世阿弥の能、590年ぶりに「復曲」 京都観世会
京都 4月9日(月)
約590年ぶりに復曲された能「阿古屋松」の舞台(京都市左京区・京都観世会館)
室町時代に能楽を大成した世阿弥(ぜあみ)が書いた「阿古屋松(あこやのまつ)」が、京都観世会(片山九郎右衛門会長)によって約590年ぶりに復曲することになり、9日、京都市左京区の京都観世会館で関係者に披露された。6月17日に同館で上演される。
作品は、東北に左遷された平安時代の歌人・藤原実方が歌枕として知られる「阿古屋松」を訪ねる筋書き。観世宗家には応永32(1425)年の世阿弥の自筆本が残されているが、これまで上演された記録はないという。
来年の世阿弥生誕650年を前に、京都観世会が「復曲」を企画、能楽師や研究者らが2年がかりで取り組んできた。この日の舞台では人間国宝の片山幽雪さん(81)がシテ(主役)を務め、実方を松へと導くきこりの老人が塩竃(しおがま)明神であることを明かし、松のめでたさを語り、都の風雅をしのんで舞う場面を演じた。
制作中に東日本大震災が起き、作品の舞台である東北が被害を受けた。九郎右衛門さんは「だからこそ曲に込められた祝言性を大切にした」と話し、幽雪さんは「6月の本番まで気を引き締めて練り上げたい」と抱負を語った。