学生280円、小学生・中学生120円
注記:未就学児および障害者手帳等をお持ちの方は無料。
注記:常設展もご覧いただけます。
注記:府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」で無料。

主催 府中市美術館 本展の他会場への巡回はありません。
2回目は半額となります
2度目の観覧料が半額になる割引券が付いています(本展1回限り有効、他の割引との併用はできません)。

20分スライドレクチャー
毎週日曜日 午後2時と3時の2回 講座室 無料

展覧会講座
4月29日(月曜日)
子犬をかわいらしく描くこと 音ゆみ子(当館学芸員
5月4日(土曜日)
かわいい江戸絵画−その論理と歴史 金子信久(当館学芸員
いずれも午後2時 講座室 無料


子ども向けイベント「かわいい探検隊!」
会期中随時


展覧会を見ながら「探検隊ワークシート」のクイズに挑戦。観覧料が必要ですが、府中市内の小中学生は、「府中っ子学びのパスポート」で入場できます。年齢制限はありませんので、大人の方の参加もお待ちしております。



長沢蘆雪 豊干禅師図 前期展示

歌川国芳 猫のすゞみ 渡邊木版美術画舗蔵 前期展示



「かわいい」という言葉をキーワードに、江戸時代の絵画の中に表現された、さまざまな感情に注目してみる展覧会です。円山応挙の描いた子犬、歌川国芳の猫といった動物の絵や、幼気な子供たちの絵。さらに「描き方」のかわいらしさなどにも焦点を当てながら、「ニッポンの宝」ともいえる「かわいい絵」の歴史や論理に迫ります。

会期:平成25年3月9日(土曜日)から5月6日(月曜日・祝日)
開館時間:午前10時から午後5時。入場は4時30分まで
休館日:月曜日(4月29日、5月6日をのぞく)、3月21日(木曜日)、4月30日(火曜日)


なお、本展覧会では多数の作品の展示替えを行いますので、ご来場の際はご注意ください。
観覧券をお求めいただくと、2回目は半額になる割引券が付いています(本展1回限り有効)
前期:3月9日(土曜日)から4月7日(日曜日)
後期:4月9日(火曜日)から5月6日(月曜日)

主催 府中市美術館
本展の他会場への巡回はありません。