Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

アール・デコ 光のエレガンス展

artscene2012-07-24





アール・デコ 光のエレガンス展

開館期間2012年7月7日(土)〜2012年9月23日(日)


開館時間

午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)



休館日

毎週水曜日、8月11日(土)〜8月16日(木)



入館料
一般:700円   大学生:500円   中・高校生:200円  小学生以下:無料


65歳以上の方で年齢のわかるもの提示:600円


20名以上の団体:各100円引(65歳以上は除く)


障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで:無料

http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/12/120707/index.html

http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/12/120707/pdf/list.pdf
主催パナソニック 汐留ミュージアム東京新聞


後援 フランス大使館、ドイツ連邦共和国大使館、港区教育委員会» パナソニック 汐留ミュージアムへのアクセス



本展はアール・デコの照明器具などアール・デコと光の関係に焦点をあてた、これまでにない視点の展覧会です。アール・ヌーヴォーからアール・デコへの変遷は、曲線から直線への変換といった様式的に語られることがほとんどですが、そこには電球の発明など文明の発達も大きく関係していました。本展はドーム、国立セーヴル製陶所、ラリックなどのアーティストが手がけたデザイン性豊かな照明器具を中心に、それらが置かれていたであろう室内に合うイスや花瓶などを加えた約110点を展示し、アール・デコの未来志向性と新しい時代の予感を体感いただきます。



第一部では「カラフル」をテーマに、パート・ド・ヴェール技法の照明器具を紹介します。この技法は、古代エジプトに起源を持つ、砕いたガラスを鋳型に入れて窯の中で熔かして焼き上げる特殊な製法で、アール・ヌーヴォー期に再興され、1920年代のアール・デコ期に花開きました。本展では、アルジィ=ルソーの照明器具を中心に、アール・ヌーヴォーと共通の自然主義に基きながら、様式化されたアール・デコの特徴をもつ、カラフルで色鮮やかな作品を紹介します。



第二部は「シック」をテーマとし、サロンの再現展示を中心に、フランスのアール・デコの粋ともいえる作家ジャン・デュナンの漆芸パネル、光を透過する「磁器」の特性を利用した照明器具など、優れたデザイン性に加え、当時ならではの素材使いにより、興味深い作品を紹介します。



第三部では、ラリック作品を中心に、初公開の天井灯とオリジナル・セットによるテーブル・セッティングなど、食の空間に関連する作品を紹介します。ルネ・ラリックは透明ガラスを利用したモノトーンでシックな光の演出により、ラグジュアリーの概念を塗り替えました。「光とスピード」と題したエピローグは「レディエンス」をテーマとし、光とスピードを主題にしたオブジェとポスターを展示します。電光や稲妻を連想させる放射線やジグザグ文様は、スピードと躍動感を表す、アール・デコの象徴的モチーフでした。  


このように本展は、硬質で眩しい光を、優れた芸術感覚により生活の中に取り入れた、20世紀初頭の知恵とセンスに出会う新しい体験となるでしょう。




イベント・講演会
【ギャラリートーク

当館学芸員が展示内容を解説します(申込不要)


2012年7月28日(土)、8月18日(土)、9月8日(土) 
各回午後2時より(1時間程度) 参加費無料(入館には展覧会観覧券が必要です)
汐留ミュージアム受付前にお集まり下さい。






?)プロローグ:カラフル
1920年代を中心にしたアール・デコ期、一般家庭にも電気が普及し、電気照明を利用したシックでモダンなインテリアが生活を激変させました。白熱電球の発明に始まる電気の光は、直線と立体の知的な構成を特徴とする「アール・デコ」の新様式と出会い、新しいラグジュアリーの概念を誕生させました。

第1章ではカラフルな色彩をテーマに、当時流行した珍しいガラス技法「パート・ド・ヴェール」による作品を 紹介します。古代エジプトに起源をもつこの技法は、色ガラスを砕いて粉状にした粒を鋳型に入れ、窯の中で溶かして焼き上げる製法で、1880年代中頃にフランスで再興され、1920年代に人気を博しました。アルジィ=ルソーの常夜灯を始め、ワルター、デコルシュモンなどアール・ヌーヴォーのガレやドームに共通する自然主義に基きながら様式化されたアール・デコの特徴をもつ、色鮮やかな作品が魅力です。


?)サロン:シック

ローゼンタール《山羊付置時計》 1924年 
岐阜県現代陶芸美術館蔵20世紀初頭の美術運動、キュビスムや抽象主義から強い影響を受けたアール・デコは、幾何学的な形の処理や色数を抑えたシックな意匠を特徴としています。シンプルで装飾性を抑えたインテリアの中で浮かび上がったのが、素材がもつ質感の魅力です。光は明るさや角度も調整しやすく、木、土(陶磁器)、石、ガラス、金属、漆、象牙など室内装飾を彩る様々な素材の魅力を最大限に引き出し、質感のハーモニーを一層高めました。


本章では光を透過する磁器の特質を利用した照明器具を始めとする国立セーヴル製陶所の驚くべき挑戦、アール・ヌーヴォーとは一味違ったドームの量感あふれるアール・デコ作品、金属工芸とガラスのコンビネーション、縞目大理石のシェードをもつ珍しいランプ、そして時代の寵児ジャン・デュナンの漆芸装飾パネルなど、素材使いに特徴のある作品をご紹介します。磨き上げられた名工の技から生まれ、愛好家のサロンを飾った名作の数々です。


?)ダイニング・ルーム:モノトーン

ルネ・ラリック 《テーブル・センターピース「三羽の孔雀」》  1920年  北澤美術館蔵現代インテリアの基調ともいえるモノトーンな色使いはアール・デコ期の1920年代に芽生えました。 豊かな色使いは、かつて高級感を生み出す重要な要素でしたが、人工染料や印刷による壁紙や 新たな技術革新で石版などのカラー印刷が出回ったことで、20世紀を迎える頃には必ずしも贅沢さを示すバロメーターとは言い切れなくなっていました。こうして都会的なエリート層の洗練追求の中から、色彩とは対極にある白黒あるいは白のみを基調とする単彩のインテリアが生まれていきました。


光と影とのハーモニーによりアール・デコ期に新しい空間美を誕生させたルネ・ラリック。彼は電気を利用したモノトーンでシックな光の演出で、ラグジュアリーの概念を塗り替えました。素材の希少性や手間の多寡に負っていた旧来の価値観からいち早く抜け出し、機械的な量産法と芸術性の実現を両立させたラリックのガラス芸術は、20世紀に花開くインダストリアル・アートの先駆けといえるでしょう。


このコーナーではラリックの天井灯とオリジナル・セットによるテーブル・セッティングを中心に、食の空間に関連する作品を紹介します。


?)エピローグ:レディエンス−閃光:未来へ向かって−


ルネ・ラリック 《カーマスコット「勝利の女神」》
1928年  個人蔵ラジオや電信電話、自動車、列車、飛行機など、現代生活を支える新しい技術が普及した第一次世界大戦後の1920年代、近代テクノロジーのもたらす快適さを実感し始めた人々は、かつて醜いものとしてなるべく目に触れぬようにされていた機械の躍動感や金属的な質感に共感を覚え、未来への憧れを託すようになります。


電光や稲妻を連想させる放射線やスピードを表わすモティーフは、躍動感溢れるアール・デコの象徴でした。


光やスピードを主題にしたポスターとオブジェ、「海に浮かぶ美術館」の異名をもつ大西洋横断豪華客船「ノルマンディー号」関連の品々、その迫力を伝えるカッサンドルのポスター、乗船客に配られたパンフレット、船内で使用されたテーブル・ランプや食器類、そして自動車への情熱を掻き立てるラリックのガラス製カーマスコット(車の先端部分のラジエーター・キャップに装着する装飾品)など、閃光を放ち時代を駆け抜けた想い出の品々です。


アール・デコとは?


1910年代から30年代にかけて、フランスを中心に西欧諸国に開花した、後期アール・ヌーヴォーからバウハウスデザイン確立までの装飾様式。名称は「装飾美術」の意で、1925年にパリで開催された「現代装飾美術産業美術国際博覧会」の略称に由来する。直線と立体の知的な構成、抑制された幾何学文様の装飾性、効果的な素材使いに特色がある。