Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

東京、渋谷・東急隣 Bunkamura ザ・ミュージアム

artscene2011-11-29



http://vermeer-message.com/


2011年12月23日(金・祝)〜2012年3月14日(水)


Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)


〒150-8507

東京都渋谷区道玄坂2-24-1-B1F

午前10時〜午後7時(入場は各閉館の30分前まで)

※毎週金・土曜日は午後9時まで(12月30日、31日を除く)
1月1日(日)のみ


03-5777-8600(ハローダイヤル)


主催:

Bunkamuraテレビ朝日朝日放送博報堂DYメディアパートナーズ

特別協力:朝日新聞社

特別協賛:大和ハウス工業株式会社

後援:オランダ王国大使館

協力:KLMオランダ航空



JR山手線「渋谷」駅ハチ公口下車徒歩7分

東急東横線/東京メトロ銀座線/京王井の頭線「渋谷」駅下車徒歩7分

東急田園都市線/東京メトロ半蔵門線/東京メトロ副都心線「渋谷」駅3a出口下車徒歩5分

京王井の頭線「神泉」駅北口下車徒歩7分





アムステルダム国立美術館所蔵≪手紙を読む青衣の女≫

修復後世界初公開 そして 日本初上陸!


そして、フェルメール作 ≪手紙を書く女≫、≪手紙を書く女と召使い≫の再来日により、フェルメールの珠玉の手紙3作品が一堂に会する。


17世紀オランダ絵画を代表する 巨匠ヨハネス・フェルメール・・・・


緻密な空間構成と独特な光の質感で描かれた作品達は、300年の時を経て今もなお私達を魅了し続けています。そして、現存作品数が三十数点とごく少ないことが、より一層人々の興味をかき立てているのでしょう。


2011年、未だかつて観ることのできなかったフェルメール作品が初めて来日。現在、アムステルダム国立美術館で修復作業が行われている≪手紙を読む青衣の女≫が修復後 本国オランダより先駆けてこの日本で世界初公開。


フェルメール・ブルーとも言われる、当時としても大変貴重なラピスラズリを砕いた顔料ウルトラマリンの青の輝きが、フェルメールのこだわった当時の光と色彩の世界とともに、長い時を経て蘇り・・・私達の前に姿をあらわします。またとないこの歴史的来日にご期待ください。



更に、日常描写を美しく描きとることを得意としたフェルメール作品の中で、とりわけ重要なモチーフとなっている「手紙」作品の中から、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵≪手紙を書く女≫と、アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵 ≪手紙を書く女と召使い≫の2作品が満を持して再来日。
三十数点の数少ない作品の中で、フェルメールは「手紙」をテーマにした作品を数多く残しています。彼自身がこだわりを持ったこの「手紙」というモチーフに隠されたメッセージを、是非会場で感じて頂ければと思います。



このフェルメールの3作品と共に、「手紙」をはじめとする17世紀オランダのコミュニケーションの様々なあり方に焦点をあて、同時代に活躍したピーテル・デ・ホーホ、ヘラルト・テル・ボルフ、ハブリエル・メツーといった巨匠たちの手による作品を展開します。





この『フェルメールからのラブレター展』は、17世紀のオランダにおける風俗画の、たぐいまれな美しさをより鮮明に伝えるために、特に厳選された作品達によって構成するテーマ展となります。



17世紀、大航海時代の植民地制を牽引していたオランダは、当時のヨーロッパにおいてもっとも識字率が高かった地域のひとつで、手紙によるコミュニケーションの文化がいち早く開花した地でもありました。1630年頃になると、手紙を読み書きする人々の姿が絵画作品の主題となり、手紙はとりわけ恋愛をめぐる場面を描く際には不可欠なモチーフとなりました。当時出版された様々な書物の中でも、「手紙の書き方」「ラブレターの書き方」という本が多く出版された程に、この「手紙」は重要な役割を果たしていました。



本展覧会では、こういった「手紙」というツールをその一つの題材に、様々な場面でのコミュニケーションのあり方に注目しています。


当時、家族、恋人、仕事における知人の間では、顔を見合わせた直接的なコミュニケーションと、もしくは手紙や伝言などのような間接的なコミュニケーションが存在し、そしてそれによって引き起こされたあらゆる感情を絵画作品の中に描きだし表現するということが盛んに行われました。画家たちは、人々が会話する際に見せる一瞬の表情や仕草にとどまらず、離れた恋人からの手紙を読んでいる時の素の反応に至るまで、実に幅広い感情を表現しようとしました。また画家たちは作品の中に様々な小道具を寓意的に描きこむことで、絵画作品に生き生きとした意味や物語の息吹を与えていったのです。



本展では、宗教上の意味合い、セクシャルなメッセージ、家族の絆、そして物語・・・それらを表現する、身振り・目つき・表情あるいは欺瞞や幻影を、4つの章に分け、17世紀オランダ美術におけるコミュニケーションのあり方を展観します。



仕事や余暇を楽しむ民衆の姿を理想化せずに描く風俗画では、日常生活の親密な場面が主題となり、典型的な人物や衣装、場面設定などに鋭い洞察が向けられた。家庭や居酒屋、仕事場といった日常的な環境の中の人々が描かれたが、実際の様子を描いているように見えても大抵は画家のアトリエで考案された。これらの作品は楽しみのための作品という性格も強く、家庭の団らん、売春宿の情景、農民の食事、「もたれかかる女と兵士」といった主題が描かれた。


誘惑や罪の意識にかられながらも、飲み食いや会話を楽しみ、音楽を奏でる人々の絵は聖書の主題を描いた銅版画に由来する。そこでは道徳的な語句がそえられることによって、欲望のままに生きる安易な生活を避けるよう、鑑賞者に注意を喚起していた。


単に日常の正確な描写のように見えるこれらの風俗画も、その多くが、オランダの諺や格言、道徳的なメッセージを示唆している。画家も絵の購入者たちも道徳的な解釈をふまえつつ、散らかった家庭内の様子や売春宿の情景を楽しんでいたことだろう。


宿屋の主人でもあったヤン・ステーンの作品はその好例で、彼の作品のタイトルは「酒場」「宿屋」「売春宿」などと区別されているが、実際はすべて同じ建物であることが多く、「表は宿屋、裏に回れば売春宿」というオランダの格言そのものであった。


オランダ人の家には、共に住む人々の関係が映し出されている。一つの家族が住む家は出入りが制限された領域であり、個々の場所を使うことで、居住者どうしの関係や外部からやってきた男女との関係が浮き彫りになった。肖像画には、オランダ黄金時代の人々の様子、身につけていた服装、仕事の種類、男女間の関係、そして日常生活のさまざまな面が表現されたが、なかでも家族の肖像画は、結婚による調和や愛情にも焦点をあてている。



風俗画では、17世紀オランダ社会における、多くは既婚の女性が描かれている。女たちは日々気を配りながら、家庭を機能させることに主要な責任を果たし、そして多くの場合、単独でその役割を担っていた。買い物や料理、掃除、洗濯、アイロンがけ、乳児や幼い子供たちの養育や監督、病人の世話など、仕事は多様だった。家事を手伝ってくれる者がいる家庭は、割合としてはきわめて少なかった。17世紀オランダ絵画では召使いの姿が際立っているが、実際に召使いがいた家庭は、全体のわずか10〜20%にすぎない。もっとも女の召使いが画中に登場し、女主人とやり取りする絵を目にすることがよくある。ピーテル・デ・ホーホは、塵一つない清潔な部屋や中庭にいる女性を描き、17世紀オランダの主婦の美徳を称えている。


オランダ人にとって読み書きの能力は重要であったが、それらを学ぶ過程はいつも楽しかったわけではない。絵画作品ではしばしば、薄給で十分な訓練を受けていない教師と幼い生徒たちの間で生じる問題に、焦点があてられている。当時は個別に授業が行なわれ、生徒たちは代わる代わる教師の机の所までやってきて、読み書きや暗唱をするのが習わしだった。弁護士や公証人、著述家らは、商売に関わるコミュニケーションや経営の手助けをした。


一方、科学者や学者たちは、公式にも非公式にもコミュニケーションを取り合っていた。科学の分野での非公式なコミュニケーションは、伝統的に口頭のコミュニケーション、つまり同僚や教師との個人的な接触が主流だった。研究者たちは、徐々に「目に見えない大学」といわれる非公式なネットワークをヨーロッパ中に立ち上げていった。


最も早い学術雑誌は、自然科学を含むさまざまな分野の研究が活発となった17世紀に誕生し、その中頃になると、科学に関心をもつ人々と科学者のために、相互的な公開討論会(フォーラム)を準備しようという気運が高まった。この頃、英国王立協会(1660年ロンドンで成立、1662年に公認)やフランス科学アカデミー(1666年パリで成立)のような学会の設立が相次ぐ。科学雑誌や学会が発行する機関誌だけではなく、手紙や私的なやり取りに加えて、科学書、新聞なども科学に関する印刷されたコミュニケーションの形として存在していた。



オランダは17世紀のヨーロッパで最も識字率の高い国で、出版の主要な中心地であるとともに、手紙のやり取りが急速に増えた地域だった。ちょうどこの頃、公的な布告や単なる商業上の情報を発するのとは対照的に、手紙を書くことは、個人の気持ちや強い感情を伝えることができるという考え方が一般的となり、個人間の文字によるコミュニケーションのあり方を一変させた。



私的な手紙のやり取りがほとんど姿を消した現代において、これらの絵画作品は、オランダ黄金時代の巨匠たちが、こうした一見たわいのない日常生活の側面に影響される感情の微妙な動きを、いかに探求していたかを感動的なまでに思い出させてくれるだろう。オランダの風俗画において、手紙を読む女性の姿は愛に関連した場合が多く、ほとんどの作品は、隠された意味を解く手がかりを与えてくれている。壁の地図は、遠方にいる恋人を示唆するかもしれない。また画中の壁に掛けられた海景画の場合、海は愛、船は恋人を表象していた。ヤン・クルル(1601−46)の寓意図像集にある「家から遠くにあっても、心は離れていない」という銘文は、これをよく言い表している。



ヨハネス・フェルメールの絵画作品は、手紙を読んだり、書いたりする若い女性の物思いに沈む美しい姿を描いている。ときには書き上げた手紙を宛先に届けようと待っている召使いが、傍らに描かれることもある。