Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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開館25周年記念特別展 柿右衛門展

artscene2012-05-28



2012年4月28日(土)〜5月31日(木)


〒150-0046
東京都渋谷区松濤1-11-3
tel. 03-3465-0070



●交通
渋谷駅ハチ公口より徒歩15分

京王井の頭線神泉駅北口より徒歩10分


●開館時間
午前10時〜 午後5時
(入館は午後4時半まで)



●休館日
毎週月曜日
(ただし月祝の場合開館、翌日休館)


展示替え期間中
年末年始



●入館料
一 般 1,000円
高大生  700円
小中生  400円




●ご注意
※当館には専用駐車場・駐輪場はございません。
※当館にはエレベーター・スロープがございません。あらかじめご了承ください。




色絵 鶏 置物
伊万里柿右衛門様式)
江戸時代
(17世紀後半)
高27.5 cm
戸栗美術館所蔵


色絵 菊花文 壺
伊万里柿右衛門様式)
江戸時代
(17世紀後半)
高25.0cm
口径12.0cm
戸栗美術館所蔵


濁手 桜文 花瓶
14代酒井田柿右衛門(2003)
高46.5cm
口径39.0cm
柿右衛門窯所蔵





濁手 牡丹文 蓋物
14代酒井田柿右衛門
高32.0 cm
口径31.3 cm
高台径17.0 cm
戸栗美術館所蔵



  戸栗美術館は、本年開館25周年を迎えます。それを記念して、「色絵磁器」の技術で重要無形文化財保持者(人間国宝)・14代酒井田柿右衛門氏の優品を一堂に展観するとともに、当館のコレクションの中心である伊万里焼の中から柿右衛門様式の色絵磁器を展示いたします。14代酒井田柿右衛門氏は、今年襲名30周年、さらには喜寿という祝いの年を迎えられています。


 佐賀県有田町周辺で誕生した日本初の国産磁器・伊万里焼は、1650年代末に大々的に始まった輸出事業によって急速に発展し、「濁手(にごしで)」と呼ばれる純白の磁肌に赤色を基調とした華麗な文様をもつ、精巧無比な「柿右衛門様式」を完成させました。この色絵磁器の完成には酒井田柿右衛門家が大きな役割を果たしたことが知られています。このようにして作られた色絵磁器は、ヨーロッパで大変な人気を博し、伊万里焼の一時代を築きますが、輸出事業の縮小化や流行の変化に伴い、その製法は18世紀のうちに失われてしまいました。


 「濁手」の製法は、昭和の時代になって12代・13代柿右衛門の尽力により復興されました。当代である14代はその技術を引き継ぐとともに、現代の生活に即したうつわの製作に取り組み、山野の草花のデッサンを通して現代の日本の美を追求するなど、新たな「柿右衛門」を確立しています。


 江戸時代より現代まで連綿と受け継がれてきた伝統を継承し、失われた技術を復興させ、さらに時流に合わせ進化を続けている「柿右衛門」。その伝統と革新の美をご堪能ください。


 なお、今展示では、併せて1Fやきもの資料室にて、現在の柿右衛門窯の活動や、その製品についてもご紹介いたします。
酒井田柿右衛門家所蔵作品約20点/柿右衛門様式伊万里焼(江戸時代・当館所蔵)約30点 ほか出展予定)




第1展示室:酒井田柿右衛門家の系譜

 庭先の夕日に映える柿の実を眺め、その色を焼き物にとり入れたいと、赤絵作りに苦心する名工柿右衛門――。この初代・柿右衛門のイメージは、11代片岡仁左衛門による大正元年初演の歌舞伎『名工柿右衛門』と大正11年から使用される、国定小学教科書掲載の『陶工柿右衛門』により作り出されました。
 もともと筑後の武士であった酒井田家は、初代柿右衛門の父・酒井田弥次郎(円西)が肥前白川郷に移り瓦器を焼き始め、その後有田に所を得て磁器の製作にあたったと言われています。酒井田家に伝わる古文書には、初代によって赤絵や金銀彩が創始されたこと、藩主に御目見得が許されたり、御用を賜っていることなども記されています。これらの記録から、酒井田柿右衛門家が色絵の創始に少なからぬ役割を果たし、鍋島藩から特別な待遇を受けた、有田を代表する窯元であったことが伺われます。
 当代である14代酒井田柿右衛門氏は、その血脈を受け継ぎ、1982年に襲名。父13代の時代に濁手を復興、さらに革新的な造形・デザインが打ち立てられ、急展開を遂げたことを受け、14代は原点に立ち返り「濁手の再研究」をテーマに掲げました。また完成された技術を伝承していくだけでなく、現代への適応を目指して食器の製作にも力を入れています。
 第1展示室では、古文書を通して、江戸時代から現代までの酒井田柿右衛門家の系譜をひもとくとともに、歴代の中で最も鮮やかと言われる「赤」を用いて洗練された作品を作り出している14代柿右衛門の作品を中心にご覧いただきます。



第2展示室:柿右衛門様式 (17世紀後半の伊万里焼)

17世紀はじめ、朝鮮人陶工のもたらした技術をもとに、中国磁器への憧れを抱きながら作られ始めた伊万里焼。17世紀後半には日本の製磁技術も高まり、ロクロ型打ち成形を主とした薄作りの白い素地(きじ)に、余白を生かし繊細な上絵付けを施した新しい色絵の様式が生みだされます。その精妙かつ日本的な美しさはヨーロッパの人々を魅了し、輸出事業の重要品目となりました。また同時期には、色絵同様に、文様構成・技術ともに高いレベルの染付磁器も数多く生産されました。
有田の窯場で一斉に作られ、海外へと運ばれた色絵を中心とするこれらの作品群は、「柿右衛門様式」と呼ばれるようになりますが、中でも、素地の白さや成形の精緻さ、線描きの細かさなど特に高い品質の製品は、類品が窯跡から出土していることもあり、現在では酒井田家が主導した柿右衛門窯で制作されたものと考えられています。
第2展示室では、当館所蔵品の中から江戸の陶工たちが生み出した「柿右衛門様式」の作品をご紹介いたします。

第3展示室:『古伊万里のすべて』展示室

本年度より、『古伊万里のすべて』と題した併設展示室を設けます。当館で所蔵する豊富な伊万里焼を通して、初期伊万里から古九谷様式、柿右衛門様式、金襴手様式への展開、そして庶民へと広がった幕末伊万里までの歴史をたどります。展示作品は随時交換します。歴史的背景などを含めた学びの場として、伊万里焼鑑賞をより楽しんでいただくための一助となれば幸いです。



古伊万里のすべて (初期伊万里〜幕末までの系譜)

 日本で初めて国産の磁器が製作されたのは、17世紀初頭の佐賀藩領有田地方においてです。
これらの磁器は伊万里港から各地に運ばれた為に、「伊万里焼」と呼ばれました。草創期は染付が中心に生産され、磁器でありながら柔らか味のある素地や、自由な筆さばき、技術的未熟さ故にゆがみのある造形など、素朴ながら奔放な表現が魅力となっています。1640年代になると、色絵磁器が登場。濃い色調と躍動感のある文様がうつわを彩ります。染付の技術も上がり、均一な太さで真っ直ぐな線描が可能となり、その中を濃(だ)みで塗りつぶす表現が生まれました。ヨーロッパへの輸出が開始される1650年代末以降は、技術が飛躍的に発展。美しい濁手の白い素地と軽やかな色調が特徴の色絵磁器や、濃淡や細い線を巧みに操る染付磁器が製作されます。17世紀末になると華やかな元禄文化を反映し、染付、色絵そして金彩を併用した華麗な様式が生み出されます。輸出磁器はこの様式による室内装飾用の大型の壺や瓶が主流へと変わり、国内用には「型物」と呼ばれる緻密な絵付けの高級品が作られました。その後、色絵磁器では幕末までこの豪華絢爛な作風が受け継がれていく一方、染付磁器では、18世紀以降は皿や猪口などの食器類が量産されるようになり、人々の生活の中に浸透していきました。



財団法人 戸栗美術館
TEL:03-3465-0070
FAX:03-3467-9813