Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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プーシキン美術館展 フランス絵画300年

artscene2013-07-06



横浜美術館
www.yaf.or.jp/yma


〒220-0012
神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4−1
045-221-0300


ピエール=オーギュスト・ルノワール
≪ジャンヌ・サマリーの肖像≫ 1877年

知る人ぞ知る、フランス絵画の宝庫ロシア。17世紀古典主義の巨匠プッサンにはじまり、18世紀ロココの代表ブーシェ、19世紀のアングル、ドラクロワ、ミレー、印象派やポスト印象派のモネ、ルノワールセザンヌゴッホ、そして20世紀のピカソマティスまで――。プーシキン美術館のコレクションの中核をなすフランス絵画の質の高さは、フランス本国もうらやむほどのものです。
本展では、選りすぐりの66点で、フランス絵画300年の栄光の歴史をたどります。なかでも、ルノワール印象派時代最高の肖像画と評される≪ジャンヌ・サマリーの肖像≫は、最大の見どころです。
「ロシアが憧れたフランス」の粋を、どうぞお楽しみください。
展覧会のみどころ 収集の歴史とコレクター 主な作品 プーシキン美術館について
ロシアが充実したフランス絵画コレクションを有する、その訳は−

優れた作品の数々をロシアにもたらしたのは、エカテリーナ2世ロマノフ王朝の歴代皇帝や貴族、19世紀の産業発展で財をなしたモスクワの大富豪たちです。情熱的な収集の背景には、当時のヨーロッパ先進国、フランスへの強い憧れと、自国の文化を豊かにしようという熱い思いがありました。

18世紀の女帝エカテリーナ2世は、フランス人の啓蒙思想家と交流するなどのフランス通で、皇帝となって間もなく、莫大な資金を投じて美術品の収集を開始します。ロシアの富と文化的な洗練度をヨーロッパにアピールする施策を通じて、フランス絵画を中心に、傑作の数々がロシアにもたらされました。同じころ活躍した大貴族ニコライ・ユスーポフ公爵も、フランス絵画をこよなく愛し、王室と肩を並べるほどの大コレクションを築きました。

19世紀後半になると、フランス絵画収集の中心は、サンクトペテルブルクの貴族から、商業都市モスクワに台頭した大富豪たちに移ります。産業革命の中、紡績業などで成功を収めた商人や企業家は、自身のステータスを誇示するとともに、西欧文化を市民に紹介する志に支えられ、絵画の収集に私財と情熱を注ぎ込みました。特に、セルゲイ・シチューキンとイワン・モロゾフのふたりは別格の存在で、伝説のコレクターとして知られています。

プーシキン美術館に遺る17世紀から20世紀まで、約300年にわたるフランス絵画のコレクションは、フランスに憧れ、自国文化の発展を願ったロシア人たちの情熱の結晶なのです。