Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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東京大学 総合研究博物館 (本郷キャンパス)

artscene2012-03-25



会期は本日まで


東京大 2012年度学芸員専修コース共同企画展示


蝉學  加藤正世の博物誌






加藤正世は、昭和初期の昆虫分類学の黄金期を支えた著名な昆虫学者であり、セミツノゼミ、ウンカが属する半翅目昆虫を中心に研究され、セミ博士と称されるほどの日本の「蝉学」の権威として知られる。一方、高校教諭をされていた職業柄、昆虫を用いた教育普及活動の先駆的な人物でもあり、多くの著名な昆虫研究者も育成している。


加藤博士の死後、貴重な標本・資料等のコレクションは、ご遺族により長年大切に保管されていたが、昨年の8月に加藤博士の孫・鈴木真理子氏が本館に来館されて寄贈の意向を示され、同年10月に加藤博士の五女・鈴木薗子氏から正式にご寄贈頂いた。このコレクションはセミ類を主体とする様々なグループの昆虫標本で構成され、その数は推定5万点を超える。他に直筆原画や書籍・論文、写真、採集・研究道具なども数多く含まれる。
本館では、平成5年度以来、博物館のリカレント教育の場として「学芸員専修コース」を開講し、異なる発想や知識、経験を持つ各地の専門職員が、本館の展示研究者と意見交換しながら多彩な実習や企画を行ったり、独創的かつ魅力的な展示を共同制作する事業を続けてきた。本年度は、加藤博士の昆虫コレクションを対象として、14名の受講者による新規収蔵展を兼ねた共同制作展示を実施した。


今回の展示品は主に東京・石神井産と台湾産の昆虫標本である。この中には、東京ではすでに絶滅した昆虫もあり、当時の豊かな環境を垣間見ることができる。学術的に極めて貴重なエゾゼミのホロタイプ標本や著名な図鑑の原画からは、博士の研究に対する厳しい姿勢が受け取れる。愛用したヘルメットや捕虫網からは、フィールドを重視した調査の情景が思い浮かぶ。教育普及活動に用いた昆虫工作や写真、玩具からは、博士のやさしさと几帳面さが伺えるかもしれない。加藤博士の気鋭な精神が込められた昭和の「?学」に触れ、博物学的な研究と教育が融合された世界を来館者が個々の感性で捉え、ご堪能頂ければ幸いである。




展示制作: 相沢毅、大島康宏、工藤悠、慶野結香、四方圭一郎(リーダー)、染井千佳、郄木愛子、武浪秀子、中嶋浩子、原 朋子、藤井千春、三村麻子、山田真理子、渡邉淳子


制作指揮: 佐々木猛智、矢後勝也


総合講評: 西野嘉章


担当講師: 大野正男、林正美、遠藤秀紀、関岡裕之、松本文夫、池田博、宮本英昭、松原始


制作協力: 中坪啓人、須田孫七、小沢英之、粟野雄大


写真撮影: 松本文夫



蝉學――加藤正世の博物誌
(正式タイトルでは「蝉」は旧字体


平成23年学芸員専修コース共同企画展示 専修コース内容


会期: 2011年11月22日[火]―2012年3月25日[日] 


開館時間: 10時―17時(ただし入場は16時30分まで)


休館日:1)土曜日・日曜日・祝日、12月28日-1月4日、1月27日
      2)1月28日以降は月曜日、2月25日、26日


入館料: 無料   

ハローダイヤル:03-5777-8600


会場: 
東京大学総合研究博物館(本郷キャンパス内)  東京メトロ地下鉄 本郷三丁目、東大前 から5分