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ロシア ガラス工芸品展(高崎市)を中止要請

artscene2011-10-01

● 群馬県立近代美術館高崎市

ロシア ガラス工芸品展(高崎市)を中止要請


開催予定だったロシア国立エルミタージュ美術館所蔵のガラス工芸品展について、東京電力福島第1原発に近いという理由でロシアから拒否要請があり、開催が中止になった。



ロシア、エルミタージュ美術館の意向で放射性物質による展示品の汚染が懸念されると説明を受け、近代美術館3 件は福島第1原発から約210キロに位置していることなど放射線について説明したが、拒否が覆らなかったため中止となった。



近代美術館によると、展覧会は6月から北海道、東京で既に開催され10月からは岡山で開かれる。高崎では12月から開かれる予定だったが、5月にエルミタージュ美術館からの申し入れがあった。






栃木県足利市足利市立美術館
【美の扉】青春という苦悩の記念碑「画家たちの二十歳の原点」  Sankei


 茶褐色の空の下に描かれているのは、4本の木と一人の男性だ。全体が暗い色彩で覆われ、重苦しい。



 結核を患い、20歳の若さで世を去った関根正二(しょうじ)(1899〜1919年)が16歳の時に発表した油彩画「死を思う日」。制作の前に住んでいた東京をたち、友人と旅に出た関根は途中から、数カ月にわたり一人で放浪したという。絵の人物は画家自身だろうか。画題が暗示するように、その暗澹(あんたん)たる心境が感じ取れる。この作品は、画家の登竜門である二科展(公募の美術展)に初入選し、後に“夭折(ようせつ)の天才画家”といわれた関根の画家としての出発点となった。



 これは、栃木県の足利市立美術館で開催されている展覧会「画家たちの二十歳の原点」で鑑賞することができる。展示されたのは、明治期に活躍し日本の洋画をリードした黒田清輝(せいき)(1866〜1924年)から、平成の人気画家、山口晃さん(42)まで53人。20歳前後に描かれた油彩画が中心だ。「時代精神は違うが、20歳ゆえの感受性が如実に表れている」。本展を最初に企画した平塚市美術館の土方明司(めいじ)館長代理は、こう説明する。

               



 会場に展示された計110点を眺めていて、あの有名な芸術家の意外な作品を見つけた。世界的版画家、池田満寿夫(ますお)(1934〜97年)の油彩画だ。10代のころは洋画家志望で、茶系の色彩で重々しい人物画「皿をなめる少女」は19歳の時の作品。そのころ池田は「絵を描く以外に、僕に救われる道があるのでしょうか?」と母親宛ての手紙に書いているが、絵こそが生きる証しだった。絵の具を幾重にも塗ることで、人物も黒く沈み闇に同化している。執拗(しつよう)な描き方から、画家になりたいという執念が伝わってくるようだ。



 長生きして大成した熊谷守一(くまがい・もりかず)(1880〜1977年)が、24歳で描いた「横向裸婦」もある。40歳を過ぎてからは、平面的な様式を確立して高い評価を得たが、明るさに満ちた印象派風の作品には、まだそのかけらもない。



 画家たちはいずれも描くことや生きることに悩み、一人前になろうと必死になっていた。そんな時に生み出された作品は人生の記念碑でもある。絵に関するエッセーも多い作家の太田治子さん(63)は「生きていると次第に心が汚れ、自己嫌悪に陥ることもある。20歳のころの真っさらで、ひたむきな姿勢に救われる」と話す。

           



 展覧会名は、昭和46年に刊行された女子大生の日記「二十歳(にじゅっさい)の原点」から取った。学生運動や恋愛の悩み…。20歳で自殺した立命館大生、高野悦子(1949〜69年)の心の叫びがつづられ、当時ベストセラーになった。その中にこんな言葉がある。「私は独りである。私は未熟である」



 画家たちも、同じような不安を抱えながら絵筆を握り、懸命に何かをつかもうとしていた。作品に透けて見えるのは、明るい将来を夢見ながら、もがき苦しんだ青春の軌跡。そんな苦悩の跡が、鑑賞者の心を強く惹(ひ)きつけるのだろう。(渋沢和彦)

                   

 ■個性を刻む自画像



 自画像は鏡さえあれば、いつでも描くことができる一番身近なテーマだ。そのため画家は、一度は手がける。自画像で有名なのは、17世紀のオランダを代表するレンブラント。63年の生涯で60点ほど描いた。「画家たちの二十歳の原点」展でも多くの自画像が展示され、画家の個性をみせつけている。



 明治期に黒田清輝が22歳で描いた自画像は、写実的な作品。後に東京美術学校(現・東京芸大)の教授として多くの後進を育てたが、凛(りん)とした容姿からは、“教育者”らしい真面目な側面もうかがえる。



 大正期の佐伯祐三(1898〜1928年)が19歳の時に描いた自画像は、丸刈りのときのものだ。後年には、ぼさぼさ頭で知られる佐伯だが、この作品からはある種の品行方正さが漂ってくる。



 昭和では、東京芸大准教授のO JUN(おうじゅん)さん(55)の真っ赤な顔の19歳の自画像を挙げたい。平成の石田徹也(1973〜2005年)の作品「飛べなくなった人」は、飛行機と画家本人が合体した奇妙な姿となって描かれている。23歳の作品で、より自由な表現が模索された現代を象徴しているようでもある。自画像からは、時代とともに変遷する画家の姿勢を見ることができる。

                   

【ガイド】明治から平成までの画家53人の20歳前後の作品を集めた「画家たちの二十歳の原点」は、栃木県足利市足利市立美術館で11月13日まで開催。月曜休(10月10日は開館)、10月11日、11月4日休。午前10時〜午後6時。一般700円。11月3日は「二十歳の原点・はじまりの意識」と題し、民俗学者の川島健二さんの講演会が行われる。問い合わせは、同美術館(電)0284・43・3131。