Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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「収集のよろこび―美術館にみる個人コレクション」

artscene2013-07-04


横浜美術館コレクション展2013年度第2期

横浜美術館
www.yaf.or.jp/yma


〒220-0012
神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4−1
045-221-0300




横浜美術館の収蔵作品には、個人が旧蔵した特徴あるコレクションや、篤志家からのご寄贈によって収集した作品が、数多く含まれています。今年度は個人コレクターや支援者の活動の一端を、コレクション展を通してご紹介いたします。
 今期の展示では、7つの個人コレクションに着目します。
 横浜に本社を置く株式会社サカタのタネを1913年に創業した坂田武雄氏(1888-1984)は、種苗の生産・販売を手がける実業家として多忙を極める中、西洋近代美術作品の収集に情熱を注ぎました。高い審美眼に貫かれたそれらの作品のうち52点が、開館前の1983年に当館準備室に寄贈されました。本展では、この坂田コレクションをはじめ、油彩画、日本画、工芸、版画など、各コレクターの個性が反映された多彩な作品群をご紹介します。
 さらに、大佛次郎記念館との連携により、小説家・大仏次郎(おさらぎ・じろう)(1897-1973)の没後40年を記念して、同館が所蔵する大佛旧蔵のフランス人画家ポール・ルヌアール(1845-1924)の版画作品を展示します。
 また、写真展示室では、2013年度横浜美術館コレクション・フレンズ対象作品のひとつである、アンディ・ウォーホル(1928-87)の≪キャンベル・スープⅡ≫を中心に、ポップアートの作品を特集します。あわせて、ヨコハマトリエンナーレ2011に出品され、2012年度に当館に新たに収蔵されたピーター・コフィン(1972年生まれ)の映像作品≪無題≫を展示いたします。







横浜美術館の所蔵作品を特徴づけるものとして、個性豊かな幾つかの個人コレクションがあります。今期の展示では、それぞれのコレクター像を探り、また、各コレクションを通して、人々を魅了する美術の力を探ります。
 コレクターが作品を収集するきっかけや関心のあり方は、実にさまざまです。日常生活の中で美と向き合う時間を求めて、画廊などで少しずつ作品を買い集めることを喜びとする人もいます。アーティストを支援する社会貢献の志から、コレクターとなる人もいるでしょう。あるいは、仕事の関係などで、気がつけばまとまったコレクションを持つことになった人もいます。
 横浜の実業家である坂田武雄(さかた・たけお)氏や松浦信太郎(まつうら・しんたろう)氏は、企業の創業者として多忙を極める中、美術作品の鑑賞と収集に情熱を注ぎました。彼らの系統だったコレクションは、長年にわたって磨かれた高い審美眼に貫かれています。同じく横浜の実業家の山口久像(やまぐち・きゅうぞう)氏は、地元の画家や工芸家を支援することに大きな喜びを見出しました。そのコレクションには、作家たちとの親しい交流によって直接収集された作品が多く含まれます。
 明治期の横浜の貿易商・陶業家であった綿野吉二(わたの・きちじ)氏は、陶工・宮川香山(みやがわ・こうざん)とも交流がありました。綿野氏の店に残された香山の陶磁器群は、戦時中も大切に保管され、当代の綿野家に受け継がれました。また、版画の刷り師である木村希八(きむら・きはち)氏の版画コレクションは、アーティストとの協働の成果として木村氏の手元に残されたものです。
 個人コレクションは、美術館に収蔵されることにより、広く人々に親しまれるようになります。コレクターの作品への想いや愛情は、美術館の中で、永く息づいていくといえるでしょう。当館では1982年の準備室開設以来、寄贈や市の文化基金による購入により、さまざまな個人コレクター旧蔵の優れた作品を収集してきました。これらは今日、1万点を超える当館所蔵作品の重要な一角を成しています。




 アンディ・ウォーホル(1928-87)は、1960年代にニューヨークを中心に興り、世界的影響を与えた「ポップ・アート」を代表する作家です。
ペンシルヴェニア州ピッツバーグに生まれたウォーホルは、カーネギー工科大学の絵画・デザイン学科で学びました。卒業後ニューヨークに移り、1950年代に商業デザイナーとしての地位を確立します。1962年に発表した≪キャンベル・スープ≫や≪マリリン≫など、シルクスクリーンによる版画作品で一躍注目を集めると、ウォーホルは「ファクトリー」と呼ばれるスタジオで、作品を制作するようになりました。大衆文化の中で大量生産され、消費される商品やマスメディアのイメージをテーマとしたそれらの作品は、それまでの芸術作品の定義に揺さぶりをかけるものでした。ウォーホルは版画にとどまらず、デザインや写真、映画など様々なジャンルに取り組み、後の美術の動向に多大な影響を及ぼしました。
今年度のコレクション・フレンズ対象作品である≪キャンベル・スープⅡ≫は、スープ缶のイメージを反復することで、商品が整然と並ぶスーパーマーケットの光景を想起させます。それは、現代の消費社会の在り様を浮かび上がらせているかのようです。また、インスタント・カメラで撮影した映画スターや有名スポーツ選手のポートレート写真や、1963年に暗殺されたアメリカ大統領ジョン・F・ケネディの写真を用いた、シルクスクリーンによる≪フラッシュ≫シリーズは、人間の欲望や、命の儚(はかな)さを暗示しているのかもしれません。
 ウォーホルの作品と共に、同時期に活躍したリチャード・ハミルトン(1922-2011)やロイ・リクテンスタイン(1923-97)など、ポップ・アートの作家たちの作品もご紹介します。

あわせて、ヨコハマトリエンナーレ2011の出品作品であり、昨年度に新収蔵されたピーター・コフィンの映像作品≪無題≫を、当館で初めて展示します。






横浜美術館では、イサム・ノグチの彫刻作品を所蔵しています。日本の詩人野口米次郎(のぐち・よねじろう)とアメリカ人レオニー・ギルモアの間に生まれたイサム・ノグチは、少年時代に茅ヶ崎に住み、横浜のカトリック系小学校に通っていました。
 ノグチは、彫刻が現代社会に果たす役割とは何かを常に考えていました。彫刻はそれ自体が単独で完結しているというよりも、彫刻が置かれる空間と一体になって、見る人の想像力が働く活き活きとした空気を作り出す力を持っています。都市空間では、彫刻が置かれることで、そこに人々が集い語らう広場(ピアッツァ)ができるとノグチは語っています。


横浜美術館コレクション展2013年度第2期
「収集のよろこび―美術館にみる個人コレクション」

関連イベント


○ゲスト・トーク

本展でご紹介するコレクターのお一人であり、様々な作家と制作を共にしてきた版画刷り師の木村希八氏を迎え、お話をうかがいます。
日時:7月29日(月曜) 14時から14時30分まで
出演:木村希八 氏(版画刷り師)
聞き手:横浜美術館学芸員
会場 コレクション展ホワイエまたは展示室
※当日有効の観覧券が必要です。



○エデュケーターによるギャラリートーク

さまざまな視点で作品を見つめ、鑑賞の楽しみを深めるエデュケーター(教育担当)によるトーク
日時 : 7月19日(金)、8月2日(金)、 8月16日(金)、8月30日(金)
    各日14:00〜 14:30
会場 : コレクション展展示室
※事前申込みは不要です。
※当日有効の観覧券が必要です。



○視覚に障がいのある人とない人が共に楽しむ鑑賞会

対話をとおして相互に作品鑑賞の喜びを深めるワークショップ
後援 : 横浜市文化観光局
日時 : 9月6日(金) 14:00〜16:00
会場 : コレクション展展示室、円形フォーラム
定員 : 20名 (要事前申込み、先着順)
参加費 : 無料 (当日有効の観覧券が必要、障がい者手帳をお持ちの方と同伴の方1名は  観覧無料)

申込方法 :
(1) メール
お名前(ふりがな)、ご住所、電話番号、メールアドレス、年齢、視覚障がいの有無
をご記入のうえ、
以下のメールアドレスにお申込みください。
お申込みメールアドレス : yma-appli+@+yaf.or.jp


(2) 電話
メールでのご連絡が難しい方は、電話でお申込みいただけます。
お申込み電話番号 : 045-221-0304
受付時間 : 9時45分から18時00分 ※木曜日は休館 (8月1日、8月15日は開館)



○夏休み子どもフェスタ

美術館スタッフや中学校の美術の先生、市民ボランティアが、ワークシート、画材のキットなどを使いながら、対話を通して子どもたちの作品鑑賞をサポートします。
日時 :8月6日(火)〜14日(水) 10:30〜15:30 (受付は15:00まで)
※8月8日(木)は休館日
会場 : コレクション展展示室
対象 : 小学生以上
参加費 : 無料 (当日有効の観覧券が必要、小学生以下は入場無料、中学・高校生は土曜日は入場無料)






The collection of the Yokohama Museum of Art includes many artworks that were donated by philanthropists or that formerly belonged to distinctive private collectors. This year, the displays of the museum collection are designed to introduce the activities of these individuals and their contributions to the museum.

 In the current display, we focus on seven private collectors.
 One such individual was Sakata Takeo (1888-1984), who established SAKATA SEED CORPORATION in Yokohama in 1913, and who, in addition to running what was a thriving seed production and sales business, also funneled much of his passion into his collection of Western modern art. In 1983, 52 of those carefully selected artworks were donated to what was then still the preparations office of the Yokohama Museum of Art. In this exhibition we demonstrate the unique characteristics of collections such as Sakata's - be they focused on oil paintings, nihon-ga (Japanese-style) paintings, craft works, prints, and so on.
 Also, in collaboration with the Osaragi Jirō Memorial Museum, we commemorate the 40th anniversary of the death of the novelist and art collector Osaragi Jirō (1897-1973) with a special display of prints by French artist Paul Renouard (1845-1924) that were owned by Osaragi.

 Meanwhile, in the Photography Gallery, we exhibit a selection of Pop Art works, including Campbell’s Soup II by Andy Warhol (1928-1987), which was one of the works selected in the museum's 2013 Collection Friends program. Also on display is the video work Untitled, by Peter Coffin (1972-), which was exhibited in the Yokohama Triennale 2011 and acquired by the museum in 2012.