Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

東京・浅草

artscene2011-10-18



〒111-0032

東京都台東区浅草2丁目34番3号

03-5806-1181



http://www.amusemuseum.com/

http://www.guidenet.jp/spresent.php?id=199


 アミューズミュージアム浅草寺の隣、昭和中期の築43年の古ビルを再生した施設。2009年11月1日(日)にオープンした。


アミューズ ミュージアム AMUSE MUSEUM

〒111-0032 東京都台東区浅草2-34-3


浅草寺境内東側、重要文化財「二天門」に隣接


東京メトロ 銀座線浅草駅、東武伊勢崎線 浅草駅 歩5分
都営浅草線 浅草駅 歩8分



開室時間

展示室・浅草展望台/10:00〜18:00


1F カフェ/9:00〜21:00
5F・6F Bar/18:00〜深夜



休館日 特別展開催中を含め、年中無休。展示替のための一部休室あり。


観覧料金
一般1,000円、大高生800円、中小生500円、未就学児童無料。


※一般団体料金は15名以上で800円。
身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳精神障害者福祉手帳被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付き添いの方1名までは500円。


※上記金額は、企画展によって別料金の場合もあります。


お問合せ ・TEL:03−5806−1181(大代表) 


http://www.amusemuseum.com









南部地方は青森県を二分する太平洋側の地域である。この地域は偏東風(ヤマセ)が強く人々を苦しめた。
寒冷で過酷な風土は衣服にも表れ、上衣はもちろん下衣にも、保温と補強のために刺し子がほどこされていた。
さらに防寒とともに、着物の傷みを防ぐための前かけが作られた。
これらの前かけは三枚の布を縫い合わせており、両端の二枚は木綿布だが、中央部の一枚には浅葱色や紺色の麻布が使われている。
この中央部の麻布に、毛糸や木綿糸で縫いつける刺し子の技の粋が集められた。
それが「南部菱刺し前かけ」である。

明治時代までの南部地方の衣生活の中では、唯一、白黒の木綿糸が麻布に刺し綴る材料だったが、大正時代に入ると農村部にも少しの色毛糸が入ってきた。

毛糸は美しくて温かくて柔らかい。だが貧しい暮らしの中、決して大量には購入できない。これらの毛糸は10センチから20センチの短いものがほとんどで、長くても1メートルのものが手に入ればよい方だったようだ。また毛糸は木綿糸よりは弱いので、労働着への刺し子にするには無理があった。
だから前かけへの刺し子に毛糸が使われた。
前かけへの刺し子は、娘たちや主婦らの技を競うものであり、美しくありたいと願う心の発露であった。

毛糸には多様な種類の色があった。
女性たちは色毛糸の美しさに魅せられつつ、手に入った毛糸を互いに少しずつ交換し合い、更に手持ちの色数を増やした。また、太い色毛糸を三、四本に割って、さらに細かい刺糸にした。

麻布に毛糸の模様が浮かび上がり、盛り上がり、寄り添い合っている。
麻の表面に毛糸を出しすぎると、破れたり擦り切れたりするので、毛糸をかばうように刺し綴っている。
何とやさしい心だろう。毛糸を大事にいたわった女性たちの、丹精で誠実な心が覗かれる。刺すために毛糸を強くひき割ると、弱くてもろく、ちぎれてしまう。ゆえにその毛糸を静かに、そっと扱った。毛糸の持つ痛みを知ってのことである。女性たちは人間の心の痛みや悲しみも理解し得るのと同様に、毛糸の痛みまで感じる豊かさを持っていた。

毛糸は動物性のものである。前かけを作った女性たちは毛糸が羊の毛であることを知っていたのだろうか?
また毛糸は海を渡ってヨーロッパから来たものであることを知っていたのだろうか?
いずれにせよ、植物の麻の繊維の持つ冷たさと、動物性の柔らかい糸とを組み合わせることで、双方の持つ魅力を最大限活かし、美しさと調和を保ち得ることを知っていたのは驚きである。

貧しい暮らしの中でも、手に入るものを最大限有効に使い、物の本質を見抜き、それらを相互に活用した知恵が、世界的にも稀なリネンとウールの組み合わせ「南部菱刺しの前かけ」になったのである。
女性たちの知恵と直感に敬服します。