Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

東京都現代美術館

artscene2011-03-22




http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/122/
田窪恭治展 風景芸術  

観覧料
一般1,200円 
大学生65歳以上900円
中高生600円
小学生以下無料


2011年2月26日(土)ー5月8日(日)


休館日 月曜日

開館時間 10:00ー18:00(入場は閉館の30分前まで)


会 場 東京都現代美術館 企画展示室 1F、B2F


 「林檎の礼拝堂」や「こんぴらさん」の再生プロジェクトで知られる美術家、田窪恭治(1949年-)の、東京では初めてとなる包括的な個展を開催。

 1968年に多摩美術大学絵画科に入学した田窪は、1970年代前半のパフォーマンスを経て、1980年代半ばまで、廃材を窓や扉の形に構成した作品を、画廊や国際展(1984年のヴェネチア・ビエンナーレ等)などさまざまな美術展で発表した。

 しかし、1987年に、再開発の進む都心のごく普通の木造住宅を構造部分まで解体し、板ガラスを張り、その上を歩くプロジェクト《絶対現場》(建築家の鈴木了二と写真家の安齊重男との協働)を実施後、フランス、ノルマンディー地方に移り住み、10年にわたり、廃墟と化していた礼拝堂の再生に取り組む。この「林檎の礼拝堂」のプロジェクトは、すでにある建物の構造を活かした技法や風景に根付いた主題、そして住民との協働により、作品と享受者、出資者、所有権をめぐる芸術の新しいあり方を示すものとなった。


 1999年の帰国から現在までは、四国、金刀比羅宮の聖域全体を対象とする「琴平山再生計画」に取り組んでいる。複合的な文化遺産と長期にわたり関わる中で田窪は、
 
 
 「自分より長い時間を生きるであろう、特定の現場の風景を表現の対象とした仕事を『風景美術』。
 
 
 作家がいなくなった未来においても生き続ける表現の現場を『風景芸術』」と呼び、そのような空間的にも時間的にも開かれた活動を目指すようになっている。


 
 「田窪恭治展」見どころ

 待望された、東京での個展
 1970年代から活躍してきたにも拘わらず、この20年ほどは再生プロジェクトに関わってきたため、近年の仕事を東京で目にする機会は殆どありませんでした。ノルマンディーや琴平など、都市から距離をおく地域社会に移り住み、十年単位でひとつの仕事を実現させ、作品を享受する地元の人との交流を深めながら展開してきた活動の軌跡を紹介します。


 もうひとつの再生プロジェクト
 「林檎の礼拝堂」のプロジェクトで、現地では実現できなかった敷地の整備プランを、当館のアトリウムに実寸で、東京ヴァージョンとして展示します。また、「琴平山再生プロジェクト」では、自らデザインした新しい茶所(レストランとカフェ)に、磁器板による壁画を手がけましたが、本展では、墨による同スケールの新作壁画を展示します。インスタレーションはいずれも、鉄と鋳物を床に敷き詰めますので、錆色の床を踏みしめたときの独特の感触と音を通して、静かにたちあがる新たな場を堪能いただけます。


 現在進行中の仕事
 琴平山で2005年から手がけているオイルパステルによる襖絵は、円山応挙伊藤若冲による襖絵のある二つの書院の間にある白書院を飾るものです。本展では田窪による襖絵《ヤブツバキ》を、現地の書院と同じ構造の建具の中に組み立て、椿の自生する庭を視野に入れた書院空間を創ります。また、琴平山の来訪者のために現在構想中の「神椿ブリッジ(仮)」のプランも紹介します。


 絵画の実験
  
 田窪は礼拝堂の壁画に取り組むにあたり、地下水からの湿気や結露を避けるため、石壁の内側に二重壁をつくりさらに鉛を貼り、何層にも重ねた顔料をノミで掻き出すという独自の技法を、探り出しました。久しく封印されていた絵画制作の扉が様々な色の線描の集結によって開かれたのです。また琴平山の緑豊かな山腹の茶所では、光を反射する白い磁器板に青い線描による葉の繁茂する壁画を有田焼の手法で実現しています。本展を期にノルマンディーのアトリエから里帰りした、壁画の模索過程を証する習作と、近年、有田で手がける磁器タイルによる絵画を展示します。


 「風景芸術」まで
 
 大学屋上での石膏によるドローイングや画廊で発表したイヴェント、過渡期に制作された手型を刻印したレリーフ、そして都市空間の中で進行した《絶対現場1987》など、制度や社会との関係を模索しながら「風景芸術」に至るまでのプロセスを紹介します。




田窪恭治展 風景芸術  アーティスト


1949 愛媛県今治市で生まれる
1968 多摩美術大学絵画科入学
1971 同年より73年まで、個展シリーズ「イメージ裁判」を都内の画廊で5回開催
1972 多摩美術大学卒業


1975 第9回パリ・ビエンナーレに参加
1984 個展(フジテレビギャラリー、同画廊では86年、90年、96年にも個展を開催) 第41回ヴェネチア・ビエンナーレに日本代表として参加
1987 《絶対現場1987》 建築家・鈴木了二、写真家・安齊重男との協働
1989 ロンドンのアルメイダ劇場にて上演のオペラ「ゴーレム」の舞台美術を担当 フランス、ノルマンディー地方ファレーズに移住し、サン・ヴィゴー・ド・ミュー礼拝堂の再生プロジェクトに着手
1999 礼拝堂再生プロジェクトで「村野藤吾賞」を受賞、帰国
2000 礼拝堂再生プロジェクトに対し、フランス共和国政府より、芸術文化勲章オフィシエ)を受賞 香川県琴平町に住み、文化顧問として「琴平山再生計画」に着手


2001 個展(愛媛県立美術館)
2004〜 金刀比羅宮遷座祭を機に、旧社務所高橋由一の作品の常設展示室とするなど、金刀比羅宮蔵の美術作品の調査や修復、公開を進めると共に、2005年から白書院の襖絵の制作に着手、 2007年には新茶所のため、磁器による壁画《神椿》を制作すると共に建築デザインを手掛ける。 2008年にはパリ国立ギメ東洋美術館で同宮の名品展「海の聖域展」の総合プロデュース、自身の作品も展示する。2009年から「神椿ブリッジ(仮称)」のデザインと周辺の景観を整備中。