Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

日本伝統工芸展

artscene2011-10-03


「現在を生きる美〜第58回 日本伝統工芸展〜」

近年特に注目が集まる日本の伝統工芸。第58回日本伝統工芸展の開催を機に、現代作家の新しい挑戦を紹介している毎年恒例の展覧会。



 http://www.nihon-kogeikai.com/KOGEITEN/KOGEITEN-058/KOGEITEN-058.html


 
 戦後、急速に生活スタイルが変化する中で存続の危機にさらされた工芸を保護・育成しようと誕生した日本伝統工芸展。陶芸・漆芸・染織・木竹工など7つの部門で、現代の匠が技を尽くして競う工芸界の日本一決定戦である。


 
 2000点の応募作から選ばれた今年の受賞作品を紹介する。全国の三越を中心に巡回予定。



截金師…左座朋子


青磁作家…神農巌


人形作家…春木均夫


漆芸家…鳥毛清



東京・三越展での講演会一覧


【陶芸】 原 清 9月21日(水)


【染織】 今井 陽子 9月22日(木)


【漆芸】 白石 和己  9月23日(金・祝)


【金工】 大角 幸枝  9月27日(火)


【木竹工】諸山 正則 9月28日(水)


【人形】 秋山 信子  9月29日(木)


【諸工芸】白幡 明  9月30日(金)


 http://www.mitsukoshi.co.jp/store/1010/dentoukougei/

 

 7部門の入選作など展示 

 堺市堺区の春木均夫(55)  「木芯桐塑木目込(もくしんとうそきめこみ)『寝た子』」 NHK会長賞


 寝屋川市の塩坂栄子(67)  「木芯桐塑紙貼(かみばり)『朝稽古』」  日本工芸会新人賞



 ○ 晴木均夫(55)NHK会長賞

 子どもではなく、眠った孫を見つめるおばあさんだ。起こすまいと気遣う半面、可愛い寝姿に触れたい。そんな気持ちが、手の表情からうかがえる。「お母さんなら抱っこしているでしょう。子どもを見せないで、表現したかった」



 渋い色の衣装は、亡くなった祖父の絹の着物や帯を使った。普通はへらで生地を木目込んでいくが、貴重な布にのりがつかないよう、細いピアノ線に柄をつけた道具を自作して作業した。90歳を超えたおじやおばが、受賞を喜んで連絡してくれたのがうれしかった、と振り返る。



 大学で舞台美術を学んだ。何か一人で表現できることはないかと考えていた頃、故・堀柳女さんの作品に「こんなドラマチックな人形があるのか」と感動。自分が造りたいものを、との思いが先行したこともあったが、工芸会支部の運営にかかわるうち、伝統工芸としての人形を再認識したという。「『我』が表面に出てしまうと、見る方もしんどい。部屋に置いて見て安らぐことも大事だと」




 ○塩坂栄子(67)日本工芸会新人賞


 昨年の初入選に続いての受賞。「いただいていいんでしょうか?」と、まだとまどっている。



 受賞作は、剣道を習っていた少年時代の息子をイメージした。くりくり頭で道着姿の男の子が、あごを上げ気味に走る姿。台の端に配置し、スピード感を表現した。「震災が起き、大変な世の中。『頑張ろう』と一歩前へ進む感じを出したかった」



 13年前、展覧会で女の子の人形の「明るく、ほっこりした」姿に感動し、作者の浅井秀子さんに教えを請うた。作品作りはすべてが「難しい」というが、テーマに一番悩む。新聞を切り抜いたり、孫の写真を送ってもらったりして「取材」。電車に乗っても他の乗客の足の組み方や手の上げ方に目がいく。



 「楽しければいい」と考えて始めたが、浅井さんの熱心な教えを受け、先輩に「もうプロ」と言われて、正面から人形作りに向き合うようになった。賞の重みを感じる一方、「これからも温かみのある作品に挑戦したい」と考えている。



 ◇     ◇


 第58回日本伝統工芸展は10月12日から17日まで京都高島屋、19日から24日までJR大阪三越伊勢丹で開かれる。


 日本工芸会総裁賞に輝いた佐藤光男さん(新潟県長岡市)の「鋳紫銅花器『包』」をはじめ、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門で入選した616点などを展示している。