Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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「花の朝 歌よむ人の 便り哉」、「死にもせで 西へ行くなり 花曇」

artscene2014-06-10



 夏目漱石(1867-1916年)の未発表の俳句が和歌山市内で見つかった。1896年、小説「坊っちゃん」の舞台となった愛媛県尋常中学の同僚教師に宛てた手紙に同封されていた。2014年5月、教師のひ孫に当たる遺族の女性(55)が実家で発見し、国文学研究資料館(東京)の野網摩利子助教が筆跡などから漱石のものと確認した。


 未発表の俳句は

 「花の朝 歌よむ人の 便り哉」
 「死にもせで 西へ行くなり 花曇」

 の2句で、野網助教漱石が愛媛時代には俳句に熱心に取り組んでおり漱石の丁寧な人柄や、人間関係が分かる貴重な資料だという。


 手紙は96年4月8日付で、熊本県の第五高等学校へ赴任が決まった漱石が、同僚教師の故猪飼健彦さんに宛てた。別れのあいさつに訪れたものの会えなかった猪飼さんが手紙を送り、漱石がそれに返答する内容。漱石は会えなかったことをわび、猪飼さんが手紙に添えた短歌を「永く筐底に蔵して君の記念と可致候」と書いている。俳句は漱石が短歌への返礼として手紙に添えた。


 ひ孫の女性によると、手紙は俳句の書かれた短冊とともに掛け軸に飾られ、木の箱にしまってあったという。ほかに、漱石から届いた年賀状も見つかり、2人の関係がその後も続いていたことがうかがえるという。