Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

光の造形 操作された写真

artscene2012-06-19



2012年度東京都写真美術館コレクション展


2012年5月12日 ( 土 ) 〜 7月8日 ( 日 )


休館日:

毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)


料 金:


一般 500(400)円
学生 400(320)円
中高生・65歳以上 250(200)円


( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引/


小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/東京都写真美術館友の会会員は無料/第3水曜日は65歳以上無料



東京都写真美術館では、当館のコレクションに基づく展覧会「光の造形−操作された写真」を開催いたします。日本語ではphotographyを「写真」(=真を写す)と書きます。写真技術が輸入された頃の幕末の人々は、現実にあるものをそのまま平面に置き換えることできる、この技術を表す言葉として「写真」を選びました。しかしこの単語をそのまま訳すのであれば、photo(光)とgraph(画)で「光画」と訳されるべきだったのかもしれません。「操作した写真」というタイトルから、なにか手を加えて現実をねじ曲げ、偽りの出来事を伝える物というネガティブな印象をうけるかもしれません。しかし「光を利用した画を造る」と書くと印象は随分と変わるのではないでしょうか。本展では、さまざまな目的で、撮った写真をそのままプリントにするだけではなく、その過程で、加える(彩色写真など)、イメージを組み合わせる(コラージュ、フォトモンタージュ、多重露光、リフレクション、雑巾がけ)、切り取る(トリミング)といった技術を使った作品を展示します。


今では、パソコンを使って、即座に出来てしまう技術もありますが、写真が発明されてから、理想の世界を求めて工夫を続けてきた写真作品を通じて、今の時代にも繋がる写真家の思いを受け取ることが出来るでしょう。


■問い合わせ先:


東京都写真美術館
tel. 03-3280-0099
url. http://www.syabi.com


東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス



http://syabi.com/
http://syabi.com/contents/exhibition/index-1597.html




■出品予定作家
ル・グレイ、ヘンリー・ピーチ・ロビンソン、マン・レイ、アンドレ・ケルテス、中山岩太、小石清、澤田知子志賀理江子など



本展では、さまざまな技法や表現を使った作品を展覧します。出品作品はすべて東京都写真美術館が誇る約28,000 点のコレクションから選りすぐった名作ばかりです。ここでは、本展で紹介される写真の技法と表現をご紹介します。



■コラージュ
コラージュとは「貼り付ける」という意味のフランス語から名前がついている。新聞や雑誌などの既存素材や文字と写真を組み合わせて再構成することをさす。


デフォルマシオン
デフォルマシオンは絵画や彫刻から来た美術的な用語のフランス語である。現在でも「デフォルメする」といった和製語に変形させるという意味で使われている。鏡やレンズを使って撮影時に対象を変形させるものと、写真をプリントする時に紙をゆがませたり、たわめたりして、画像を変形させるものがある。


■トリミング
写真の一部を切り取ることを示す。不要な部分を切り取り、写真の主題を強調することになり、より印象的な写真に作り変えることができる。しかし場合によっては写真の意味を変えてしまうこともある。


フォトモンタージュ
「組み立てる」という意味のフランス語から名前が由来している。ひとつの画面に2つ以上の映像を重ねたり、合成したりする写真のことを指す。コラージュとの違いは基本的には暗室内においてネガを重ね合わせたり、数度に分けて現像することによって造られることである。


■リフレクション
ガラスや鏡などに反射するイメージを意識して撮影されたもので、年代が古く、代表的なものはウジェーヌ・アジェのパリの商店のウインドウを撮ったものだろう。最初からアジェが映りこむ効果を狙ったものかどうかは定かではないが、現在ではアジェの代表的な作例として有名になっている。


■雑巾がけ
イギリスのピクトリアリズム(絵画主義写真)の写真家・ヘンリー・ピーチ・ロビンソンなども、写真を絵画に近づけるために写真の合成をおこなったが、日本のピクトリアリズムでも写真に手を加えるということを積極的に行っていた。その表現と技術は他の国の写真と比較にすることが出来ないくらい特化していた。
雑巾がけというのは一つのテクニックではなく、さまざまなテクニックを複合的に行うことを総称している。小関庄太郎の作品<北国の雨>では、カメラの「フードはずし」をして撮影し、プリントの段階で「デフォルマシオン」をして、その後オイルを使って写真の不必要な部分をぼかし、その後に強調したい部分を「書きおこし」している。写真をまるで素材の一つのように扱い、自分たちの頭に中に存在する風景を表出させた。


多重露光
影技術として、1コマのフィルムの上に、複数の画像を重ねること。カメラに多重露光機能のついたものもあるが、古いフィルムカメラを使用する場合は、通常は1度シャッターをきった後に、慎重にもう一度フィルムを戻し、重ねる部分を予測しながら再度シャッターをきった。またカメラのシャッターを開いたままの状態にし、ストロボを複数回発光させて対象の動きを写す事もある。


■彩色写真
ダゲレオタイプの写真が発明された1839 年直後から、銀板の上に油絵の具などで頬や唇、洋服などを鮮やかに彩った作品が現れていた。次世代の技法であるアンブロタイプでも、同じようにガラス板の上に、絵の具で色を付ける行為が続いた。日本では、幕末の嘉永元年(1848)に始めてダゲレオタイプ一式が輸入され、その後来日した外国人写真師たちや上野彦馬、下岡蓮杖ら日本人の写真師によって、長崎や横浜といった開港地で写真館が開設された。特に外国からの新たな玄関口となった横浜では、ウィリアム・ソンダースやオーリン E. フリーマンが彩色を施した写真を売りはじめ、フェリーチェ・ベアトが日本各地で撮影した写真をアルバムにまとめて売り出した。これらの写真を総称して「横浜写真」と呼んでいる。彩色写真は、天然色フィルムとして1935年に「コダクローム」が発売されるまでさまざまな形で続いた。


広報誌「eyes」73号 9〜10ページに記載の展覧会タイトル「夢のかきとり」(仮称)は、「光の造形〜操作された写真〜」に変更