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裏山に快慶の石仏、最古作品の可能性 

artscene2013-09-04



快慶の最古の作品の可能性が出てきた一針薬師笠石仏

石仏に刻まれた薬師如来像(中央)などを描き写したイラスト

奈良県三郷町、調査委員会提供


奈良県三郷町の持聖院(じしょういん)にある薬師如来像の石仏が、鎌倉時代を代表する仏師・快慶の作品であると町教委などでつくる調査委員会が発表した。最古の作品の可能性もある。11月、岡山市就実大学でシンポジウムにて発表する。



 院は、鎌倉時代の解脱上人で高僧、貞慶(じょうけい、1155〜1213)が開いたとされる惣持寺(すでに廃寺)の子院である。院の裏山にあった「一針薬師(ひとはりやくし)笠石仏」は、花崗岩の表面に細い線で薬師如来像や日光・月光菩薩像などを刻んでいるが風化で薄れ、信者がなでた影響で顔の表情は不鮮明になっている。

 笠石仏は町文化財で高さ2・2m、幅2m、厚さ25〜30cm。

 倒壊の危険があり、調査委が5月、解体調査。笠のように上に載った石の裏側に銘文が刻まれており、「解脱上人」の「本願」で「アン大工匠人」が造立したと記されていた。(アンは梵字)。





 奈良県三郷(さんごう)町の持聖院(じしょういん)に伝わる鎌倉時代前期の「一針薬師(ひとはりやくし)笠石仏」(町指定文化財)に、同時代を代表する仏師・快慶を示すとみられる銘文が刻まれていることがわかった。

 東大寺南大門の金剛力士像で知られる快慶が石仏の作図にかかわったというこれまでの説を裏付けた形で、研究者は「快慶の最初期の作品ではないか」と指摘している。

 石仏は花こう岩の表面に彫られ、高さ、幅各約2メートル、厚さ25〜30センチ。薬師如来を中心に、日光、月光両菩薩や十二神将の像を線で刻んでいる。

 当初は同院の裏山に安置されていたが、周囲に木が茂って倒壊する恐れが出てきたため、同院が今年5月に移動し、同院や町教委などでつくる調査委員会が拓本を取って銘文などを調査。造立にかかわった人物として、「アン(梵字)大工匠人(しょうじん)」の名があることがわかった。快慶は、手がけた初期の作品で「巧匠アン阿弥陀仏」という法号を用いており、快慶を指す可能性が高いという。

 石仏にはほかに、同院の前身の寺院を創建した鎌倉時代の高僧・貞慶が造立を発願したことや、「如月廿日(2月20日)」に誰かの一周忌にあわせて造られたことなどが記されていた。同じ時代の公家で、貞慶と親しかった九条兼実の長男・良通が1188年2月20日に22歳で亡くなっていることから、1189年に造られた可能性があるという。

 調査した同県大和郡山市教委の山川均主任(中世考古学)は「快慶の作で現存最古とされる、米ボストン美術館所蔵の弥勒菩薩像は、1189年9月15日の作とされている。一針薬師はそれよりも半年古いと考えられ、快慶の原点ともいえる作品だ」と話している。