Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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梅佳代 写真展

artscene2013-05-28





「朝起きたときから夜寝るまで全部がシャッターを押す範囲」 ─ 梅佳代

なにげない日常のなかに潜んでいるさまざまな光景を独自の視点から切り取ってみせる写真家・梅佳代。天性のコミュニケーション能力と絶妙の距離感、そして動物的ともいえる動体視力を武器に、梅佳代は果敢にシャッターを切ります。ありそうでありえない光景、笑いと驚き、そしてほんのすこし怖さをはらんだ瞬間まで、梅佳代が見せる世界は、かつてないユニークさでわたしたちの眼を惹きつけます。その作品は、写真は「ホントがそのまま写っている」という素朴かつ根源的な写真観に支えられ、また対象への深い共感と批評的な距離を内在させています。その鮮烈なイメージは、写真家本人の飾らぬ人柄と権威にとらわれないアナーキーな言動とあいまって、写真界に新風を吹き込み、幅広い層の人々の支持を集めています。

本展覧会は、いま若手のなかで最も熱く、幅広い視線を浴びる写真家・梅佳代の美術館における初の個展です。写真家の代表的なシリーズを網羅し、数々の未発表作をまじえて大胆に再構成した作品約570点で、梅佳代の全貌をはじめて明らかにします。展示は東京オペラシティ アートギャラリーの巨大空間の特性にあわせ、ときにダイナミックに、ときに親密に展開し、梅佳代の写真表現の多様性とそれらを貫く今日性を浮かびあがらせます。


http://web.canon.jp/event/umekayo/


http://www.operacity.jp/ag/exh151/


梅佳代の作品は、ストリートスナップから、家族や身近な隣人たちをとらえたポートレイトまで、多岐に渡ります。
本展では、日々生み出されるそれら夥しい数のショットから、未発表を含む作品約570点を厳選し、6つのセクションによって紹介します。

1:シャッターチャンス Part 1

梅佳代は、ストリートスナップをその活動の重要な柱としています。構図やプリントでの調整など「作品」としての完成度にこだわるよりも、むしろ日常のなかで日々生まれている驚くべき瞬間を「報道」のつもりで追っているといいます。その着眼点はきわめてユニークなもので、日常のなかのちょっとしたアクシデントを笑いや驚き、恐れや共感とともに切り取るセンスは他の追随を許しません。またそれらのイメージには、不思議と心の中に残りつづける何かがあるように感じられます。


2:女子中学生

専門学校時代に仲良くなった近所の女子中学生たちを学生寮の自室に招いて撮影した初期作品で、約10年振りの公開となります。いまだ青春のさなかにある梅佳代と思春期の少女たちは、性に対する好奇心を共振させながら、アナーキーであっけらかんとしたパフォーマンスでそれを表現しています。「自分も10代だったから撮れた」と本人が言うように、これは写真家の青春の記念碑であると同時に、梅の知られざる原点をさぐる手掛かりでもあります。とりわけ、身近な他者とのコミュニケーションを起点として作品を生み出す梅佳代の方法がすでに見て取れることは興味深い事実です。


3:能登

梅は、石川県柳田村(現能登町)で生まれ育ちました。高校時代に写真を撮り始めて以来、また大阪、東京と活動の拠点を移して現在に至るまで、梅佳代はつねに故郷の人々を撮り続けてきました。とりわけ近年は、母校の生徒たちや身近な隣人たち、あるいは日々出会う現地の人々にストレートな視線をむけ、数々の魅力的なポートレイトを生み出しています。それらは、「能登はやさしや土までも」の言葉でも知られるこの土地の人々の気風や風土を、さわやかな光と風にのせるようにして伝えています。このシリーズは、展覧会と同時期に新作写真集としても発表される予定ですが、展示では写真集とはことなるセレクトで、梅の新境地を伝えます。


4:じいちゃんさま

梅は、10数年来、自分の祖父と祖母、妹や飼い犬たちを撮り続けてきました。それらは高校時代に、「じいちゃんは撮っとるうちは死なんと思った」のがそもそもの始まりだといいます。そこには、何気ない日常を淡々と、しかし愛情を込めてシャッターを切り続ける梅の姿がありました。もちろん、笑いや驚きを絶妙の間合いで捉える、梅ならではの視点や対象との関係性も鮮明に写りこんでいます。きわめてパーソナルなコミュニケ—ションから発して、だれもが共感する普遍性に達したこのシリーズは、2008年に『じいちゃんさま』として発表され、大きな反響を呼びました。今回はその後現在にいたるまでのショットも加え、あらためて日々の営みと年月の積み重ねを捉えたイメージの連なりとして紹介します。

5:男子

大阪の専門学校時代、路上で仲良くなった小学生たちの「バカで無敵な」パワーを活写するシリーズ。梅を「うめかよー」と慕う男子たちは、同時にこちらの思惑など歯牙にもかけない野放図なパフォーマンスを繰り広げます。とはいえ、そこからは仲良くなった梅佳代に見てもらいたい、撮ってもらいたいというひそかな期待と喜びもみずみずしく伝わってきます。ある年代の少年たちだけが示す独特の感情と心の機微が、被写体に共感しつつも絶妙な距離を保つ、梅の冷静なカメラアイによって、鮮やかに捉えられています。それらはまた、梅と被写体との「コラボレーション」によって生まれた奇跡的なイメージともいえるでしょう。


6:シャッターチャンス Part 2

展覧会の掉尾では、ふたたび梅の活動の根幹をなすストリートスナップの数々を細心のセレクトで紹介します。梅の作品は「笑い」という観点で語られることが多いですが、本人は笑ってもらうために撮っているのではなく、自分のなかで「はっ」とさせられる瞬間をひたすら追っているだけだといいます。また構図には関心がないとも語っていますが、実は対象に果敢に迫る梅自身の動物的な身体性が、そのフレーミングによってダイレクトに伝わってくる場合も多いようです。そして通常なら被写体にならないような場面とその独特の間合いからは、単なる状況の説明とはことなる、見る者の想像力に働きかける独特の力が感じられます。それらは、日常におけるさまざまな営みに新たな眼を向けるきっかけとなると同時に、写真というものの不思議さと限りない可能性を改めて感じさせてくれることでしょう。


梅佳代展 UMEKAYO
Kayo Ume: UMEKAYO


期 間:2013年4月13日[土]─ 6月23日[日]


会 場:東京オペラシティ アートギャラリー 


交通アクセス 京王新線 初台駅1分 直結


開館時間:11:00 ─ 19:00 (金・土は20:00まで/最終入場は閉館の30分前まで)


休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜)


入場料:
一般1000[800]円、大・高生800[600]円、中・小生600[400]円


*同時開催:「収蔵品展044難波田龍起の具象」、「project N 52 秋山幸」の入場料を含みます。
 収蔵品展入場券200円(各種割引は無し)もあり。

*( )内は15名以上の団体料金


*その他割引(半額):閉館1時間前以降の入場、65歳以上


*土・日および祝日は中学・小学生無料。


障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。


*Arts友の会会員は無料。(会員証をご呈示ください)


*割引の併用および払い戻しはできません。



主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団、産経新聞
協賛:日本生命保険相互会社



技術協力:キヤノン株式会社 [梅佳代スペシャルサイト]


協力:相互物産株式会社


企画協力:pdash


問い合わせ:

東京オペラシティ アートギャラリー 03-5353-0756




梅佳代(うめ かよ)

1981年石川県生まれ。
2000年キヤノン写真新世紀にて「男子」佳作受賞。
2001年キヤノン写真新世紀にて「女子中学生」佳作受賞。
2002年日本写真映像専門学校卒業。
2006年初の写真集『うめめ』を発表。
「SHUTTER CHANCE FESTIVAL」(Gallery Eclectic、ロンドン)開催。
「束の間美術館ソイサバーイ」(シラパコーン大学ほか市内各所、バンコク)に出品。
2007年写真集『うめめ』で第32回木村伊兵衛写真賞受賞。『うめめ』は現在13万部を超え、写真集としては異例の部数を記録。
写真集『男子』、『うめ版 新明解国語辞典×梅佳代』を発表。
2008年写真集『じいちゃんさま』を発表。
「日常の喜び」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、茨城)に出品。
2009年「一号館アルバム:梅佳代ホンマタカシ、神谷俊美 3人の写真家による三菱一号館復元の記録」(三菱一号館、東京)に出品。
「一人快芸術」(広島市現代美術館、広島)に出品。
2010年写真集『ウメップ』を発表。
「ウメップ:シャッターチャンス祭り」(表参道ヒルズ スペースオー、東京)開催。
2011年「八戸レビュウ」(八戸ポータルミュージアムはっち、青森)に出品。同展は横浜トリエンナーレ2011においても特別連携プログラムとして開催された。
2013年最新写真集を4月に刊行予定