宇都宮・芥川龍之介の直筆書簡見つかる
芥川龍之介が大正14年に斎藤龍太郎と鈴木氏亨にあてた書簡。離婚問題の処理に苦労していた様子がうかがえる。
3日、国の重要文化財に指定されている岡本家住宅(宇都宮市下岡本町)から、小説家の芥川龍之介(1892〜1927)の直筆書簡2通が見つかった。当主の岡本郁男さん(67)らが発表している。
岡本さんや宇都宮市文化財保護審議会の大嶽浩良委員(67)によると、書簡は、東日本大震災で被災した岡本家住宅の解体保存工事をするため、室内を整理していたところ、仏間の戸棚から見つかった。
1通は大正14(1925)年に「文芸春秋」創刊時の編集同人だった斎藤龍太郎と、文芸春秋社社員だった鈴木氏亨(しこう)の2人にあてたもの。頼み事と友人の離婚問題などに触れていた。
もう1通は、翌15年に斎藤の妻、小常(こつね)にあてたもので、
「とうとう結構なものを頂きましたよし、やむを得ず御礼を申し上げます」
などと書かれていた。あて名は「斎藤」とだけ記され、敬称が欠けている。芥川が自殺する1年前の手紙であることから、大嶽委員は「晩年は神経衰弱で不眠症になっており、書き忘れてしまったのではないか」と推測している。