韓国 古美術協会会長 盗掘品を買取販売
韓国古美術協会の事務所が置かれている、ソウル市鍾路区慶雲洞の「多宝星古美術展示館」
朝鮮日報日本語版 古美術協会会長、盗掘品を買い取り販売か
1月11日(水)
ソウル北部地検刑事5部は10日、韓国古美術協会のキム・ジョンチュン会長が、盗掘団から数千万ウォン(数百万円)に上る文化財を違法に買い取っていた疑いがあるとして、協会事務所などを家宅捜索した。検察は同日午前、協会事務所とキム会長の自宅に捜査員約20人を派遣し、古美術品の鑑定書や会計帳簿など一連の関連書類を押収した。キム会長は盗掘団のメンバー(73)が昨年、全羅南道一帯で盗掘した陶磁器や腕輪など5000万ウォン(約330万円)相当の文化財を違法に買い取り、客に販売した疑いが持たれている。
(朝鮮日報日本語版) 韓国古美術協会をめぐる数々の疑惑
1月14日(土)
韓国古美術協会のキム・ジョンチュン会長(63)が、大量の盗掘品を取引したとして検察の捜査を受けたことにより、キム会長と協会内部の軋轢(あつれき)や、盗掘団と結びついた古美術業界特有の問題点などが改めて浮き彫りになっている。
古美術協会は1971年、古美術商たちが中心となって設立した団体で、現在約700人の会員を有し、専門の鑑定人約60人が活動している。キム会長は97年、第18代会長に就任した後、15年にわたって会長を務めている。古美術協会の事務所は、ソウル市鍾路区慶雲洞でキム会長が運営する「多宝星古美術展示館」の中に置かれている。
韓国の古美術品市場の取引規模は、年間数百億ウォン(100億ウォン=約6億6800万円)に上ると推定されているが、古美術品専門の鑑定機関は事実上、韓国古美術協会しかない。同協会による鑑定書が、時価を決める絶対的な基準となっている中、キム会長が中心となっている同協会の鑑定をめぐり、雑音が絶えない状況だ。キム会長はこれまで数回にわたり、違法な文化財取引疑惑をめぐって検察・警察の捜査線上に浮かんだが、決定的な証拠が見つかったことはない。
だが現在、捜査を行っているソウル北部地検刑事6部は、キム会長が盗掘団のメンバーとされるK容疑者(73)=逮捕済み=から、5000万ウォン(約334万円)相当の盗掘品を買い取り、客に販売したとされる容疑について一部確認したという。また、さらに大規模な盗掘品取引疑惑についても証拠をつかんだとのことだ。検察の関係者は「盗掘団メンバーのK容疑者の供述や、K容疑者の自宅で高麗時代から朝鮮王朝時代の陶磁器など5億ウォン(約3300万円)相当の盗掘品が見つかったことなどを総合すると、キム会長との盗掘品の取引額はかなり大きな額に上る可能性もある」と話した。
キム会長は以前にも、さまざまな盗掘品の取引や、虚偽の鑑定に関与した疑惑が浮上した。2010年には、中国吉林省集安市で盗掘された高句麗時代の古墳の壁画を、金を払って韓国に持ち込んだとして警察の捜査を受けたが、はっきりした証拠は見つからなかった。当時、中国政府の関係者が韓国文化財庁に書簡を送り「中国で逮捕され、すでに処刑された実行犯らが、韓国古美術協会の幹部から教唆(きょうさ)され、犯行に及んだ、と供述した。行方不明になった高句麗時代の壁画は韓国にあると思う」として、返還を求めた。
キム会長は「当時の事件の主犯は、2009年に(キム会長を陥れようとしたグループから)中国遼寧省丹東市で、私を会長職から引きずり下ろせば50億ウォン(現在のレートで約3億3400万円、以下同じ)を支払うと約束され、虚偽の情報を提供したと証言している」と主張した。一方、キム会長は1998年、北朝鮮の100億ウォン(約6億6800万円)相当の文化財を中国から密かに持ち込み、市場に流したとして逮捕・起訴され、追徴金1億ウォン(約668万円)の判決を受けた。古美術業界の不正の中核となっているのは、盗掘団との裏取引だ。これまでに判明したキム会長関連の疑惑も、大部分は盗掘された文化財に関するものだ。文化財庁によると、昨年だけで約40人の盗掘犯が検挙されるなど、盗掘団は一向に根絶されていない。文化財庁の関係者は「まだ検挙されていない盗掘団のメンバーは、全国に200−300人程度いるとみられる」と語った。
キム会長に反感を持つグループは「キム会長が古美術協会を掌握した後、盗掘品の取引だけでなく、いい加減な鑑定を行っている」と主張している。同協会の鑑定委員として活動したA氏は「長期間にわたって在任しているキム会長が、古美術協会の鑑定価格を左右している。盗掘品の取引は氷山の一角で、真の問題はいい加減な鑑定を悪用していることにある」と話した。
一方、キム会長は「検察の捜査は、協会内部の反対派たちによるうその証言を基にしている。近いうちに、私をめぐる疑惑について、正式なコメントを発表するつもりだ」と語った。