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東京国立博物館

東京国立博物館

国宝87件、11万点以上の所蔵品


 毎年、新年に収蔵品の名品を披露し、にぎわう上野の東京国立博物館保有するコレクションは11万件を超え、常設展示だけでも鑑賞に数日はかかる。



 日本と東洋の美術品や考古遺物などの収集保管、調査研究、展示や普及などを目的し、独立行政法人が運営している。



 歴史は明治初期にさかのぼる。明治5年・1872年、文部省博物局により、湯島聖堂(文京区湯島)で書画、骨董、剥製などを集めた博覧会が開催された。これを「博物館の始まり」として創立の年に。博覧会は翌年のウィーン万博への参加準備を兼ねたもので、明治政府は国内の作品を調査・収集。それが収蔵品の基礎となった。東京・新橋−横浜間で日本初の鉄道が運行し、富岡製糸場群馬県)が操業開始した年でもあり、日本が近代化に向かっていた時代だった。



 10年には古墳などの埋蔵物を発掘した場合、国に届ける法も整備され、出土地の都道府県から購入。この制度で埴輪(はにわ)「挂甲の武人」(国宝)や重要土器などが収蔵品になっていった。


 博物館は湯島から内山下町(東京都千代田区内幸町)を経て14年、上野の寛永寺本坊跡地に移転。本館が完成したが、大正12年の関東大震災で大破。その後本館は昭和13年、同じ敷地内に新設された。


 名称は明治22年に「帝国博物館」、同33年に「東京帝室博物館」と変え、昭和27年に現在の東京国立博物館となった。明治33年には当時の皇太子(大正天皇)の成婚を記念し、敷地内に新たな美術館を建造。これが同42年に開館した表慶館となった。


 現在は10万5千平方メートルの敷地に本館、表慶館、東洋館、平成館、法隆寺宝物館の5つの展示施設と資料館などで構成。所蔵品は11万3千件(平成22年8月)とされ、中でも国宝は87件、重要文化財も631件に上る。件数表記は、遺跡などの出土品数百点を1件と数えたりするためだ。


 日本画は光や湿度などに弱いため常設展示はなく、毎年1月に一定期間だけ公開している。


 国内の展覧会の入場者数も、東博が上位を占める。「モナ・リザ展」(昭和49年)が約150万人で歴代1位、「ツタンカーメン展」(40年)は約130万人で2位、そして「国宝 阿修羅展」(平成21年)が約94万人で4位だった。



 歴史的名品の展示の一方で、昨年は新たな試みも。漫画家、手塚治虫の名作「ブッダ」の原画などを仏像と一緒に展示し、同館初の漫画展「手塚治虫ブッダ展」は、9万9千人を集めた。ショップも充実し、グッズは国内最大級の約4500種類。そのうちオリジナルグッズは1650品目。



 東京国立博物館は、内外の有名建築家たちが手がけた建築物。初代本館(明治15年開館)は、英国のジョサイア・コンドルの設計。表慶館(同42年開館)は、コンドルの弟子だった片山東熊が手がけた。石造とれんが造の風格のある建物は重要文化財だ。2代目本館(昭和13年開館)は、東京・銀座の「服部時計店」(和光)で知られる渡辺仁の設計。和洋折衷の「帝冠様式建築」で、重要文化財となっている。



 東洋館(昭和43年開館)は、帝国劇場で知られる谷口吉郎の設計。法隆寺献納宝物を保存・展示する法隆寺宝物館(平成11年開館)も2代目だ。吉郎の長男でニューヨーク近代美術館新館を手がけた谷口吉生(74)の設計だ。特別展で使用される平成館(平成11年開館)の設計は、安井建築設計事務所となっている。