Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

越後国・柏崎 弘知法印御伝記

artscene2010-10-29

 越後国・柏崎 弘知法印御伝記
 初演から325年ぶりに東京公演するために里帰りする「弘知法印御伝記」。右端は越後角太夫。 

 元禄時代に長崎・出島に渡来したドイツ人医師、ケンペル(1651〜1716年)が禁を犯して持ち出した幻の古浄瑠璃
 
 「越後国・柏崎 弘知法印御伝記(こうちほういんごでんき)」

 かつて江戸で初演されてから325年ぶりに30日、31日、浜離宮朝日ホール(東京・築地)で上演される。

 昭和37年、大英博物館に保存されていた台本を、鳥越文蔵早稲田大名誉教授(79)が発見。友人のドナルド・キーン米コロンビア大名誉教授(88)が、物語の舞台である新潟の三味線弾き、越後角太夫(かくたゆう)(60)に上演を勧め、昨年、地元新潟での上演が実現した。その成功が今回、貞享2(1685)年に初演記録が残る東京での“里帰り公演”につながった。

 「古浄瑠璃で文章も決して文学的ではないが、当時の民衆を楽しませた単純さと変化に富んだ展開が、現代人から見ても面白い。」

 3時間もの長丁場で三味線の弾き語りをする角太夫は、作品の魅力をこう話す。物語は新潟・寺泊の西生寺(さいしょうじ)に、即身仏として安置される弘智上人に題材をとった一代記。遊びが過ぎた放蕩(ほうとう)息子が、妻の死をきっかけに出家を志し、馬や狼の妨害、天狗や女に化けた魔王まで入り乱れ、試練を乗り越え即身成仏するという、奇想天外な展開。
 
 復活上演のため、佐渡に伝わる古浄瑠璃の一種、文弥(ぶんや)人形の一座で30年活動する西橋八郎兵衛(62)と角太夫が、県内有志17人で演者集団「越後猿八座」を結成。角太夫が文弥節や義太夫節から古い曲を抽出し、作曲を進める一方、西橋が人形を触ったことがない座員を対象に、一から人形の遣い方を伝授した。

 舞台には、佐渡に伝わる文弥人形40体が次々に登場する。現代まで伝承される文楽では1つの人形を3人で操るが、文弥人形では1人。地元で復活上演させた新潟の古浄瑠璃の上演について、西橋は「一人遣いの人形はかえって動きが人形らしく、テンポが速くできるので、粗削りだが現代の観客に合っている」と話している。

 両日ともチケットは完売。

 問い合わせ
 X−jam  042・978・6976。(飯塚友子)幻の古浄瑠璃