Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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悠久の美―唐物茶陶から青銅器まで

artscene2012-04-07




悠久なる美の伝統をほこる中国。日本は常に中国の優れた文化にあこがれ、受容してきました。「唐物」として珍重され、大切に伝えられてきた水墨画や茶陶などはその代表です。一方、中国美術の本流にありながら、私たちには馴染みの薄い青銅器、玉器や古代の陶器。しかし、それらの工芸作品には当時の技と巧みの粋がこめられているのです。本展では、中国美術を源流にまで遡り、その真の醍醐味にふれていただきたいと思います。





悠久なる美の伝統をほこる中国。日本は常に中国の優れた文化に憧れ、先進の制度や情報、絵画や書、工芸品などの文物を受容してきました。特に、鎌倉時代以降、禅宗文化の流入を契機にもたらされた多様な品々は「唐物」として珍重され、大切に伝えられてきました。水墨画や墨蹟、天目茶碗などの茶陶、漆器青磁、胡銅と呼ばれた銅器などはその代表です。


一方、中国美術の本流にありながら、私たちにはやや馴染みの薄いのが青銅器や玉器をはじめ、紅陶や黒陶、灰陶や加彩陶器などの古代の陶器類です。墓に埋納されたり、時代があまりにも古すぎて請来の機会にめぐまれなかったりといった理由から、その他の工芸品のように知られてはいませんが、これらの作品には当時の驚くべき技と巧みの粋がこめられています。また、洗練された器形、神秘的な装飾意匠や象徴的な意味合いは、かたちを変えながらも後の「唐物」の世界にまで受け継がれているのです。その意味では、これらの品々は「唐物」の源流といっても過言ではありません。


本展では、出光コレクションより厳選した古代青銅器や玉器、古代の陶器類に、従来親しまれてきた宋から明・清時代までの書画・工芸品をあわせた約160件を展示いたします。「唐物」の美しさを堪能しつつ、さらに、その源流である古代の青銅器や玉器、陶器に示された技術の巧みを再確認し、中国美術の、特に工芸美術の真の醍醐味にふれていただきたいと思います。





2012年4月3日(火)〜6月10日(日)


こんなに青銅器があったんだ――。実は出光コレクションには充実した青銅器のコレクションが存在します。このたび、青銅器や玉器などの原始・古代中国美術の優品を一堂に堪能できる展覧会を13年ぶりに開催します。書画や茶陶、青花磁器などの企画展は当館でも頻繁に行いますが、縄文・弥生時代に並行する中国の先進文化の遺産は、技術的にいかに素晴らしくても、やや馴染みにくいのも事実です。満を持しての一挙公開となる本展は、珠玉の作品を目に焼き付けておく絶好の機会となることでしょう。






海を隔てた中国の先進文化は日本人にとって憧れのまとであり、その直接的・間接的な刺激は各時代の文化形成に大きな影響を与え続けてきました。なかでも、鎌倉時代禅宗とともにもたらされた喫茶の風習が、茶の湯の文化として確立していく中で用いられた道具類も、当初は中国からの請来品がほとんどでした。その後、これらの書画工芸作品は「唐物(からもの)」と呼ばれて珍重されるようになり、また、それらを飾る場として寺院や武家屋敷の座敷などの室礼がととのえられ、中国美術は日本の文化の中に根付いていったのです。


最初のコーナーでは、宋時代から明時代を中心とした唐物の代表的な書画、工芸作品を、水墨画・墨蹟・陶磁器・銅器・漆器といったジャンルごとに展示し、当時の権力者が求めた荘厳な世界へとご案内します。




青磁袴腰香炉 中国 南宋時代 龍泉窯
重要文化財 出光美術館

青磁下蕪瓶 中国 南宋時代 修内司官窯
重要文化財 出光美術館



日本では先進文化への憧れをこめて大切にされてきた「唐物」ですが、それらが生み出された中国では少し違った思いが込められていました。その思いとは「三代」つまり、伝説の夏に始まり商(殷)・周へと続いた古代中国の理想王朝の輝かしい政治・文化への憧れとその復興への願いでした。



唐末・五代時代の混乱をへて、再統一を果たした漢民族の王朝、宋の歴代皇帝や、知識階級がいにしえを復興する方法として選んだのが、「三代」の象徴である青銅器や玉器(ぎょくき)の再現でした。しかも、同じ素材で再現するだけでなく、異なった素材を用いて器形や色合いを再現する「倣古(ほうこ)」作品も数多く製作されました。こうして、太古の技と美の伝統を当世風にアレンジした工芸作品が誕生し、後世にも連綿と受け継がれたため、結果として唐物に原始・古代以来の中国文化のエッセンスがいき続けることになったのです。



このコーナーでは、唐物のなかでも工芸作品を取りあげ、その源流となった古代の作品と比較展示をします。青銅器や玉器の形や文様が、どのように継承されていったのか、ぜひ会場でお確かめください。




饕餮文尊 中国 商(殷)時代後期
出光美術館




青磁尊式瓶 中国 南宋時代 龍泉窯
出光美術館



来て、見て、学んで 中国美術入門



同じように漢字を使い、仏教信仰や儒教倫理に基づいた文化を育んだ歴史を持つ日本と中国ですが、似ているようで違いが多いことも実感します。青銅器は何のために作られたのか、なぜ玉を金やダイヤモンド以上に珍重するのか、青磁の色合いの秘密や、中国美術文様の王座に君臨する龍と鳳凰の成り立ちなど。皆さまが疑問に感じていらっしゃるであろう事柄を、比較展示などを交えながら、わかりやすく一つ一つ確認していきます。



獣面文玉螬 中国 新石器時代(良渚文化期)
出光美術館




日本で愛好された「唐物」の祖型となり、また、中国では「三代」を代表する遺物として尊重された商(殷)・周時代の玉器や青銅器。故人と共に墓へ埋葬されたり、中国宮廷内でのみ伝世されてきた特別な宝物であったなどの要因で、日本に本格的に紹介されるまでには非常に時間がかかりました。 最後のコーナーでは、そういった作品群の中から、商(殷)・周時代から漢時代の青銅器、原始時代から漢時代の玉器、原始古代の陶器などをとりあげます。


玉器 ―生命を宿した神秘なる貴石



独特の潤いと温かみ、そして輝きもつ玉は「命をもった宝石」と尊ばれてきた石です。その特徴ゆえに様々な霊力をそなえていると信じられ、天地の象徴から厄除けまで多様に用いられました。天地の概念を表現したといわれる璧(へき)や螬(そう)、来世での幸福を願う動物形の玉など、原始時代から漢時代までの作品を中心にご紹介します。



双龍形彫玉 中国 漢時代 出光美術館




青銅器 ―天地を結ぶ祭祀の宝器



銅と錫、鉛の合金で作った青銅器は、神々への捧げものを入れるための食器や酒器で、その表面を飾る「饕餮(とうてつ)」と呼ばれる空想上の怪獣は当時の最高神の姿を表現したものといわれています。また周囲にいるは後に龍や鳳凰へと変化していきました。時代的には日本の縄文時代と並行するほど古いものですが、すでに技術的には最高峰に達し、その加工や装飾にも後世の追随を許さぬ洗練を見せています。




陶器 ―土による変幻自在の造形




原始時代の陶器や、葬送儀礼の中で墳墓への埋納のために生産された加彩陶器などは優れた造形性を備えています。青銅器の祖型となり、あるいは代用品として多様な器形が試みられる一方で、器表をキャンバスのように用いた描画による装飾や釉薬による演出もみられます。最後に、青銅器や玉器など同時代の工芸との交流の中で、その後の中国美術の規範となる素晴らしい作品を生み出した原始・古代の様々な陶器類をご紹介します。




灰陶加彩龍雲文獣環耳壺 中国 前漢時代
出光美術館

一見の価値あり! 日本でも出光美術館でしか見られない珍しい青銅器





日中国交正常化から40年をむかえ、このところ中国美術の展覧会がさかんに開催されています。書画や陶磁器などのほか、各会場で必ず展示されているのが青銅器や玉器、古代の陶器類ですが、理解しにくい難解な工芸品と感じているかたも多いのではないでしょうか。本展では、その用途や文様の意味をわかりやすく紹介しながら、青銅器の魅力に迫ります。国内では当館でしか見られない作品も含む多彩な青銅器コレクションをこの機会にぜひご覧ください。



開館時間
午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
毎週金曜日は午後7時まで(入館は午後6時30分まで)



休館日
毎週月曜日
※ただし4月30日は開館します



入館料
一般1,000円/高・大生700円(団体20名以上 各200円引)
中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です)
障害者手帳をお持ちの方は200円引、その介護者1名は無料です