Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

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大和文華館(奈良)

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マニ教絵画〕 六道図(中国・元)

開館50周年記念特別企画展  信仰と絵画
2011年5月14日(土)- 6月19日(日)月曜日休館

和文華館
631-0034
奈良県奈良市学園南1-11-6
近鉄奈良線「学園前」駅下車徒歩約7分


 本展観では宗教美術、中でも仏教とマニ教の世界観が表現された絵画作品に注目。言葉によって説かれた豊かな仏の世界をどのように視覚化するか、そこには時代や地域によって異なる美意識が看て取れます。日本では、平安貴族たちが競って造像した美麗な仏画、彼らが直面した恐ろしい現実世界を反映した六道図、社寺の縁起や高僧の事績を表した世俗的な説話絵巻などが挙げられます。


 また、仏教への信仰は、木や水に宿る目に見えない神々への信仰である神道と融合し、仏教美術が土台となって垂迹美術が花開き、神々の姿や聖地が表されました。「笠置曼荼羅図」「柿本宮曼荼羅図」などの宮曼荼羅は当館の仏教絵画コレクションの中核をなす作例です。


 ところで、こうした異なる成立背景を持つ思想や教えが、仏教美術の中で培われてきた図像や表現技法によって表される興味深い例があります。当館所蔵の「六道図」です。中国・元時代に描かれた「六道図」は近年の研究によって、仏教ではなくマニ教の世界観が表された宗教画であることが明らかにされました。

 
 ところが、表現技法は同時代に描かれたいわゆる「寧波仏画」とほとんど変わりません。普段は仏画を制作していた絵師が、人々の求めに応じ、多様な信仰に対応していたことが伺えます。
 
 
 マニ教メソポタミアで起こり、唐代には中国へ伝わったことが知られますが、マニ教の世界観を示す遺例はほとんどありません。本展観ではこの「六道図」に加え、現在確認されているマニ教絵画を一堂に展示いたします。さらに同時代に描かれた寧波仏画も展示し、仏画と共通する図像や表現技法の変容、伝播を検討する重要な契機としたいと思います。
 
 
 会期中には、京都大学吉田豊先生のご協力のもと、マニ教絵画をめぐる国際シンポジウムを予定致しております。人々の祈りが生み出した豊かな宗教絵画の世界をお楽しみ下さい。

〔仏教絵画〕
重文 笠置曼荼羅図(日本・鎌倉)
重文 柿本宮曼荼羅図(日本・鎌倉)
重文 王宮曼荼羅図(中国・元<皇慶元年・1312>、大恩寺蔵)
法華経変相図 序品(中国・元、覚城院蔵)
法華経曼荼羅図(中国・元、道寺蔵)


マニ教絵画〕
 六道図(中国・元)
宇宙図(中国・元、個人蔵)
天界図(中国・元、個人蔵)
聖者伝図(中国・元、個人蔵)
虚空蔵菩薩像(中国・元、栖雲寺蔵・5月24日から展示)



 本展覧会では、仏教絵画のみならず最近の研究によってマニ教の世界観が描かれたことが明らかとなった「六道図」を中心に、人々の祈りが生み出した豊かな宗教絵画の世界、マニ教に関わる絵画を特別展示。