Artscene 芸術の風景 -アートシーン 展覧会情報

芸術、美術、展覧会の紹介をしています。

 ひとり 1951年 

artscene2010-11-15

国立近代美術館 企画展ギャラリー

2010年11月9日(火)〜12月19日(日)
会期中、素描作品の一部を展示替します。
前期:11月9日〜11月28日
後期:11月30日〜12月19日

開館時間 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
*入館は閉館30分前まで

休館日 月曜日

一般850(600)円 大学生450(250)円 ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
*それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。

本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の「鈴木清写真展 百の階梯、千の来歴」(ギャラリー4、2F)、所蔵作品展「近代日本の美術」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご覧いただけます。

主催 東京国立近代美術館京都国立近代美術館

出品協力 神奈川県立近代美術館

巡回
2011年1月5日(水)〜2月20日(日) 京都国立近代美術館 
2011年4月29日(金・祝)〜6月12日(日) 愛知県美術館

絵画の本質を粘り強く探究し続けた画家、麻生三郎(1913-2000)。一見とらえがたい彼の絵画は、時間をかけて見れば見るほど、多くを語りかけてきます。戦前から活動を開始した彼は、戦中は「新人画会」を結成して個の表現を貫き、戦後も一貫して人間存在の核心に迫る表現を切りひらいていきました。

常に社会に対する緊張感を保ちながら、現実空間と絵画空間との関係を探究し続けた彼のあゆみは、現代の絵画にも多くの示唆を与えてくれるでしょう。本格的な回顧展としては実に15年ぶりとなる今回の展覧会では、初期から晩年までの油彩、素描、立体あわせて134点を展示し、その今日的意義を探ります。

約15年ぶりの本格的な回顧展
1994年から95年にかけて神奈川、茨城、三重を巡回した画家生前の回顧展から約15年ぶりとなる今回の展覧会では、油彩、素描、立体合わせて134点を展示し、その全体像を改めて回顧します。
代表作はもちろん、初公開の作品も《ひとり》(1951年)、《赤い空》(1956年)といった代表作を網羅するとともに、戦前の裸婦素描や、晩年の立体など、初公開の作品もご紹介します。麻生は晩年、「立体デッサン」と称して彫刻作品を数点手がけていますが、その最後の彫刻は1994-95年の回顧展の際には完成しておらず、その後公開される機会がありませんでした。今回が初めての公開となります。

もうひとつの側面、デッサンの魅力

《男の像》1963年 本展では、油彩作品と並んで素描も重点的にご紹介します。とりわけ1950年代末からの素描では、かたちの内部から空間の拡がりのなかへ、手や眼や身体が自由に展開していくのを認めることができます。ときにはユーモアすら感じさせるその素描には、重厚な油彩とはちがった画家の別の顔が窺えます。

展覧会構成第1章 闇の中で光を見つめる 1934-1953
麻生三郎は1913(大正2)年、東京に生まれました。太平洋美術学校に学んだ彼は、当初は前衛絵画に関心を向けましたが、1938(昭和13)年にヨーロッパを旅行して、写実の重要性を再認識することになります。
帰国した麻生は、戦争により画家が自由に活動しにくくなると、松本竣介ら友人たちとともに、1943年に「新人画会」を結成して、困難な状況下に3回の展覧会を開きました。
苦しい戦時中から、戦後まもない時期にかけて、麻生は繰り返し妻や娘、そして自分自身を描きました。それらの肖像はまるで、深い闇の中に灯る明かりのようにみえます。

《自画像》1937年 東京国立近代美術館
《母子》1948年 東京都現代美術館

第2章 赤い空の下で 1954-1960

《赤い空》1956年 東京国立近代美術館 戦後しばらくして、1950年代半ばになると、麻生は自らの家族という身近な題材から踏み出し、より一般化された人間像を描くようになります。《赤い空》の連作です。社会の現実に対して、鋭敏な感受性を持ちながら制作していた麻生は、個々の人間存在をおびやかそうとする重い都会の空気を肌で感じつつ、それに拮抗しながら存在を主張する人間像を力強く描きました。

第3章 内と外の軋(きし)み 1961-1994

《ある群像 3》1970年 神奈川県立近代美術館 1960年代に入ると、麻生の描く人体は、次第に周囲の空間ともつれ合い、一目見ただけではその姿を確認しにくくなっていきます。外部からの圧力と、それに抵抗する内からの力を絵画空間で探究していった結果、こうした作品が生み出されました。混沌とした画面をじっと見つめていると、ゆっくりと人の姿が像を結びはじめます。そして画面に生の気配が満ちていることに気づかされるでしょう。

麻生三郎 略歴
1913(大正2)年 東京に生まれる。
1930(昭和5)年 太平洋美術学校に学ぶ。松本竣介らと出会う。
1938(昭和13)年 渡欧。フランス、イタリアを中心に多くの美術作品を見る。
1939(昭和14)年 美術文化協会の結成に参加。
1943(昭和18)年 新人画会を松本竣介靉光らと結成する。
1945(昭和20)年 空襲で多くの作品を焼失。
1947(昭和22)年 自由美術家協会に参加(1964年まで)。
1952(昭和27)年 武蔵野美術学校(のち武蔵野美術大学)で教える。
1963(昭和38)年 芸術選奨文部大臣賞受賞。
1979(昭和54)年 東京都美術館で回顧展。
1994-1995(平成6-7)年 神奈川県立近代美術館茨城県近代美術館、三重県立美術館で回顧展。
2000(平成12)年 死去(享年87歳)。


酒井忠康世田谷美術館館長)

日程: 2010年12月4日(土)
時間: 14:00-15:30
いずれも当館講堂にて。聴講無料、申込不要、先着150名

ギャラリー・トーク
松本透(当館副館長)

日程: 2010年11月26日(金)
時間: 18:00-19:00

都築千重子(当館主任研究員)

日程: 2010年12月10日(金)
時間: 18:00-19:00
いずれも展覧会場にて。参加無料(要観覧券)、申込不要